欲情してごめんなさい
前世知識では一定数の喉仏フェチがいると思うが、自分は該当しない……というか、意識したことがなかった。だが意識せざるを得ない男性がいれば、目が向いてしまう。結果、イーサンの喉仏に関しては、つい見てしまうことに気づいた。
会っている最中に、しょっちゅう見るわけではない。
お酒のような、セクシーに結びつきそうなドリンクを飲む姿を見ていると……ドキドキしてしまう。
それに……。
前菜がすぐに届き、グラスを置いたイーサンが少し頬を赤くしている。まだグラスの半分くらいしか飲んでいないのに、もう酔ったのかしら? イメージではお酒が強そうなのに。
酔ったイーサンもまた、艶っぽくて◎。
「ローズベリー伯爵令嬢にじっと見られていると気づき、なんだか落ち着きません」
「大変失礼しました!」
もう土下座したくなっていた。
舞踏会などの社交の場でない限り、相手を必要以上にじっと見るのは失礼なのに!
ついイーサンのことをガン見していた。
「いえ、謝らないでください。見て減るようなものはないですから。ただ……」
そこでイーサンがあの美しい瞳をこちらに向けるが、私は慌ててその視線から逃れる。もう暑くもないのに全身から汗が噴き出そうだった。
「何を見ているのかと気になりました」
もうテーブルに突っ伏し、泣いて「ごめんなさい」と言いたくなっていた。
「シャンパンを飲んでいる時の、喉仏を見ていました。欲情してしまい、ごめんなさい」とお詫びしたい気持ちでいっぱいだった。
これって逆セクハラ?
私、変態!?
いや、欲求不満!?
「多分、これが気になったのですよね?」
チラリとイーサンを見ると、彼はタイに飾られている撫子色の宝石に触れている。
勘違いしてくれているので、ありがたくそれに乗っかることにした。
「そうなのです。とても美しい宝石だと思いまして」
「分かります。ローズベリー伯爵令嬢の瞳と同じですからね。気になって当然です」
「そ、そうですね……」
チーズリゾットを食べながら、宝石の話を聞いた。
イーサンは熱心に「どんなモチーフのジュエリーが好きなのですか」「指は細いですが何号なのですか」「ネックレスとイヤリングは、どちらをつけることが多いのですか」などいろいろ聞いてくれた。それに答えつつも、私の頭はもう喉仏を見てはダメと、自分に言い聞かせるのでいっぱいだ。
でも牛肉のグリル、キノコのソテーなど食べすすめていくうちに、ようやく喉仏が気にならなくなった。会話も恋愛レッスンに戻っている。
そう、今日は、ロマンス小説で令嬢を喜ばせる言葉を見つけ、私と答え合わせをすることになっていた。
だがこれについてイーサンは……。














