後片付けの記録
「…後片付けの…こと…です」
あたしがそう口を開いた瞬間に、三枝コーチの微笑みは、誰が見ても分かるほどに強張った…。
…チク
……タク
………チク
…………タク
どこかに置いてあるのだろうか?
妙に大きく時計の針の音だけが、二人の間に流れる…。
…三枝コーチ、知ってたんだ…。
後片付け…そして、倉庫の中で行われていたことを…。
何となく時計の針の音を数えながら、あたしはじっと三枝コーチが口を開くのを待って…いた。
…チク
……タク
………チク
…………タク
…そして、時計の針の音の数が、六十を超えた丁度そのとき。
フゥッ~と、小さく息を吐き出す音がして、心が決まったのか、三枝コーチはあたしから目を逸らすと…ベランダへと続くガラス張りのドアから、外の景色を眺めながら、静かに言葉を紡ぎ始めた…。
「…私と良介はね、幼なじみだったのよ。小学校、中学校、高校…そして大学までもずっと一緒で…腐れ縁なのかしらね。水球もね、私は特別、興味があった訳じゃなかったんだけれど…良介がするって言うから、ただ単について行っただけ…」
三枝コーチはそう言って立ち上がると、部屋の隅にあるクローゼットへと向かう。
…そしてそこで何かを探しながら、続ける。
「…そんな良介に、まさかあんな性癖があっただなんてね…。人魚水球クラブでコーチを引き受けるまで全然、気がつかなかったわ…。どうりでずっと彼女と言っても…幼なじみを卒業出来ずに、友達以上 恋人未満な関係な訳よね~…」
三枝コーチは、クローゼットの中から白色の大きなエコバックを取り出すと…。
それをあたしの前に持って来て、ドサッ…と置く。
「…気がついたのは、水球クラブでコーチをし始めて、1年経った頃くらいだったかしら…。良介の部屋で良介のノートパソコンを触っていたときに、偶然ファイルを見つけたのよ…」
エコバックの中から、小さなビデオカメラを一つ取り出して…。
三枝コーチはやはりあたしの前にそれを置きながら、続ける。
「…もちろん、誰にも開けないように暗号付きにはなっていたけれど…。そこは名ばかりの彼女でも、ずっと一緒にいた幼なじみなんだもの…。良介が思いつく暗号なんて、すぐに分かったわ~」
三枝コーチがそう言い終わって、エコバックを逆さにして振ると…。
…その中からもの凄い数のUSBメモリが、絨毯の敷いてある床の上に、あたしの目の前に、溢れ出て…来た。




