泡沫(うたかた)の恋
仮面舞踏会では、名前や身分を聞くのはご法度。さらに知っていても、それを口に出すのもご法度だ。つまり肩の力を抜いて参加できる。
ということでかつて宮殿の舞踏会では、派手や原色に近いドレスを着てよく足を運んでいた。でも今回は、ガラリとイメージを変えるため、淡いシャンパンゴールドのドレスを選んだ。
生地は光沢のあるシルクで、ウエストには立体的な花が飾られている。背中が大きく開いたデザインで、パールが飾られたバックワードネックレスをつけることにした。動く度に背中でネックレスが揺れ、とても優美だと思う。
仮面は目元だけを隠すアイマスクタイプを用意。白にブルーシルバーの飾り、さらに紺碧のラピスラズリもあしらわれている。
ドレスにピッタリあう!
用意は整った。
舞踏会へ行くのだから、イーサンはエスコートを兼ね、屋敷まで迎えに来てくれることになっていた。ちなみに両親も同じ仮面舞踏会に参加で、既に出発している。
「そろそろ時間ね」
呟いた私は、予定時刻に屋敷のエントランスホールへ向かう。
ソファに座り、イーサンの到着を待った。
イーサンに会うことと、宮殿の舞踏会へ行くこと。
その両方で緊張している。
ほどなくして、イーサンをのせた馬車が到着。エントランスに出ると、まさにイーサンが馬車から降りてきた。
「……!」
イーサンは白のテールコートだった。
ベストはシャンパンゴールドで、タイとポケットチーフは撫子色。
その身長とよく鍛え、引き締まった体躯だからこそ似合うコーディネートだった。
サラリとアイスシルバーの髪を揺らし、イーサンが微笑む。
紺碧の瞳がキラキラ輝いているように見えた。
とても素敵だった。
たとえ今日一日にだけでも。
それが泡沫だとしても。
イーサンにエスコートされ、舞踏会へ行けるのは、光栄だと思えた。
「お待たせしました、ローズベリー伯爵令嬢。参りましょう」
イーサンが優雅に微笑んだ。














