再会
「久しぶりね~!あらあらすっかり女の子らしくなって…。さぁ、入って入って~」
オートロックのドアを抜けて、エレベーターを降りた先。
2階の2号室、プレートに “202” と書かれたそのドアの横のチャイムを押そうとした瞬間、三枝コーチはドアを開いて、2年前と変わらない優しいその笑顔で、あたしを出迎えてくれた。
「…あれ?三枝コーチ、その格好…」
喪服姿の三枝コーチを見つめながら、尋ねるようにあたしが言うと
「…うん、こんな格好でごめんね~。今丁度、良介の…、あっ…風間コーチのお葬式から帰って来たところなのよ~」
“良介”…風間コーチの下の名前だ。
そっか…知らなかったけど、三枝コーチは普段、風間コーチのことを “良介” って呼んでたんだ。
一瞬、変なことに感心してる、あたし。
「さぁ、ともかく入って入って~」
玄関先にいたあたしを再び促すように、三枝コーチは言う。
「失礼します…」
あたしはそう言って靴を脱ぐと、それを揃えてから部屋の中にお邪魔する。
…白を基調とした可愛くて、清潔感のあるお部屋。
マンションの名前もホワイトだったし、三枝コーチって白色が好きなのかな?
あたしは勧められた白くて丸いビーズクッションに腰掛けながら、そんな部屋の中をキョロキョロと見回していた。
三枝コーチは喪服姿のまま、キッチンでゴソゴソと何かをしていたかと思うと…。
白いトレイにクッキーとアイスティーを載せて、あたしのところまでやって来た。
「外は暑かったでしょう?水分補給とエネルギー補給をしてね~」
そう言って、クッキーとアイスティーをあたしに差し出す。
何となくその言い方が体育会系の人間らしくて、あたしはクスッと笑ってしまう。
「あら?私、何かおかしなこと言った~?」
三枝コーチは少し首を傾げながら、そんなあたしを見つめる。
あたしは慌てて
「あっ…いえ、何だか三枝コーチ、昔と変わってないなぁ…って思ったら、つい嬉しくなっちゃって…」
あたしのこの言葉に、三枝コーチは一瞬考え込むように腕を組みながら
「まぁ…私はね…。でも美心ちゃんは水球を教えていた頃は、とても男の子っぽかったけど、今はとても女の子っぽくなったわよ~。私、びっくりしちゃって…。でも、まぁ…私の大人の魅力には、まだまだ遠く及ばないけどね~」
そう悪戯っぽく言う。
あたしはすかさず
「でもあたし、シャワーのお湯、まだ肌が弾き返しますけど…」
そう言うと
「な…何ですって~…シャワーのお湯を…肌が…弾き…返す…ですって~!私なんて吸い込むばかりなのに~?」
と三枝コーチが言い返す。
…そして。
…。
一瞬の間があってから、二人して声を出して笑った。
あたしは三枝コーチと一緒に笑いながら、気持ちがホッとしているのを感じていた。
勢いだけで、三枝コーチのマンションへやって来てしまったけれど…。
このままこうやって、楽しい会話だけをして帰ったって…別に、いい。
“…本当のことが知りたい…”
弱気になった心から、強い気持ちが消えそうになって…。
笑う三枝コーチを見つめながら、あたしはそんなことを考えていた。




