いけない。邪な想像をしては。
カフェでイーサンと会った翌日のお昼過ぎ。
母親と二人で昼食を終えたタイミングで、手紙が届けられた。
それはイーサンからの手紙だ。
渡したロマンス小説を読み終えたので、明日にでも訪ねていいかというもの。
さすが読書好き。
読み始めると集中すると聞いていたが、もう読み終えたのね。
すぐに部屋に戻り、手紙の返信を書き、使いに来ていた男性に渡す。
その結果、明日のティータイムにイーサンが来ることが決まった。
「クラエス公爵のご令息よね。お母さんもご挨拶したいわ。騎士団の役職の方は、公式行事で見かけるけど、なかなか会えないでしょう。舞踏会には、見習い騎士さんや騎士様は大勢くるけど……お会いしてみたいわ。ご挨拶だけさせて」
興味津々の母親と共に、翌日のティータイムの時間に、イーサンを迎えることになった。
母親は若紫色のドレス、私は瞳と同じ撫子色のドレス。母親は年齢より若く見られることが多いので、こうやって並んでいると、姉妹と思われることも多い。
「イーサン・ヒュー・クラエス副団長様、間もなく到着です」
従者の知らせに応接室を出て、エントランスホールへ移動を始めた。
メイドはその間に、応接室のテーブルのスイーツやお茶を準備する。
「ふふ。なんだかドキドキしちゃうわね」
母親のこんな茶目っ気なところもたまらない。
「ご到着です」
ドアマンが扉を開け、イーサンが入って来た。
ブルーシルバーのサラサラの前髪は、カフェで会った時とは分け目が違っている。おかげで左のキリッとした眉がよく見えていた。改めて見ると二重の切れ長の瞳をしている。今日も宇宙を映したかのような紺碧色の瞳が素敵だ。
高い鼻とその下にある、私を魅了した魅惑の唇がある。
やはり艶があり、弾力も感じさせ、触れ心地が良さそうだった。ふっくらとした桃色の唇は……やはり見ているとキスをしたくなる。
いけない。邪な想像をしては。
そこで般若心経を唱えながら、ファッションチェック。
白菫色のシャツに藤色のセットアップ。撫子色のタイをつけていることに気づき、少しドキッとする。私の瞳の色を意識してくれたのかしら……? 上衣とズボンは母親のドレスとの相性がいい色合い。まるで今日の私達のドレスの色を知っていたかのようで驚いてしまう。
「こんにちは、ローズベリー伯爵夫人、ローズベリー伯爵令嬢」
イーサンは優雅に挨拶をして、微笑を浮かべる。
私はイーサンに会うのが二度目なので、多少の耐性はあった。
多少、ではあるが。
だが耐性のない母親は……。

























































