眠り姫
「最初は六歳の時です。僕の誕生日パーティーを母上が開いてくれて、沢山の令嬢令息が屋敷を訪ねてくれました。ガーデンパーティーで、その日は天気も良く、皆、気持ちよく食事をし、余興を楽しんでいたのですが……。誕生日プレゼントを受け取ることになったのですが、その中の令嬢の一人が『私のお婿さんにしてあげるチケット』を添えた羽ペンを用意していたのです」
誕生日プレゼントは、その場で開封するのが、この世界での習わし。
よってそのチケットを、みんな目にすることになった。
思わずドキッとするようなチケット。
でも子どもが遊び心で作ったに過ぎない。このチケットがあるからと、イーサンはその令嬢と絶対に結婚するわけではないことなど、皆、分かっていたと思うのだけど……。
プレゼントの開封も終わり、いよいよバースデーケーキが到着。ロウソクの炎を吹き消し、切り分けたケーキを、紅茶と一緒に皆で食べていたところ。
あのお婿さんチケットをプレゼントしてくれた令嬢が、テーブルに突っ伏すようにして眠ってしまう。まだ子どもなので、遊び疲れて眠ったのかと思いきや。
その後、当該の令嬢は三日も眠り続け、ようやく目覚めたというのだ。
誕生日パーティーでは、皆が同じものを食べている。ケーキはホールのものを切り分けていた。紅茶も大きめのティーポットから注ぎ、彼女以外の子供も、その紅茶を飲んでいる。でも他の子供達は何ともない。
ゆえにこれは「たまたまだろう」と、お婿さんチケットの令嬢の両親も、イーサンやその親に対し、特に抗議をすることもなかったという。
しかしその後、別の令息の誕生日パーティーでも似たような事件が起きてしまう。気づいたら眠り込んでいた令嬢は、イーサンの隣の席に座っていた。ゲームの一環で、彼の頬にキスをした子だった。
以降、イーサンが足を運んだお茶会、夕食会、別荘で、次々と眠り姫が現れる。眠り姫……そう、突然、眠りにつくのは、決まって令嬢ばかり。そしてその令嬢は偶然と思うのだけど、イーサンとその日、接点を持った子ばかりだった。
突然眠るも、病気でもなく、命に別状はない。本人も、周囲の人も「余程、疲れていたのだろう」で片付けてしまう。よってこれまで事件だと大騒ぎされることもなかった。
そうしているうちにイーサンは、騎士見習いとなる。社交界デビューで舞踏会には一度、顔を出したものの。その後、忙しくなり、社交はおろそかになる。そのせいで眠り姫の件は忘れていたし、ふと思い出し、眠り姫が現れなかったか周囲に聞くが……。そんな話、聞いたことがないという。
その一方で、イーサン自身は、犯人に思い当たる人物がいた。さらにその犯人が、どんな人物を眠り姫に仕立ているのかも気づいている。だが過去の出来事では、証拠を掴めずにいたのだ。
そして今回。
久々に眠り姫が現れる。
そう、私だ。














