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ベディ・スィムグ~戦歌~

 これは「ツインスピカ」本編、第263話「ベディ・スィムグ~戦歌~」でザナハが歌った呪歌のフルバージョンとなります。


*今回の解釈欄には第263話の内容に関するネタバレも含まれていますので、まだ読んでない方は注意してください!*




   ベディ・スィムグ~戦歌~




 翼を広げて 飛び立とう

まだ見ぬ地へ 旅立つ為に

そこには荒れ果てた大地が広がって

私達を迎えるだろうから

だから私は歌う

いたわりと友愛を込めて 心から歌う


祝福を 祈りを 慈愛を 賛美を


 やがて花びら舞い散り 季節が巡る

風が緑を運び 大地は芽吹き 

穏やかな川の流れと共に

人々は喜び 杯を交わすだろう


 熱き心と共に また皆で 生を繋ぎ止めよう

やがて来る 明日という希望を胸に

平和を歌い 皆の無事を祈ろう

絶望から這い上がる力を 求めながら


 空を仰ぎ 星に祈ろう

まだ見ぬ明日を たぐり寄せる為に


 私の中に宿る 想い

優しい世界を願い 月に祈る

氷のように 冷たい体を

決して壊れないように そっと優しく抱きとめて

その傷を癒してあげる


 どんなに残酷な運命が 待ち受けても

手を取り合い 共に乗り越える

受け入れるだけが 全てじゃないから


 涙を拭って 運命を変えよう

その先に 闇をも照らす光が きっと見えるから


 あなたを追いかけて 手を伸ばし

掴みかけた未来を 笑顔で迎えられるように


 時は満ち 雲間から光が差し

やがて 朝を迎える

そこには約束した「永遠」が待っている


守ると誓った未来が 私達を待っている




 ***************************************



        <解説>



 「ベディ・スィムグ」とは古代レヴァリアース言語で「戦歌」という意味です。この歌は初代神子アウラが自らの運命を知り、自分を戦禍の中へと招いた戦士ロギと共に旅立つ決意をした時に作った呪歌です。まだ見ぬ地への不安、戦いへの恐怖、それらを振り払う為に・・・そして自らの背中を押す為に作ったともされていますが、本当の所は誰にもわかりません。ただ言えることはこの歌詞と旋律から、戦地へ赴く者の士気を高めることを前提としたメロディーとなっているので、この呪歌が歌われた時には聞く者に「勇気」という名の強さが与えられるとされています。


 本編では第263話「ベディ・スィムグ~戦歌~」で、光の精霊ルナの試練としてザナハがこの歌を歌っています。旋律は勿論のこと、ここでは歌詞も原曲の詩をそのまま紡いでいます。今までザナハは師であるミラから様々な呪歌を教わりましたが、それはあくまで詩と旋律をマニュアル通りに暗記しただけのこと。歌のひとつひとつには色々な意味や気持ちが込められていますが、ザナハはそれらを本当の意味で解釈しているわけではありませんでした。なので実際に仲間達が目の前で傷付けられている時、ザナハは気持ちが焦る余り・・・そして混乱する余り呪歌を歌う時に最も大切な「気持ち」を乗せて歌うことが出来ませんでした。

心を込めなければそれはただの歌でしかないことは今までに何度も説明してきました、しかしここでザナハは「目の前で仲間が命の危険にさらされているのに、笑って歌うことなんか出来ない」と泣き叫んでいます。

この言葉に対し光の精霊ルナは痛烈な言葉をザナハに投げかけました。

『それでも歌うのがアンフィニ』だと。『アンフィニは常に仲間の心の支えでなくてはならない、自分がどんなに辛くても、苦しくても、それでも笑顔で歌い切るのがアンフィニの強み』だと教えます。

頭ではわかっていても心がついて行かないザナハの元へ、ルイドの使い魔である青い鳥が姿を現しました。彼の存在により落ち着きを取り戻したザナハは、もう一度呪歌を試そうと決意します。そして改めて歌った歌にはザナハの想いがたっぷりと込められて、強力な魔物と戦っているアギト達に凄まじい効果を与えました。この時の歌によってアギト達に与えた影響は「ルフガメア」の比ではありません。

痛烈なまでの想いを乗せて歌った呪歌にはこれまでになかった「パラメーターに影響を与える」効果を付与します。

攻撃力、防御力、魔法力を大幅に上昇させる他、削られていた体力までも回復させるというものでした。

これを機にザナハは「気持ちを込めて歌う」という意味を、ほんの少しだけ理解したことになります。今後の戦いにも呪歌は必要になって来るのでここで得た経験は、ザナハに大きな躍進をもたらすことになるでしょう。




        <歌詞に込められた解釈>




 解説欄にも説明しましたが、この歌は新たな一歩を踏み出す者への応援歌のようなものです。その中でも特に注目する点はこの歌の歌詞には精霊の存在を示すような表現が幾つか出て来ています。


「やがて花びら舞い散り 季節が巡る 風が緑を運び 大地は芽吹き 穏やかな川の流れと共に 人々は喜び 杯を交わすだろう 熱き心と共に また皆で 生を繋ぎ止めよう」の部分では、一気に「風」「土」「水」「火」の精霊を思わせるような解釈が出来ます。

更に「季節が巡る」という表現から、恐らく歳月などの移り変わりという意味合いとしてヴィオセラス研究所の「呪歌解読班」の解釈によると「時の精霊のことではないか?」という認識がされています。

他にも「光」や「闇」などの表現も含まれていますから、この詩の中には「精霊の存在もとても大切なもの」だということを暗黙に訴えていると捉える事が出来ます。


 戦地に赴く者をテーマにした歌ですから、歌詞の大半は「生き残ること」を強く訴えています。「明日」という単語が多数使用されていますが、これも「今を生きて明日を迎えよう」という強い気持ちが込められています。


 ひたすら前向きに、希望を強く信じるこの歌には、戦士や神子達が辿る凄惨な運命に関してまるですでに察してるような、そんな風に思わせるような表現が幾つかされていることにお気づきでしょうか?

この歌はアウラが旅立つ時に作った歌なので、その時点で双つ星の戦士の運命を神子であるアウラが知っていたのかどうか・・・それはまた別の機会にお話ししようと思います。

ですが世界の混沌たるディアヴォロの存在、それと戦うことを義務付けられたアウラにとってディアヴォロを破壊する旅立ちを決意した時点で、すでに十分と言ってもいい程に残酷過ぎる運命だと取ることも出来ます。

それでもアウラはこう言っています。

「どんなに残酷な運命が 待ち受けても 手を取り合い 共に乗り越える 受け入れるだけが 全てじゃないから」と・・・。


 決して希望を諦めていないこの言葉に、一体どれだけの者がこの歌を聞いて勇気付けられたことでしょう。この歌はそんなアウラの想いと、歌を聴く者達の不安や孤独、死への恐怖や絶望を払拭させるという、とてつもなく深い愛情が込められた呪歌となっているのです。タイトルこそ「戦歌」になっていますが、これは希望を象徴させる「オーヌ」とはまた違った意味合いを持つ「希望の歌」なのかもしれません。

 



「ルフガメア~原曲バージョン~」はもう少し待ってくださいませ。

とりあえず今回は本編の掲載に合わせて戦歌の方を先に掲載しました。

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