6柱(C)_名前とはこの世にある事の証明
土日連続で投稿したかったんですけど、ちょっと難しそうです……。
1話は投稿するようにしますので、生暖かい目で見守ってくださいませ。
(ー ー;)
「はぁ、はぁ……こっちの攻撃が全然効いてないのです」
「あぁ……あぁ……」
幼女と鬼女は肩で息をしている。
2人にとって、熊童子との闘いは苦しい展開となっていた。
「なんだ、もう終わりか? 散々喧嘩売っといて、これで終わりって事はねぇだろ? なぁ、ちびっ子」
「誰が、ちびっ子なのです!」
2人と比較すると、熊童子の方はまだまだ余裕が見える。
「その威勢がいつまで続くか見物だなぁ。おら! 行くぜぇ!」
熊童子は太い腕を大きく振りかぶり、幼女に向かって突進する。
「あぁ!」
「クソ! 邪魔だ!」
ガンッ!
鬼女が立ちふさがり結界を張る。
熊童子は結界を認識できているようで、振りかぶっていた腕を結界に叩きつけた。
「止まれ!」
「グッ!」
動きの止まった熊童子に、幼女は異能を発動させて固定する。
「今です! 師匠!」
「ああぁ!」
鬼女は結界を解き、固定された熊童子に対して突きや蹴りのラッシュを繰り出す。
幼女は鬼女の攻撃部位だけ固定を解除し、ダメージが通るようにする。
目で追うのもやっとという程の素早い攻撃が、熊童子の全身に繰り出されるが。
「し、師匠!」
「あぁ」
「解除! ……はぁ、はぁ」
5秒と持たずに固定を解除してしまう。
熊童子ほどの体積を相手にするには、幼女の神力は小さすぎた。
「なんだよ。もう終わりか? チクチクと痒くてたまんねぇな」
自分の毛皮をかきむしる熊童子。
見た目には凄まじい鬼女の怒涛の攻撃も、熊童子の厚い毛皮に対しては軽すぎるようだ。
鬼女の結界と体術、幼女の異能は相性としては申し分ないものだったが、熊童子相手には攻撃力が小さすぎる。
先ほどから同様のパターンで攻撃を繰り返してはいるが、一向に熊童子へ有効的なダメージを与える事ができないでいた。
「ま、まだこれからなのです! お前こそ真っ直ぐ突っ込むしか能がない癖に偉そう言うなです!」
「そうかよ!」
言葉を発するが速いか、熊童子は幼女めがけて突進する。
「あぁ!」
「またテメェか!」
鬼女が立ち塞がり、結界で突進を防ぐ。
「おらぁ!」
ガンッ!
「止まれ!」
熊童子が結界を両腕で殴りつけ、動きが止まった瞬間に幼女が固定しようとする。
だが、熊童子は結界に触れた両腕に力を込め、素早く後ろへ跳躍した。
異能が発動せず、幼女は思わず動揺を見せる。
「へっ! やっぱりそうか」
熊童子は何かを確信したらしく、不敵な笑みを浮かべる。
「ちびっ子。どうやら、お前ぇの異能は俺が動き回っていると発動しねぇみたいだな」
「な、何を言うのです! そんな事無いのです!」
咄嗟に否定するものの、概ね熊童子の看破した通りであった。
この異能は、対象に効果を発揮させるため一定時間の間、指定した範囲内に留まっている必要がある。
指定する範囲を広げれば、どれだけ早く動いても範囲内に留めておく事は可能になるが、神力の使用量が跳ね上がるので、今の幼女には使用できない。
なので、最小範囲で異能を発動させる為に、戦闘時はどうしても足止めが必要になってしまうのだ。
鬼女の結界がその足止めの役割を果たしていたのだが、何度も繰り返したことでバレてしまったらしい。
「それにしても、神力を持ってる癖にこんなに弱ぇとはな。お前は付喪神だろう? お前の持ち主の思いも相当弱ぇんだろうな!」
「ッ! ご主人の事を悪く言うのは許さないのです!」
自分の使用者を悪く言われて激昂した彼女は、鬼女の静止も振り切り、熊童子へ突進して殴りかかった。
「軽い! ほらよ!」
バシン!
「が!」
その怒りの矛を嘲笑うかのように片手で受け止めた熊童子は、反対の手で幼女の頬に強烈なビンタを喰らわせた。
狙ったのは頬だが、熊童子の大きな手は幼女の顔全体に直撃し、小さな体ごと弾き飛ばされて地面に転がる。
「あ、が……ぅあ」
幼女は起き上がろうとするものの、頭に強烈な一撃をくらったせいで意識が朦朧とし、震える腕に力が入らず、立ち上がる事ができない。
「そろそろガキの遊び相手も飽きてきたぜ! とどめだ!」
熊童子は四つ足の姿勢をとり、幼女目掛けて真っすぐ突進してくる。
「あぁっ!」
幼女に迫りくる熊童子の前に立ちふさがった鬼女は、結界を発動させて熊童子の突進攻撃を防ごうとしたが。
「何度も同じ手はくらうかよ!」
「ッ!?」
熊童子は結界の手前で上に跳躍した。
鬼女を飛び越え、幼女目掛けて文字通り飛びかかる。
早く逃げないと……なのです。
熊童子が爪を突き立て、今にも自分を切り裂こうとしている。
その光景が幼女の目にはゆっくりと流れるように見えていた。
見えてはいるのだが体が動かない。
幼女はこの時初めて、迫りくる死の恐怖というものを感じていた。
こ、殺されるのです!
そう思った刹那。
視界が真っ白になり、優しい温もりを感じる。
そして、考える間も無く視界が赤くなる。
幼女の瞳の中で崩れ落ちた"赤い布切れ"。
数秒の後、"それ"が幼女の師匠であると、ようやく認識できた。
■
「旦那様! お早く!」
「ゼェ、ゼェ。そ、そう、言われても……ゼェ、ゼェ」
椿ちゃんが当初感じていた、幼女が発する気配のようなもの。それが今はハッキリと感じ取れ、幼女が通った場所に薄らと光の筋が見えるそうだ。
その筋を辿って2人を追っていたのだが、途中から山道を外れて山の斜面に向かったらしい。
他に道も無さそうなので、仕方なく俺たちはジョバンニを降りて登山を始めたのだが、登り始めて少し経った時。
「旦那様! この山の上で誰かが戦っております!」
「確かに。signorinaの神力の他に”妖力”を2つ感じるね。1つは鬼女さんだろうけど……」
椿ちゃんが感じていた神力の気配の他に、”妖力”という妖怪が使う力を感じたらしい。
予想していた最悪の状況になったのかもしれない。
"妖力"
それは妖や妖怪の異能である妖術を用いる際に使用する力であり、
神種が持つ神力とは相反する力とされているそうだ。
神力とは違って使用できる容量に限界があり、使い切れば回復を待つ必要がある。
妖怪の中には自分の力を強化する為に神種を喰らって神力を取り込もうとする奴がいるが、神力を得た妖怪は、その力に釣られた他の妖怪から狙われるようになる。
それにも関わらず神力を得ようとするような妖怪なら、かなり強いと考えるべきだろう。
一緒にいた鬼女も強い方らしいが、測ったわけじゃ無いから実力は未知数だし、そもそも信用できるかが分からない。
急いで助けに行くべきだろう。
と、分かってはいるものの、手入れされていない山の斜面に加えて、雨の影響で足場の悪い所が多く、さらに俺の体力が弱小だった事もあってペースは早くない。
「はぁ、はぁ……2人とも。はぁ、はぁ……先に行ってくれ。必ず、追いつくから」
「旦那様、わたくしの肩にどうぞ!」
「……ありがとう」
俺は一瞬ためらったが、ありがたく肩を借りる事にした。
女の子に触れるのはドキドキして恥ずかしいけど、そんな事言ってアイツがいなくなったら目もあてられない。
「俺が先に行くよ」
「頼んだぞ、ジョバンニ」
ジョバンニは「任せな」と言ってウインクすると、颯爽と斜面を登って行った。
今向かってるから、待ってろよ。
お前が喜ぶような名前をつけてやるんだからな。
最後まで読んで頂いてありがとうございます!
ついでにリアクションやブックマーク、感想なんか頂けると凄い嬉しいです!
気に入ってくださったら幸いです。




