あなたのせいですよ!!!!!
「我が家には、私設図書館があるのです。あちらに見えている離れがその図書館。日曜日に一般開放し、平民の子供が遊びにくるのですよ。無料でお菓子を配ったり、自分も木刀を使い、剣術を教えたりしています」
「まあ、そうなのですね。それは素晴らしい活動だと思います」
「次の日曜日、ローズベリー伯爵令嬢も参加されませんか? 綺麗な貴族の令嬢に、子供達は……特に女子は喜ぶと思いますよ」
この提案は快諾だった。しばらくはその活動にあわせ、私も子供達に何か渡せるものを用意したいと話していたが……。
「本題ですが、ローズベリー伯爵令嬢。その図書館で、今習ったことを少し、練習してみてもいいですか?」
「! え、ええ。それは勿論」
「ありがとうございます! では早速」
イーサンはもう椅子から腰を浮かせ、図書館に向かう気満々。
一方の私は心の準備が一切できておらず、変な汗をかいている。
耐えられるだろうか、私。
さっき勢い込んで言ったことを、すべてイーサンが練習で私に対してやったら……。
意識を保てるのか。腰砕けにならないか。変な声を出してしまわないか。
とにかくもう心配だった。
だが。
「行きましょう」と手を差し出され、もはや待ったなし。
そこでそのシルクのような肌触りの手に、自分の手をのせた瞬間。
椅子から腰をあげたはずなのに、ストンとまた着席している。
「どうされましたか!?」とイーサンは驚いているが……。
あなたのせいですよ!!!!!
そう、心の中で叫んでいる。
なんとか般若心経を頭の中で唱え、イーサンのエスコートを耐え(嬉しいのに、苦しい!)、しばらく歩いていると。
突然、イーサンが立ち止まった。
「ど、どうしましたか?」
もはや緊張で、声が震えていた。
一方の落ち着いた様子のイーサンは、目の前の白い薔薇に、その瞳を向けている。
「白い薔薇の花言葉は、純粋や純潔、尊敬……そして相思相愛ですよね」
「そ、そうですね……」
見ていると、イーサンの細く長い指が白い薔薇の上で彷徨い、ピタリと止まる。八分咲きぐらいの、開き過ぎていない、そしてみずみずしい白い薔薇だった。そこでスッと取り出したのは短剣で、あっという間にその白薔薇を茎から落とすと、棘・葉も取り去ってしまう。
「どうですか、これはローズベリー伯爵令嬢にピッタリだと思うのですが」
確かに今日は、ウィステリア色のドレスを着ているので、配色として白はとても合うと思った。だがしかーし。「どうですか?」とキラキラした笑顔を向けられたこちらは、もう……。
「……あうかと思います」
この回答一択だ。それ以外が浮かばない!
絞り出すような声で返事をすると、「では」と言い置いた後。
心を溶かす笑顔で、イーサンが私を見た。
「この薔薇を君の髪に飾っていいですか?」
こ、これは……!














