本気で
「十六歳の時から、好きな方がいたのですか?」
「いえ、十五歳の時です」
「なるほど……。つまり五年間、片想いをされているのですね」
イーサンはコクリと頷く。
五年。
片想いの期間としては長いと思う。ちょっと好きになったレベルではなく、本気で好きなのだろう。そんなに好きなら、当たって砕けろで告白すればいいのに。
そこで紅茶のお代わりが届いた。
イーサンの分だけではなく、私の分も届けてくれる。
このできる店員さんには、チップを後ではずもう。
紅茶を一口飲み、話を再開させる。
「五年間、想い続けるのは、簡単なことではないと思います。真剣に相手のことを想っているのですよね? そこまで好きな相手に気持ちを伝えないのは……ご自身の恋愛力に自信がないからですか? てっきり仮面舞踏会での一件で、乙女心が分からない……という状態になったのかと思ったのですが、そうではなさそうですよね? 一体、五年前に何があったのですか?」
「それは……」と一度は言い淀み、目を泳がせたイーサンだったが、話さないことには前へ進めないと気づいたようだ。少し照れた、またも私や周囲の貴婦人達をキュン死させそうな表情を浮かべた後、口を開いた。
「五年前に彼女を初めて見た時は……なんて華がある人なのだろうと思いました。それは彼女自身が美しい――というのもそうですが、溢れる自信に心が惹かれました」
「溢れる自信?」
「はい。僕は騎士見習いをスタートさせたのが早かったこともあり、十五歳のその時、既に騎士に任命されていました。それでも周囲からすると若い。勿論、騎士の先輩方は皆、尊敬できる方々ばかりです。恵まれていると思います。誰も僕の年齢のことを口にしませんが……。僕自身が気にしてしまったのです」
必要となる訓練と試験を経て、騎士に任命されているのだ。そこは堂々としていいのに、イーサンはなんとなく自信を持てずにいた。そんな中で出会った意中の女性は、自信に溢れていると感じたのだという。
「堂々として、動じない。あの場をコントロールしているのは、彼女でした。彼女が笑えば、皆、笑う。彼女が首を傾げれば、同じように首を傾げる。完全に彼女に魅了されている状態。でもそうなるのは分かります。きっと知識と経験に裏打ちされた、確固たる自信があるからです」
「でもそれを言うのでしたら、クラエス副団長もきちんと手順を追って、課題をクリアして騎士になっているのですから。自信をお持ちになってよかったのでは?」
「はい、その通りです。それができなかったのが当時の僕で、できたのが彼女なんだと思います」


















