余計な「もしも」をつい考えてしまう。
「待ってください!」
イーサンが慌てた様子で前のめりとなり、私を見た。
「実は一緒に観たいと思っている演劇があるのです。恋愛をテーマにしています。絶対に勉強になりそうです。それにそう。舞踏会。ロマンス小説で、舞踏会での振る舞いについても学びましたよね。実践もしましたが、でもあれは実際の舞踏会ではないです。ですから舞踏会も行きましょう!」
「わ、分かりました。ではその演劇と舞踏会、行きましょう」
イーサンのその必死さに、初めて会ったカフェを思い出す。私から何としても恋愛レッスンを受けたいと、必死だったイーサン。今もその時と同じ。「行きましょう」と答えなければという気持ちになっていた。
「実は演劇のチケットは、既に手配しています。それは明日です。舞踏会は……今はシーズンですから。毎夜どこかでやっていますからね。二人で行くのに良さげな舞踏会を、見つけておきます」
「ありがとうございます。ではそうしましょう」
「ローズベリー伯爵令嬢は、先ほどのオペラで気になった恋愛は何だったのですか?」
「私は……」
その後もオペラの話で盛り上がり、そして私の屋敷に到着した。
イーサンに送ってもらうとは話していなかったので、彼が来たことに両親は驚いている。でもエントランスまで迎えに来て、イーサンも馬車から降り、ちゃんと挨拶をしてくれた。
そうやって両親ともうまくやっているイーサンを見ると、余計な「もしも」をつい考えてしまう。嫁姑問題とは無縁で、双方の両親ともうまくやっていけそう――と。そして……彼に一途に想いを寄せられている令嬢に、ジェラシーを感じている。
ダメ、余計なことを考えちゃ。
こうしてこの日のオペラ鑑賞も無事終わり、翌日はイーサンが既に手配していた演劇を観に行った。その舞台は、「最後に愛は勝つ!」という作品で、観ていて笑えたし、とても爽快。昼間の観劇だったので、終わった後はカフェでたっぷり感想を話せた。
そして今日は……。
宮殿の舞踏会へ行くことになっていた。
出戻ってから、家族で王都を離れ、旅をした。滞在した場所でオペラや演劇を楽しんだ。でも舞踏会には足を運んでいない。宮殿の舞踏会に顔を出すのは、本当に久しぶりだった。
やはりこれは緊張する。
ノット子爵令嬢ではないけど、婉曲に嫌味を……言われるかもしれない。
言われると思う。
ただ、バレエ、オペラ、演劇とイーサンと足を運ぶことで、舞踏会で会うであろうと貴族とは、既に顔を合わせていた。そしてイーサンといたからだろうか。とても好意的に対応してもらえたのだ。
よってそこまで恐れたり、緊張したりする必要はないのかもしれない。
でも私が気にしていると、イーサンは気づいていたのか。それとも偶然だったのか。
ともかく今回、イーサンと行くことになった舞踏会は、仮面舞踏会だった。














