愛い、愛い!
早速本題へ移る。
「ロマンス小説を読んでみて、いかがでしたか?」
「! 驚きました。普段読む小説とはかなり違うので。男女の感情が赤裸々に描かれ、女性はこんな風に考えているのかと驚きました」
「例えばどんなところが?」
するとイーサンはフォークを置き、ロマンス小説を手に取る。見ると沢山しおりが挟まれ、本の厚みが増しているように感じる。
「例えば『恋人の騎士に連れられ、剣術の練習場に連れて行かれた。剣術のことなんて分からないが、同行して良かったと思う。そこにいたのは見習い騎士達で、訓練で使うのは木刀。よって甲冑をつけているわけではない。汗をかくからか、シャツのボタンを多くはずしており、引き締まった胸筋が見え隠れしている。十六歳前後のまさに社交界デビューしたばかりの見習い騎士達の汗と熱気、オスの気配が堪らない』ですかね」
普段、ロマンス小説を読まないイーサンが入りやすいように、騎士がメインキャラのものを選んでみた。案の定、剣術の練習場にヒロインが向かうシーンに目を留めていた。
しかし真面目なイーサンにしては、ドキッとする場面を選んだと思う。何せ涼やかな声で「汗と熱気、オスの気配が堪らない」と読み上げられると、無駄にドキドキしてしまう。
この鼓動を誤魔化すように、「この場面に、どのように驚かれたのですか?」と尋ねる。すると……。
「恋人を練習場に連れて行かない方がいいのだと分かりました。この描写を読む限り、見習い騎士が汗をかき、訓練する様子に興奮しているように思えたのです。自分以外の男性に恋人がときめくのは……嫌です……」
「くはっ」とハートをぶち抜かれ、悶絶する。
まずはもう、「……嫌です……」と言った時の表情が、なんとも秀逸!
目元の辺りをほんのり桜色にして、あの宇宙を映し出すような瞳をうるっとさせた上で、「……嫌です……」なんて言うから……!
しかもイーサンが嫉妬しているのだ。
自身の“彼女には僕だけを見て欲しい!”という切なる想いが感じられ、もう頬が緩んでしまう。愛い、愛い!
ただ乙女心を知ったというわけでもなく、恋愛テクニック……なのかしら? どちらかというと意中の相手が他の異性に目を向けさせないための方法を見つけた。これに近い気がするわ。
でもちゃんと恋愛に関わる部分に目を向けている。
もしも「この戦闘シーンが最高でした!」と言われてしまうと困ってしまうが、それはない。ならばこのロマンス小説を教材に選んだのは正解だろう。
続けよう!














