転機の兆し
自由になりたい。
人生、やり直したい。
どこで何をどう間違ったのだろう?
この世界で命を落としたら、また転生できるのかしら?
そんなことを考えながら、朝食をなんとかやり過ごす。
義父と義理の弟と共に、ウスが商会へ向かうと、決められた男爵家の帳簿管理を行い、それが終わると……。義母に声をかけられる前に街へ行く。そして演劇やオペラを見て、本屋でロマンス小説を手に入れ、屋敷へ戻る。
もう自分の結婚生活は諦めた。
代わりに現実逃避で、素敵な恋愛を描いた演劇やオペラを楽しむことにしたのだ。さらには前世のTLラノベを読む感覚で、ロマンス小説を読み漁り、ストレス発散をしていた。
馬車の窓から暮れ行く街を見て、ため息をつく。
今日もまた、夜がやってくる。
ウスとの苦行の夜が……。
そう思ったら!
なんと!
月のものが来てくれたのだ。これで一週間、苦行から免除される。
そう思っていたら……。
一週間なんてあっという間に終わってしまう。苦行再開だ。
そう思ったが。
「ウス様は商会の関係者とお食事されてから帰るそうで、今晩は先にお休みになっていいそうです」
バトラーからそう伝えられた時は、飛び上がって喜んだ。
まだ読んでいないロマンス小説を読み、胸をときめかせながら、眠りにつくことができた。翌朝、目覚めた時も、腰の痛みもなく、睡眠不足でもなく、とても爽快だった。
朝食の席で何を言われようと、完璧に受け流すことができた。
ウスとの夜の営みがないだけで、こんなに気持ちが晴れるなんて!
できれば商会の仕事で、夜の会食が増えればいいのに。
そう思っていたら、いいことと悪いことが、舞い込んできた。