若気の至りで……
「ローズベリー伯爵令嬢」
突然、声をかけられ、でも知っている声だと思い、振り返ると。
金髪にエメラルドグリーンの瞳。
スラリとした長身で、チャコールグレーのテールコートを着ている。
オペラに行く観客だ。
どこかで見たことがある……。
知っていると思うのだけど……。
「まさかこんなところで再会できるなんて。お元気でしたか? あ、覚えているかな? バーナード・ベルク・アンダーソンです」
「バーナード様……! お久しぶりです。髪はお切りになったのですね」
「ええ。昔は伸ばしていましたが、結婚を機に切ったのですよ」
伯爵家の嫡男で、私と同い年だったバーナード。私が社交界の華と言われていた時に、よく舞踏会でダンスをしたり、おしゃべりをしていた令息の一人だった。ブロンドの長髪が美しく、令嬢から人気が高かったが……。
なるほど。結婚。そうよね。
未婚令嬢が放っておくわけがない。
「ご結婚されていたのですね。……お祝いもできず、申し訳なかったですわ」
「……いえ、短い結婚生活でしたから」
「え?」
驚く私にバーナードは、自身のこんな過去を打ち明けた。
「リアー・ナレシア、覚えていますか?」
リアー・ナレシア……!
私が社交界の華と言われていた頃の、ボス令嬢だ。
侯爵家の次女だったが、年齢的にその時すでに、結婚適齢期ギリギリだったはず。
赤毛で釣り目のぷっくりした唇で、そのセクシーさにメロメロになる男性も多かったと思う。
「ええ、覚えていますわ。赤毛の大変美しい方でしたよね」
「私は彼女と結婚したんですよ」
「え、そうなのですか!」
二人とも社交界を賑わせていたが、お互いにタイプではなかったと思う。
どうしてこの二人が……。
「……まあ、ヤケ酒を飲んでいた時、若気の至りで……。恥ずかしい話ですね。するとリアーは子供ができてしまい、それで結婚することになったのです。でも……出産がね。まさか母子共々となるとは思わず……」
「そうだったのですね。……ごめんなさい。悲しい出来事を思い出させてしまい」
「もう四年近く経つから。気にしないで欲しいです。とっくに喪は明けているし、私も人生まだこれからだから……。君もそうでしょう、ローズベリー伯爵令嬢」
バーナードは笑うとえくぼができて、実年齢よりさらに若く見える。
そしてこの笑顔に、多くの令嬢が心をときめかせていた。
「ここにいるということは、君もオペラの観劇かな? 今日は時間がないと思うけど、どうだろう。今度ゆっくり話せないか? 私より君の方がいろいろ苦労したのでは?」
バーナードが笑うと、気持ちが昔に持っていかれる。














