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黒の呪歌



 これは「ツインスピカ」本編、第277話 「黒い呪歌」で歌われた呪歌のフルバージョンです。


*本編のネタバレが含まれているので、注意してください*





   黒の呪歌



 憎しみの海にたゆたい

身も心も全て委ねた絶望の果て

考えることをやめて

ただ感情のままに投げ出してしまえばいい

そうすればラクになれると信じてた


 それでも忘れることは出来ない

君への本当のキモチ

ただ単に

「君を愛してる」という想いだけが

あたしの全てだった


 愛を知れば 

失うことが怖くなる

そして恐れが生まれ 臆病になる


 本当は君に愛されたかった

でもそれも もうおしまい

君を失えば

何も残らないように

あたしの中に芽生えた心さえ

何も残るはずなんてないのだから


 だから恐れを捨てなさい 愛を捨てなさい

それが全ての解放へと繋がるように

何者をも恐れぬ 修羅となれるから


 そして憎みなさい 奪いなさい

それが心を解き放つ

ただひとつの自由へと繋がるから

君を失った痛みや苦しみだって

全て忘れることが出来るから


 君がいない世界なら

いっそこのまま何もかも

消えてなくなってしまえばいいのに……


 苦しみのない 痛みのない

そんな世界だけが欲しかった


 死にたい 死にたい 死んでしまいたい

いっそこのまま全て滅んでしまえばいい……


 手遅れになる前に

愛に気付く前に

痛みを知る前に

君を失う前に


 だから怖れを捨てなさい 友を捨てなさい

それで失う痛みを感じることは出来なくなるから


 欲しいものを 欲しいままに

自分に正直であれ 素直であれ 

闇こそ あたしの真の姿

暗闇こそが あなたたちの求める場所


 闇を求めなさい 憎しみに応えなさい

「生」という苦しみから 解放される為に

偽善という名の正義を脱ぎ捨て

欲望のまま 破壊の限りを尽くしてしまえ


 自由を求めなさい 衝動に駆られなさい 

その先にきっと

永遠の快楽が待っているから


 絶望の淵に立たされ

このまま堕ちて行けば

きっとその先に

ラクな未来が用意されているから




 ***************************************




        <解説>


 この呪歌はディアヴォロの眷族として復活を果たした2番目のアンフィニ、ユリアが歌った呪歌です。現存する呪歌の全ては初代神子アウラが作ったものであり、ザナハが歌う呪歌も基本的にはオリジナルに沿って歌っているもの。

 しかしユリアが歌う呪歌の殆どはアウラが遺したものではなく、ユリア自らが作ったものです。「ユリアの呪歌」に関しての細かい記述などは、また別の機会に語りたいと思います。


 眷族ユリアが歌ったこの「黒の呪歌」は、本編でザナハが語っている通り―――――――憎しみ、恨み、悲しみ、絶望を込めて歌われた、まさに「呪いの歌」そのものです。

 曲調としましては今までザナハが歌って来た穏やかで親しみやすいものとは異なり、リズムは非常に激しくかなりの歌唱力を求められるメロディーとなっています。サビの部分では更に曲調が激しさを増し、まるで「生き急ぐ」「死に急ぐ」という思いさえ込められたような疾走感が強調されており、声量だけではなく曲調に合わせられる程の歌唱力―――――――そして何よりも、憎しみに支配されたユリアにしか歌い切ることが出来ないと言わんばかりの「強い思い」が相当込められているといってもいいでしょう。




        <歌詞に込められた解釈>




 本編ではまだ詳しく明かされていない「ヴェルグ」という名の戦士の存在、この歌には彼への想い―――――――そしてそれを失った絶望が込められています。

 ユリア本人が味わった苦しみ、失う痛み、「愛を知ればその代償に強い憎しみを得る」という矛盾。「人は愛がなければ生きられない」と説く者もいますが、この歌には「愛を知ることで死ぬより辛い苦しみが待っている」と説いています。

 そしてユリアは自身が体験した「痛み」や「苦しみ」を旋律に乗せることで、この歌を聞く全ての者に同じ「痛み」や「苦しみ」を共有させようとする力を持っています。


 ユリアにとって「愛する」という行為は、自分自身に「痛み」しか与えない。そして「誰かを愛する」ということは、「失う恐怖」を同時に得るのだと、そう解釈しています。

 よって「愛する者」や「大切な者」を切り捨てることで、そういった「恐怖」から解放されようと訴えているのです。

 そしてここでは「悪」が正当化され「制約のない自由」を得る為に、自ら「闇」に身を委ねさせようと―――――――呪歌を聞く者を闇に導こうとしています。

 この呪歌を聞いた者はそういった「闇」の部分を強調され、抗えば抗う程に苦しみが増すようになっています。身体能力の低下、そしてマイナス思考に陥りやすくなり、負のイメージを植え付けられます。聞いた者がこの呪歌を理解し、共感してしまった時点で闇に囚われ眷族候補と成り果ててしまいます。

 ここで言う「眷族候補」とは、異形の姿としての「ディアヴォロの眷族」には変異せず、憎しみに支配された凶器の塊となってしまうことをいいます。闇の眷族であるジークに負のオーラを与えられ、憎しみに支配されたフィアナの状態がまさにそれです。

 しかし「眷族候補」の状態ならば、まだ救いはあります。浄化、あるいは本人が心を改めることが出来れば「眷族候補」から解放されますが、この「黒の呪歌」を耳にしている間はそれらが一切無効となってしまいます。

 それだけユリアが憎しみと絶望を込めたこの歌に、凄まじいまでの力が発揮されているのです。


 憎しみ、怒り、破壊衝動、それらを肯定するこの呪歌は、まさに眷族を増殖させる為に作られたようなもの。ユリアはただ一心に「愛=苦しみ」と決めつけています。それを他人にも強制的に信じ込ませ、希望を否定させる歌―――――――それが「黒の呪歌」です。


 



 今回の呪歌は闇の眷族と成り果てたユリア(以下、黒ユリアと命名)が作った呪歌となる為、本編でも黒ユリアしかこの呪歌を歌いません。

 なのでタイトルにも「黒の呪歌~ユリアバージョン~」とは入れませんでした。


 ちなみにこの回の「解説」でも語っているように、ユリアに関しては新しい物語として投稿する予定となっていますので。

 細かい内容に関しては伏せさせていただきますので、ご了承ください。



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