恥ずかしいので……
「先程聞いたところ、こちらの庭園、自由に散歩ができますよね? そこで話すのでいいでしょうか? ここでは少し口に出すのが恥ずかしいので……」
その気持ちはよく分かる。なにせロマンス小説ですから。顔が赤くなるようなセリフもてんこ盛り。もし給仕のために店員が来た際、とんでもなくウットリするような言葉をイーサンが口にしたら……。店員は料理を落としかねない。そう言った意味でも、庭園で聞くのが良さそうだ。
でもそんな赤面もののセリフをイーサンが選ぶかしら……?
ともかくどんなセリフを庭園で聞くことができるのか。
楽しみでならなかった。
◇
フィーレン国のコース料理のデザートは通常フルーツ。正直、デザートに辿り着くまでボリュームがあるので、私はこれで助かっている。
今日も数種類のフルーツがシロップがけになった、前世のフルーツポンチがデザートとして出された。これならパクパクといただける。デザートの後はせっかくなのでイーサンと共にエスプレッソを頼み、甘くほろ苦い味わいを楽しんだ。
「ではクラエス副団長。食事も終わりましたので、庭園に行きますか?」
「ええ、参りましょう」
立ち上がって私をエスコートして庭園に出たイーサンを見て気が付く。
いつもであれば、しおりがびっしり挟まったロマンス小説を持っているのに、今日はないことに。
「クラエス副団長、今日はロマンス小説をお持ちではないのですか?」
ランタンに照らされた小道を歩きながら尋ねる。
ピアノの伴奏にあわせ、ソプラノ歌手のなめらかな声が聞こえてきた。
「せっかく素敵なお店でディナーをいただくのに、しおりで膨れ上がったロマンス小説をテーブルに置かれては……。店員も驚くと思い、留守番させました」
イーサンは本当にいろいろと気が回るのね。
それに留守番をさせた。ウィットもあり、素敵だわ。
そのままエスコートされ、進んでいくと、白いベンチが見えてきた。
丁度、ランタンもあり、その辺りは明るかった。
自然とそのベンチに足が向かう。
まずはハンカチを敷き、私を座らせると、イーサンも隣に腰を下ろした。
さらにテールコートの内ポケットから、折り畳んだ紙を取り出す。
「ここにちゃんとメモをしてきました。セリフを」
「! そうだったのですね」
「書いているうちにいくつか覚えてしまいましたが」
「まあ、それはすごいですわ」
驚く私の手をイーサンは掴むと、不意に秀麗な笑みと共に私を上目遣いで見た。
いきなりこれをされた私は「!!」とフリーズしてしまう。
「君の喜びが、私の喜びです。君の悲しみは、私の悲しみ。いついかなる時も、あなたと共に。永遠の愛を誓います」














