少し、話をしませんか?
「ローズベリー伯爵令嬢がちゃんと目覚め、ここにいると実感したいのです……ダメでしょうか?」
そんな理由で抱きしめたいのであれば、ダメなんて言えるわけがない。
というかここはむしろ……。
「心配をおかけして、申し訳ありませんでした。私も夢で一度……クラエス副団長が登場したのですが、悪夢だったので。これが現実だと確かめたいです」
そこで思い切って腕を広げると、イーサンは……。
背中に回された逞しい腕。
頭を包み込むように添えられた腕の優しさ。
ほんのり鼻孔をくすぐる石鹸の香り。
間違いない。
イーサンだ。
「あれだけ守る、守ると豪語しておきながら、申し訳ありません。でも犯人を追い詰めるため、調査は進めていますから」
「そうなのですね。ありがとうございます。一体何があったのか、お聞かせいただいても?」
そう言った後、すぐに気が付く。
「クラエス副団長。私はもうこれ以上眠る必要はない――というぐらい寝たと思います。でもクラエス副団長は……。そのソファでは、熟睡できていませんよね。まだ夜が明け始めた時間だと思います。私のベッドで休んでください。私はこちらのソファで横になります。もう眠くはないので、横になるぐらいなら、このソファで問題ないです」
すると再びイーサンがぎゅっと私を抱きしめ、「僕のことを心配してくれて、ありがとうございます」と言い、そしてゆっくり体をはなした。そして私の手をとりながら、窓際へと歩いて行く。窓際にはテーブルセットが置かれており、イーサンは若草色のカーテンをシャーッと開けた。
夜の名残を感じさせる空に、光が少しずつ射し込み始めている。
雲が金色に輝き、東の空が琥珀色に染まってきていた。
「ローズベリー伯爵令嬢が目覚めたと分かっているのに、眠るなんて無理です。今晩、ちゃんと自分のベッドで休みますから、メイドが部屋に来るまで、ここで少し、話をしませんか?」
「! 分かりました」
テーブルにはレモン水が置かれており、イーサンはグラスに注ぎ、私に渡してくれる。
自身のグラスにもレモン水を注ぎ、二人して一口飲み、「「ふう」」と息を吐いていた。
その言動がピタリと一致していたので、思わず笑ってしまう。
「……一体、何が起きたのでしょうか?」
「そうですね。驚きましたよね。でも僕にとってはこの出来事、初めての経験ではないのです」
「そうなのですか?」
イーサンはコクリと頷く。そして「最初は六歳の時です」と、彼は語り始めた。














