私がいなくても
「当たるので悲劇作品が増えていく……というループがあるのかもしれません。でも今回の作品は、最後に見事な大団円だったので、爽快ですよね」
「ええ。それにこの作品をローズベリー伯爵令嬢が選んだ理由も分かる気がしました。まずいくつもの恋愛模様が描かれていますよね」
「クラエス副団長はどの恋愛が気になりましたか?」
しばらく考え込んだイーサンだったが……。
「娼婦ケイトリンとルーフ伯爵ですかね。障害があればあるほど、恋は燃え上がると思いました」
「それはそうでしょうね。障害があることで自分達の恋が特別に思え、この試練に耐え、どうしても結ばれたいと思うのでしょうね」
前世でお馴染みのロミオとジュリエット効果と思いながら、そう私が言うと、イーサンは思いがけない反応を示した。
「そうでしょうか。障害はない方がいいと思います。それでも障害があるため、乗り越えるしかない。特別な恋なんて関係ないと思います。ただただ相手のことが好きだから。結ばれたいと思うから、頑張れるのではないでしょうか」
「そ、それは、確かに、そうですよね」
「娼婦だから貴族とは結ばれるはずがない。そんな風に諦めて欲しくないと思いながら観ていました。僕が伯爵だったら『絶対に、君を迎えに行く。僕のことを信じて』と伝え、有言実行です」
イーサンのこの自信は、すごいと思ってしまう。
そこでつい忘れてしまっていた事実を思い出す。
イーサンは片想いをしている女性がいる。
そしてその女性のことを高嶺の花と思い、恋愛力を上げてから告白しないと断られる……と思っているのだ。
でも今の反応を見ていると、高嶺の花ではないのかしら?
身分が違う? 何か障害が二人の間にあり、そこを気にしている……?
ただ、今、有言実行と言っていた。
きっと今回の恋愛レッスンを通じて、自信がついたのだと思う。
……元々、イーサンは恋愛力がないわけではなかった。足りないのは自信だったのだ。
もう大丈夫ね。
私がいなくても。
「クラエス副団長、そこまで言い切れる自信があるのであれば、もう大丈夫だと思います。恋愛レッスンの終了まで、まだ時間はありますが」
「待ってください!」
イーサンが慌てた様子で前のめりとなり、私を見た。














