マウントの取り合い
ローズベリー伯爵家は由緒正しき名門だったが、平民出身成金男爵家に娘を嫁がせたことで、「どうやらお金目当ての結婚らしい」「贅沢をするために歴史を捨てた」と散々悪評を囁かれていた。
表立って非難はされないが、オブラートに包んだ言葉の攻撃は、こうやって平然と行われている。
「皆様、正解ですわ。こちらいるのが、そのローズベリー伯爵家の出戻り令嬢の、グレイス様よ」
「「「「「まあ、バレエを観劇できるだけのお金があるのですね!」」」」」
これみよがしの反応をされ、正直……ウンザリだった。
適当にあしらい、去ろうとしたが……。
「公演記念の特製ベリージュースが販売されていますの。ローズベリー伯爵令嬢にご馳走して差し上げますわ」
こうして付き合いたくもないノット子爵令嬢の茶番に付き合わされることになったが。人数が多かったおかげで、主に彼女達の自己紹介という名の自慢話を聞くだけで済んだ。結局、彼女達は王立ローズ女子高等学院の卒業生であることが分かった。同窓会を兼ね、親に頼み込み、この高額バレエのチケットを入手していた。
不本意ながらご馳走されることになったベリージュースを飲み、柱の時計を見る。
間もなくイーサンとの待ち合わせ時間だ。
「ところでローズベリー伯爵令嬢はお一人で観劇ですか? でもチケットはお値段が高いから、一人分が精いっぱいでも仕方ないですわよねぇ」
取り巻き令嬢がまさにそう言った時。
「ローズベリー伯爵令嬢、ここにいらしたのですね。お待たせしてしまい、申し訳ないです」
明るく涼やかな声に、ノット子爵令嬢の片眉が、くいっと上がる。
その様子を見て取り巻き令嬢の顔に、緊張が走った。














