3柱(A)_ここで働かせて下さい!
ようこそ3話目へ!
私の趣味全開ですが良ければ読んで行ってください。
翌朝。
優と空も一緒に神社の掃除をすることになった。
椿ちゃんと空はすっかり仲良くなったみたいで、二人で楽し気に話しながら落ち葉を集めている。
結構遅くまで話し声が聞こえてたからなぁ。
俺は初めて飲んだお酒のせいか、すぐに寝てしまったけど。
優は寝不足なのか、大きな欠伸を手で隠している。
「ごめんな。先に寝ちまって」
「大丈夫だよ、昨日は楽しかった?」
「あぁ、最高の誕生日になったよ」
「それは良かった」
そう言って爽やかな笑顔を見せる優。
中性的な顔立ちのせいか、男だとわかっていてもドキッとする。
「あの二人は遅くまで起きていたんだろ? 優も起きてたのか?」
「え?! あ、う、ううん。ぼ、僕もすぐに寝ちゃったから!」
「そうか?」
なんか急に焦りだしたな。
まぁ、気にするほどの事でも無いか。
掃除を終えると、優と空はそのままパーティの片づけまで済ませて帰り支度を始めた。
2人を見送るために俺と椿ちゃんも家の横の空き地に行く。
優は自分の車のトランクを開けると、腕いっぱいに抱えた荷物を押し込んだ。
「相変わらず古いの乗ってんな。」
「ふふふ、まだこの間言った事怒ってるの? しつこい男は嫌われるよ?」
「うるせぇ!」
流れるようなボディラインと車体の青色がマッチしてとても美しいこの車は。
”アルファロメオ 156 GTA”
3.2リッター V6自然吸気のイタリア車だ。
俺が世話になっている車屋に優を連れて行った時に一目ぼれしたらしく、その場で現金一括の購入契約を結んでしまった。
ケッ!
これだから実家が金持ちのボンボンはよ!
「・・・日本人はやはり鈴木に乗るべき。・・・尊もアルトワークスとかに乗り換える?」
「乗り換えるかよ! お前もイタリアのバイクに乗り換えたらどうよ」
「・・・私の”ファルコ・ランバルディ”は至高」
「それって雉じゃなかったっけ?」
「・・・細かい男はモテない」
「うるせぇよ!!」
ムッチリ感が強調されたラインのこの大型バイクは。
”スズキ GSX1300R”
登場当時、最高速度300km越えを達成したアルティメットスポーツ。
一般には”隼”の名で知られているバイクだ。
これも同じ車屋に置いてあったのを空が見つけて、一目ぼれして買ったらしい。
空の親も金持ちだから安心の現金一括。
ブルジョワ共め!
ちなみに名前の由来は車体のカラーが青系だったのと、空の好きなキャラから付けたそうだ。
「これは何でしょう?」
車とバイクを交互に見た椿ちゃんが俺に聞いてきた。
そうか。
椿ちゃんは車とバイクを知らなかったか。
「これは自動車。車って呼ぶことが多いんだけど、現代の一般的な移動するための乗り物だよ。空の方はバイクだな」
「なるほど。牛も担ぎ手もいないようですが、どのように動かすので?」
「・・・こんな感じ」
空はヘルメットを被って隼にまたがると、エンジンをかけた。
空気を振るわせる低音に椿ちゃんは、
「なんと、まぁ」
なんて言って関心を示している。
空はそのままギアを1速に入れ、表の道路に出て走り出した。
少し行った先で綺麗にUターンするとそこそこのスピードで俺たちの前を通り過ぎ、また少し先でUターンして空き地に戻ってきた。
バイクを降り、ヘルメットを外した空はドヤ顔(無表情だがそんな雰囲気だ)を見せてきた。
「・・・どう? 椿氏」
「こんなに早いのですね」
椿ちゃんは隼を眺め、そして。
「こちらの”ばいく”。わたくしにも乗れますか?」
意外な申し出に俺は面食らってしまったが、空の方は信者を増やすチャンスとばかりに説明を始める。
「・・・興味がある? ・・・免許があれば大丈夫。・・・椿氏も鈴菌に感染するといい。・・・これより小さいのが私の実家にある。・・・それで練習するといい」
「では、その”免許”とやらはどちらで頂けばよろしいので?」
「・・・まずは車校に行く必要が「ちょ、ちょっと待った!」
何やら盛り上がる二人に対し、俺は大事なことを確認しようと割って入った。
「・・・尊。・・・鈴菌の布教活動を邪魔しないで」
「いや、そうじゃなくて。椿ちゃんは”元”幽霊なんだぜ? お金も保険証も無いし、そもそも戸籍が無いはずだから、免許を取ることができないんじゃないか?」
俺の最もな疑問に、空は「・・・あっ」とか言って固まっちまった。
優も「言われてみれば」と言って考えこんでいる。
「わたくし……免許を頂くことができないのでしょうか。”ばいく”も乗れない?」
あぁ!
椿ちゃんがあからさまにしょんぼりしている!
俺も椿ちゃんがバイクに乗りたいなら協力したい。
だけどどうすれば……。
「じゃあ。僕と空の親に頼んで何とかしようよ」
「・・・その手があった。・・・今こそ親の脛をかじる時」
優の父親は隣町の市議会議員も務めている名士だ。
俺も何度か会った事があるが、物腰は柔らかいのに威圧感を感じるちょっと恐い人だった。
空の親も、たった一代で全国規模の大企業となった会社の社長だから、その影響力は計り知れない。
この二人の親に頼めば、確かに何とかなりそうな気がする。
だが、俺から返せる物が何もない。
二人の善意に乗っかるだけなんて、なんかダメな気がしないか?
だって俺は”旦那様”なんだから。
「気持ちは嬉しいけど……」
どうしようかと迷っていると。
「ありがたく力を借りろ、尊」
「婆ちゃん」
いつの間にか婆ちゃんが空き地に来ていた。
「お前さん達の親は儂に借りがあるんじゃ、どでかいやつがな。儂の名を出して頼めば余程の事でもない限り聞いてくれるじゃろ。尊も儂の脛をかじっとけ」
「婆ちゃん、二人の親と知り合いなのか?」
「まぁ、ちょっとな」
婆ちゃんはそれ以上は教えてくれなかった。
必要があったら教えてくれるだろう。
「じゃあ、父さんには僕から話をしておくよ」
「・・・私もパパに相談する」
「すまねぇ、よろしく頼む」
「何卒。よろしくお願い仕ります」
「ふふふ、相わかりました」
「・・・椿氏は何も心配いらない。・・・任せて」
二人はそう言うと、自分の相棒に乗って行ってしまった。
「さて、それじゃあ椿ちゃんの戸籍は二人に任せるとして、俺も出かけるとしますか」
「旦那様? どちらへ?」
「バイトだよ。あぁ、えっと……お金を稼ぎに行くんだよ」
「左様ですか」
そう言った椿ちゃんは微笑んだままだが、なんとなく寂しそうに見えた。
「あーっと……一緒に行くか?」
それを聞いた途端、椿ちゃんからパッと笑顔が溢れた。
「是非に!」
可愛いな!
チクショウ!
◼️
二人でジョバンニに乗り、やってきたのは俺の馴染みの車屋でバイト先でもある。
"トレ・コルヴィ"
腕の良い整備や珍しい在庫車。そして作れないパーツは無いとまで言われる事で有名なショップで、地元はもちろん遠方からも客が来るし、車やバイク。果てはトラクターやパワーショベルなんかの修理もできるのだ。
まぁ、その反動か。
店主や従業員は非常に個性的だが。
店の空いてるスペースにジョバンニを停める。
今日は日曜なのに休日らしく工場のシャッターは閉まっている。
いそいそと降りた椿ちゃんは早速、店頭にずらっと並んだ車やバイクを眺めて回り出した。
楽しそうだな。
連れてきて良かったぜ。
などと思っていると。
「尊ちゃ〜ん♡」
並んだ車を縫うように、身の丈2mはあろうかという人物が迫ってきた。
ピチピチの赤Tシャツに青のオーバーオール。
蓄えた口ひげは某国民的ゲームのお髭のおじさんだが、頭はツルツルで日に焼けた肌、そして服を破らんばかりの盛り上がった筋肉は”セルジオ・オリバ”を彷彿とさせる。
そんな巨体がお姉言葉を発しながら内股で近づいてくるのだ。
初対面だと恐怖以外の何者でもない。
実際、俺も子供の頃に初めてこのクリーチャーにあった時はギャン泣きした覚えがある。
「待ってたわよ〜、尊ちゃん! "物"は持ってきたんでしょうね?」
セルジオ・オリバが顔をにじり寄せてきてウインクしてくる。
「近い近い! 持ってきてるから離れろよ!」
「んもぅ、いけずねぇ」
クネクネするんじゃねぇ!
気持ち悪りぃな!
「旦那様。こちらの方は?」
いつの間にか、車を見て回っていた椿ちゃんが戻ってきていた。
初めて見る和服美人ちゃんにオリバは一瞬フリーズしたが。
「あら、初めまして! 尊ちゃんのお友達かしら? あたしはこの店の社長で整備士をやってる”チェリー”って言うの! よろしくね♡」
「お初にお目にかかります、チェリー様。わたくしは椿と申します」
この筋肉クリーチャーに対しても椿ちゃんは物怖じせずに礼を欠かさない。
椿ちゃんは意外と肝が据わっているのかもしれないな。
「あら! 礼儀正しい子は好きよ♡ それにしてもアナタ、可愛いわねぇ~♡ 尊ちゃんの学校のお友達かしら?」
「わたくしは尊様のお嫁さんです」
ニコッと笑って小首をかしげる椿ちゃん。
オリバ。
もとい、チェリーは目玉が飛び出るかと思うぐらい目を見開いて固まった。
「おーい、大丈夫かー? ”勇雄”」
「その名で呼ぶんじゃねぇ!」
「ぐふっ!」
クワッ! と目を見開いたチェリーが野太い声で怒鳴ると、いきなり俺の首にヘッドロックをかましてきやがった!
太ももみたいな腕にタップしまくる。
あぁ。川の向こうで婆ちゃんが手を振ってるよ。
見えちゃいけないようなものが見えた所で、ようやく筋肉から解放された。
「ゲホッゲホッ!」
「ふん! デリカシーが無いんだから!」
俺がその場に膝から崩れ落ちると、椿ちゃんが駆け寄ってくれた。
「大丈夫ですか? 旦那様」
あぁ、椿ちゃん。君はやっぱ天使だぜ(元幽霊)。
「あら! ごめんなさい。大事な旦那様なのに」
「いえ。旦那様は何かチェリー様のお気に触る事を申したのでしょうか?」
「ちょっとね。あたしの封印されし名を呼んだものだから……」
「諱でございますね。それは申し訳ございません」
「まぁ、そんな感じね。椿ちゃんのせいじゃ無いから大丈夫よ~! ふふふ♡」
そう言うとチェリーはグルンッ!と俺に首を向けると。
「そ・ん・な・こ・と・よ・り!」
そしてチェリーは俺の肩を掴んだ。
痛ぇな!
おい!
やめろ筋肉逹磨!
「ちょ~っと"旦那様"をお借りするわね〜!」
そう言って、車の陰に俺を引き摺り込んだ。
オイコラ!
何しようってんだ!
(ちょっと! どう言う事よお嫁さんって! あんたどこで攫ってきたのよ!)
(こ! これには深い事情があるんだって!)
肩を掴んだまま揺さぶるんじゃねぇ!
首が折れるだろうが!
「あのぉ……」
「「ハッ!」」
椿ちゃんは俺を心配してくれたのか、車の陰にいる俺たちを、首だけ出して覗いていた。
あぁ、サラサラと流れる髪が美しい。
椿ちゃんに見惚れる俺を見たチェリーは俺の肩から手を放して立ち上がると、フンッ!と鼻息を一つ立てた。
「事務所に行きましょうか。ちゃんと話を聞かせて貰うわよ!」
オーケイオーケイ。
思う存分話してやろうじゃないの。
最後まで読んで頂いてありがとうございます!
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