出戻りにシビアな社会
バーナードが笑うと、気持ちが昔に持っていかれる。
「一度結婚した経験があると、いろいろとためらうことがあると思わないかな? 私は死別だったけど、それでも世の中からは一歩引かれて見られてしまう。でも君なら私のことを、そんな風には見ないと思うんだ。肩の力を抜いて、話せると思う」
それは……確かにそうだった。
死別しているバーナードでさえ、なんとなく居心地の悪さを感じるぐらいなのだ。この世界では、出戻りに対してとてもシビア。
貴族社会なので、表立って何か言われることはない。だが裏でいろいろと囁かれる。そして……無視される。あからさまな無視ではなく、そこにいないように扱われるのだ。まるで腫れものには触れないように、という感じで。
ノット子爵令嬢のように、悪意をあからさまに向ける方が珍しかった。
「そうですね。今度、お茶でもしましょう」
「ありがとう、ローズベリー伯爵令嬢。……グレイスって呼んでもいいかな? 私のこともバーナードで構わない。君と私の仲なのだから」
「ふふ。そんなたいした仲ではないのに。でも分かったわ、バーナード」
そこでバーナードは私の手を取り、甲へキスをする。
バーナードにこんな風にされると、時が巻き戻ったように感じる。
そこでバーナードと別れ、私は席へ向かった。
◇
オペラが終わる時間は遅い。
恋人同士や夫婦であれば。
その後、場所を移し、お酒を傾けたり、コーヒーを飲んだりしながら、語り合うこともあるだろう。
だがイーサンと私は、そのどちらにも当てはまらない。
その結果。
イーサンの馬車に私が乗り込み、たった今観たばかりのオペラについて語り合いながら、屋敷まで送ってもらうことになった。
対面の席に座ったイーサンは、王道の黒のテールコートで、タイにはやはりあの撫子色の宝石が輝いていた。テーブルがない馬車の中で向き合ったイーサンは……。
組んだ脚の長さに目が釘付けになってしまう。
「オペラと言えば、自分の中では悲劇の印象しかありませんでした。重厚な音楽の中、非業の死を遂げる主人公の姿ばかり観てきたのですが……。こんなドタバタ劇もあったのですね」
イーサンがニコニコしながら私を見る。
どうやら今日観たオペラを気に入ってくれたようだ。
良かったと思いながら、私は口を開く。














