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訪問理由

…そう、このまま三枝コーチと楽しく会話をして…家に帰ったら、いい…。

これ以上あたしが、首を突っ込むことじゃないし…。

風間コーチは事故死だと、刑事であるお父さんが、警察が、判断したことなんだし…。

水球クラブの男の子達を撮影記録したモノだって、本当にあるのかどうか分からないんだし…。

…もしそれが本当にあったとしても、このまま見つからなければもう何も、問題はないことなんだし…。


…。

…何だか、自分に言い訳をしてるみたい。


あたしはフッと笑うのをやめて、そんなことを少し俯いて考えていた。


「…美心ちゃん?どうしたの?突然真顔になって」


顔を上げればそこには、心配そうな三枝コーチの顔…。


「あっ…いえ、すみません。ちょっと考え事をしちゃって…」


あたしがそう応えると、三枝コーチは優しく微笑みながら


「…ひょっとして、健太くんのこと?」


突然、そう言う。


「…えっ?いえ、全然違います!何であんなののことなんか!」


顔が火照ほてるのが、自分でも分かる。

三枝コーチは、テレビのクイズ番組に正解したような顔つきになって


「そうだと思ったのよ~!…で、付き合ってるの?」


ズバリそう言いながら、キラキラとした瞳であたしのことを見つめる。


…。

三枝コーチ…人の話を全然…聞いて、ない…。

あたしは思わず


「…違います!健ちゃんは全然関係なくて…ううん、関係ないこともないけれど…。風間コーチのことで…そう!風間コーチのことで、三枝コーチに聞きたいことがあって…。それで…それでここに来たんです!」


大声でそう言ってしまってから、あたしはハッとして三枝コーチの顔を見つめ直した。

三枝コーチは、そんなあたしの目を真っ直ぐに見つめ返しながら


「…そう、ここに来た理由はそういうことだったの~」


そう言って、何とも言えない顔で微笑んだ。


「いえ、その…風間コーチのことで…三枝コーチなら何か知っているかな…と思って…」


あたしはしどろもどろになりながら、そう応える。


「別にいいのよ!本当のことを言ってくれたほうが、私も嬉しい~」


三枝コーチはそう言いながら微笑むと、続ける。


「美心ちゃんが水球クラブを卒業してからずっと会っていなかったから…。今日、突然訪ねて来たからには、今回の良介の、あっ…風間コーチの事故死のことと何か関係があるのかもしれない…とは思っていたから、全然大丈夫よ~…で、何が聞きたいのかしら?私で応えられることならいいのだけれど…」


そう言って、三枝コーチはやっぱり微笑む。


…ちょっと難しい。

…ううん、かなり難しい。

…何を…どういう風に聞けばいいのだろう…。


あたしはいつの間にかあのときの…何も考えずに、家を飛び出して来てしまったあのときの気持ちに戻って。

…そう、“本当のことが知りたい”…そんな気持ちに戻って。

素直に聞くしかない、正直にあたしの聞きたいことを。

例えそれが、三枝コーチを傷つけたとしても…。


あたしはそう心に決めて、小さく息を吸い込むと、静かに口を開いた…。

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