いきなりハートのど真ん中を撃ち抜かれる
ついぞ立ち上がり、両手でテーブルを叩き、私は前のめりになっていた。
イーサンはうるうるした紺碧の瞳で、そんな私を見上げる。
「まずは練習。そして実践あるのみです!」
「……まずは練習、そして実践、ですか」
イーサンが宇宙を思わせる紺碧色の瞳で私を見上げる。
「そうです。机上の空論では、うまくいきません。何より、いざ今言われたことをやろうとすると、まず緊張します。緊張すると、言動がぎこちなくなるでしょう。例えば……そうですね」
そこで私は考え込み、「!」とひらめき、話を続ける。
「ダンスの後の御礼を込めた手の甲へのキス。この時に上目遣いをする!――そう、先程申し上げましたよね。ですがこれを練習なしで、いきなりやると、睨みつけているようになる危険があります。喧嘩を売っていると思われかねません。それにダンスをしながら、耳元で甘い言葉を囁く……。これも意識がそちらへ向かい過ぎると、ダンスがおろそかになります。練習を繰り返し、慣れておくことが大切です」
黙って聞いていたイーサンは「なるほど」と頷く。
それを見て、私はぽすっと椅子に腰を下した。
「ローズベリー伯爵令嬢がおっしゃることは、よく分かりました。騎士も日々、訓練をしているからこそ、咄嗟に動くことができると思います」
「その通りですよ、クラエス副団長! まずは練習をして、そして実践です」
「分かりました」と応じたイーサンは、いきなり上目遣いで私を見た。
その瞬間、いきなりハートのど真ん中を撃ち抜かれ、目を剥きそうになりながら悟る。
上目遣いの練習、いらないのでは!?と。
だが、イーサンは律儀に尋ねる。
「練習相手には、ローズベリー伯爵令嬢がなってくださるのですか?」と。
「そう思っていたのですが、多分、私では無理そうです」と回答したくなっていた。だがこれは、イーサンと私の二人で行っていることであり、ここにいきなり誰かを巻き込むわけにもいかない。侍女やメイドであれば、協力してくれるかもしれないが……。
協力したら最後、確実にイーサンに恋してしまうだろう。それでイーサンと結ばれるなら、それでもいい。だが行儀見習いできている貴族の令嬢の侍女ならまだしも。平民のメイドがそうなっては悲劇。そうなると……私が練習相手を務めるしかないだろう。
「そ、そうですね。私が……はい、練習相手を務めます」
その瞬間、イーサンの相好が崩れる。「くっ……」と唸り、歯を食いしばり、今の笑顔を見なかったことにした。
これはちゃんと練習相手がいて良かったという安堵の笑顔だ。これを見てときめいては失礼というもの。
「すー、はー」と密かに深呼吸をしていると、イーサンがさらに私に尋ねる。














