最強コンビの禁断の熱愛発覚!?
「バレエは、フィーレン国で今、最も人気があり、我が国では初めて興行することになったと聞いています。明日の午後の公演のチケットが手に入ったので、一緒に観に行きませんか?」
この提案には、ビックリしてしまう。
確かにニュースペーパーで、初のバレエ公演があると掲載されていたが……。
それすなわち、チケットの争奪戦ということ。
さすがクラエス公爵家ね。我が家でも両親が「観てみたい」と手を回していたようだが、チケットの価格があまりに跳ね上がっており、断念していた。
多少、無理をすれば手に入れることはできたと思う。でも両親は、過去の借金の件もあり、慎ましやかになっていた。それは私も同じ。前世でさえ、観に行ったことがないバレエには興味があったが、数年はお預けだろうと思っていた。
それが今、観劇できるチャンスが舞い込んだ。
「でも、バレエのチケットは、とても高額だと思います。私などがご一緒するのは」
「ローズベリー伯爵令嬢と観てみたいと思い、手に入れました。ロマンス小説、残り一冊ですよね。まだ読んでいませんが、パラパラと見た時、挿絵にバレエの踊り子の姿が描かれていました。でもその時は、それがバレエであると分からなくて。ニュースペーパーでまさに同じ絵を見て、これのことか!と思った次第です」
そこでイーサンは、ブルーシルバーの髪をサラリと揺らし、笑顔になる。
そして優しく告げる。
「バレエに興味なんて、普段の僕ならまずなかったでしょう。きっかけを作ってくださったのは、ローズベリー伯爵令嬢です。恋愛について、ロマンス小説を通じ、そしてあなたを通じ、僕は確かに学べていると思います。……分かるでしょうか、どれだけ僕があなたに感謝をしているか。僕の知らない世界を今、ローズベリー伯爵令嬢は、次々と見せてくれているのですよ」
つい数分前。
とてもみじめな気持ちになっていたのに。
今のイーサンの言葉は、まるで魔法だった。
「ありがとうございます、クラエス副団長。そんな風に思っていただけて、とても嬉しく思います。この世界でたった一人でも。私という人間の価値を認めてくれる方がいるのなら。頑張ろうと思えます。そしてバレエ。ぜひご一緒させてください」
そう答えた瞬間。
私の手を握るイーサンの手から力が抜けた。
どうしたのかと驚くと、彼はこんな可愛らしいことを言いだした。
「……良かったです。ローズベリー伯爵令嬢が、観たいと思ってくださるか分からないのに、このチケットを手配してしまったので……。もし断られたら、エルン団長と自分の二人で、観劇するところでした」
イケオジなエルン騎士団長と貴公子なクラエス副団長。この二人がちょこんと横並びでバレエを観劇する様子は……想像すると微笑ましい。いや、きっと令嬢達が、大変なことになるわ。
まさかの歳の差、しかも最強コンビの禁断の熱愛発覚!?みたいに。
オペラも演劇も演奏会も、パートナー同伴での観劇が主流。男二人でそんな場に行こうものなら……。しかも王都では貴重な未婚の人気男性が、男二人でバレエなんて観劇したら、間違いなく大騒ぎだろう。
そんなことを想像し、ついにニマニマしてしまうと。
すっとイーサンの指が、私の頬に触れた。














