イチャイチャしていました!?
「イーサン卿! 休暇中だと聞いて、探しましたのよ! そんなところで何をされているのですか?」
弾むような若々しい声に、頭の中で「誰?」という言葉が飛び交う。
イーサン卿と気さくに呼んでいる様子にも、親しい間柄を思わせる。
誰なのかと考えることで、心臓がドキドキしていた。
一方のイーサンは。
さっきまでの甘い雰囲気はなくなったが、まだ私の手をとり、抱き支えている状態。突如聞こえてきた令嬢の声で、私の足腰には力が戻って来ている。ゆえにもう、支えはいらず、手もはなしてもらって問題ないのだけど……。イーサンが動く気配はない。ただ、顔だけ後ろへ向けたようだ。
「ノット子爵令嬢、どうしてこちらへ?」
イーサンが落ち着いた声で応じている。
ノット子爵……あ、イーサンにとって従兄弟ね。
でもノット子爵って地方領を賜っているはずだわ。
「イーサン卿が一ヵ月も休暇をとるって、お父様から教えてもらったの。ずっと休みなしで、会えなかったでしょう? 久々に顔を見たくなって、王都のタウンハウスにしばらく滞在することにしたの。ねぇ、イーサン卿」
少しずつ声が近づいていると思ったが、どうやらすぐ近くまで、ノット子爵令嬢がやってきたようだ。いまだ私はイーサンの胸の中に収まっており、手も握られている状態だった。
「え、え?」
ノット子爵令嬢の戸惑う声が聞こえてきた。
それは……そうだと思います。
だって一人だと思ったイーサンは、私を後ろから抱きしめているように見えるはずだ。本当は抱き支えている……と言いたいが、既に私の足腰には力が戻っている。よって今は、抱きしめていると指摘されても否定できない。
それに手は、再び甲へキスをしようとしているかのような位置で止まっていた。
さらに困惑するノット子爵令嬢に対し、イーサンは何も言わない。
何も言わない……ではなく、弁明のしようがない!?
その可能性はある。
だってこんな図書館の人目を阻むような場所で、二人きりで抱き合っているような状態。どんな言い訳が立つか? どう考えてもそれは「逢引きしていました」「見えないだろうと思い、イチャイチャしていました」になる気がした。
何かいい言い訳がないか考えていると……。
「ちょっと、そこのあんた! 何しているの!? 離れなさいよ!」
ノット子爵令嬢が手を伸ばしたようだが、私の手からイーサンの手が離れ、パシッと音がする。
右横を見ると、ノット子爵令嬢の手首を掴むイーサンの姿が見えていた。

























































