可愛すぎる。本当にもう、可愛すぎるから!
私の役目。
それはイーサンがここまで片想いをしている意中の彼女とゴールインできるよう、その背中を押すこと。武装する必要はないと思うが、すればすれで鬼に金棒だ。イーサン自身が「自信を持てた」と確信できるなら、それに越したことはない。
「クラエス副団長、だいたいの状況は分かりました。率直な私の気持ちを話すなら……。ありのままのクラエス副団長でいれば、意中の女性は恋に落ちてくれるのではないか……という気がしています。ですがそう思っていないクラエス副団長に、武器を持たせず最前線に送り込むわけにはいきません。武器があることで、安心できるのは事実です。よって僭越ながら私が、全力でサポートさせていただきます」
「本当ですか……!」
ぱぁぁぁっと顔を輝かせるイーサンが、眩しくて、眩しくて仕方ない。
さっき一度、私から恋愛の指南を断られると思った。
その反動があるからだろうか。
ここまで嬉しそうにしてくれると、私の頬も緩む。
頬は緩んだが、ここで心を鬼にして、持参していた鞄をドンとテーブルに置く。
イーサンは興味深そうに鞄を見ている。
私はおもむろに鞄を開けると、一冊の本を取り出す。
「クラエス副団長。これが何であるか、分かりますか?」
「本、ですね」
「何の本でしょうか」
「……これは……、僕が読んだことがない本ですね」
真剣にそんなこと言うイーサンに、またもやキュン死しそうになる。
それはそうだろう。
だってこれはロマンス小説!
いくら読書好きでも、イーサンが読んでいるはずがない。
しかも私が期待した回答は「これは……ロマンス小説ですね!」だった。まさか「僕が読んだことがない本ですね」と実直そうに答えるなんて……!
可愛すぎる。本当にもう、可愛すぎるから!
そんな可愛いことを言うイーサンの目の前に、三冊のロマンス小説を並べた。
「ロマンス小説の読者層は、ご存知ですか?」
「はい。女性ですよね。平民の女性から貴族の女性まで。女性の方が好まれていると、お聞きしています」
「その通りです。このロマンス小説には、女性がドキドキする情報が沢山詰まっています」
イーサンは「そうなのですか」とテーブルに並ぶ三冊のロマンス小説を眺める。
前世には乙女ゲームやTLノベルがあった。そこに登場する男性キャラクターにキュンキュンしていた。少女漫画でモテを学べと同じように。乙女ゲームやTLノベルで恋愛テクは学べる。だがこの世界にはこの二つがないっ!
そうなったらロマンス小説だ。
ロマンス小説があれば、乙女ゲームとTLノベルがなくても無問題。恋愛に役立つ情報が満載だ。ということで。
私は少しドヤ顔になりながら口を開く。
「クラエス副団長。この三冊のロマンス小説ですが、まずは一冊、読んでいただけますか?そして恋愛に役立ちそうな箇所にしおりを挟んでください。しおりは……足りなくなるかもしれませんので、何か分かりやすく挟んでいただければ」
「この押し花のしおりは?」
「私のお手製です」
押し花で作ったしおり数枚。銀製と革製のしおりが数枚。本に付属している紐と同等の紐を十数本用意していた。
イーサンはロマンス小説よりも、私が用意したしおりが気になるようで、押し花のしおりを代わる代わる手に取り、じっくり見ている。
「この押し花のしおりが素晴らしいですね」
イーサンが嬉しそうに見ているのは、撫子の押し花のしおりだ。優しいピンク色で、私の瞳の色と似ている。よって撫子でよく押し花を作っていた。
「読み終わったら、連絡をください。……今度は我が家に来ていただいてもいいですか?」
カフェでは注目を集め過ぎてしまうので、次回は我が家の応接室で会うことを提案した。














