幼い頃の彼は……
バレエ観劇眠り姫事件から二日後。
ノット子爵令嬢はタウンハウスを離れ、父親の領地へ戻ったという。
このことに安堵しつつ、気づいてしまった。
イーサンは普通にしていれば、つまりは一ヵ月に一回でも舞踏会なり、晩餐会、お茶会、サロンになりに顔を出せば。令嬢の知り合いなどすぐにできただろう。
でもそうしてこなかったのは……ノット子爵令嬢のことがあったからかもしれない。
眠り薬を飲まされたことで、何か被害にあった令嬢がいたわけではなかった。
突然、長くて数日ぐらいひたすら眠り続けることで、家族や友人、使用人を驚かせることになるが、それで済んでいた。
これがもし、令嬢ではなく、令息だったら、事故につながっている可能性はある。
令嬢はどこかに外出し、一人馬に乗り帰宅する……なんてことはまずありえない。だが令息であれば、愛馬で外出することも無きにしも非ず。そんなタイミングで眠り薬の効果が出てしまえば……。落馬して大事故になりかねない。
だが幸いにも相手が令嬢だったため、何も起きていなかった。
ところが、この事態を一人気に掛けることになったのが、イーサンだ。
何より、最初の眠り姫が出たのが、自身の誕生日パーティーだった。その時は自身の調理人が提供した料理、パティシエが出したお菓子やケーキ、メイドやバトラーが提供した飲み物に、何か不備があったのではと心配したことだろう。
その次に眠り姫が出た時は、不思議に思っただけかもしれない。以前も同じ経験をしているのだから、何かそういう生理現象があるのかと、思っただけかもしれなかった。
でも三度目は、またかと思い、周囲の令息に尋ねたと思う。眠り姫になる令嬢に、これまで出会ったことがあるかと。
イーサンのような指折りの公爵家ともなると、お呼ばれされる機会は多いはずだ。そのすべてに参加はできないから、厳選することになる。そして同じ相手の招きばかりに応じるわけでもない。
懇意にしている貴族は除き、広く浅く顔を出すことになる。そうなると初めましての令息令嬢が多いわけで、眠り姫を知る人は……限られてくる。
その後、何度も眠り姫が出てくることで、「もしや自分が社交を行うと、眠り姫になってしまう令嬢が現れるのでは?」と考えたのではないか。自分が何か特殊なものを持っているのかと疑っただろう。
それが違うと分かると、眠り姫が現れることになった行事やイベントの共通項目を探したはずだ。














