疑似恋愛している感覚
イーサンとのオペラの観劇のために着るドレス。
それは……。
身頃からウエスト辺りまでは撫子色、膝ぐらいまでは白、膝から裾まではブルーシルバー。ぼかしで染色された生地のドレスを選んだ。この生地に、透け感のある軽いチュールが重ねられることで、全体が淡く優しい風合いになっていた。
さらに身頃やスカートに、縦のラインで立体的に花が飾られ、いいアクセントになっている。ドレスに使われている飾りの花は、濃紺や紫。お揃いの髪飾りも用意されていた。そこでおろした髪をサイドで緩い編み込みにして、この髪飾りでまとめた。
自分の瞳の色に加え、イーサンの瞳や髪と同じ色をドレスに盛り込むことができ、とても満足だった。
ご機嫌で屋敷を出発する。
恋愛のレッスンをしている。だがある意味、イーサンを通じ、私自身の社会復帰をしている気もした。ウスと結婚生活を送っていた時は、屋敷に閉じ込められていたも同然。社交なんてできなかった。でも今は頻繁に外出し、出掛けた先ではいろいろな人に会い、挨拶をしていた。そうすることで、会話のテンポ、ユーモアを交えるタイミング、話の引き際など、昔の感覚を取り戻せた気がする。
ただ、昔と違うのは。
あの頃の私は、自分の知りうる恋愛テクを実践しようと、躍起になっていた気がする。でも今は違う。恋愛とは関係なく、社交をして、のびのびやっていきたいと思っていた。
何より思うのは、イーサンに幸せになって欲しい――だった。
なんとなくこの自分の気持ち。
子どもに未来を託す親のような気持ちに思えた。
自分にはできなかったこと、後からこうしておけばよかったと思ったことを、自分の子供にはやらせたいという気持ち。それに似ている気がする。イーサンには私と同じを失敗しないで欲しい。だからすべてを伝授し、素敵な相手と結ばれて欲しいと。
そうやってイーサンの幸せを願いながらも、どこかで寂しく思っていた。
恋人でもないのに、毎日のように会い、しかも先日は愛の言葉……ロマンス小説のセリフをこれまでかという程、聞かされたのだ。
疑似恋愛しているような感覚に、どうしても陥ってしまう。
駄目、駄目。
イーサンに相応しい相手は五万といる。
私ではない。
そんな考え事をしているうちにもホテルに到着し、従者に馬車から下ろしてもらった。
今日こそは私は、イーサンより先に到着したかしら?
案内の女性の店員に席の位置を確認すると、まだ席にイーサンはいない。そこでレストルームに立ち寄ることにした。
お化粧はしたばかりで、崩れているわけなどないのに。こうやって確認してしまうのは……イーサンのことを意識し過ぎた結果だ。
レストルームを出て、席へ向かおうとした時。
「ローズベリー伯爵令嬢」














