どれだけ惚れさせるつもりなの……?
決して別れ話をしているわけではないのに!
もう心の中で泣きながら、「見捨てません、きちんと指南いたします!」と答えることになる。するとイーサンは心底安堵した表情になった。それを見て私も、全身から力が抜ける。
とりあえず、紅茶を飲み、気持ちを落ち着けた。
紅茶はすっかり冷めているが、スッキリして頭がクリアになった。
そこで思い出す。
イーサンは縁談話に乗り気ではないと聞いている。
その理由に思い当たるところがあるのだが、それが正解なのか、聞いてみることにした。
「クラエス副団長は、縁談話に乗り気ではないのですよね?」
紺碧色の瞳に動揺が見て取れる。
本当にイーサンは嘘をつけない。
明らかに縁談話では乗り気ではないことが分かる。
「乗り気ではないようですね」
再度と問うと、渋々という感じでイーサンは頷く。
「縁談話に乗り気ではない場合、理由はいくつか考えられます。多いのが、相手は自分に好意を持ってくれたが、ご自身は興味が持てなかった場合。それは単純に、ご自身の好みのタイプではなかった……というのであれば、縁談話をいくつか受けるうちに、この人ならいいかな……と思える相手と出会えるかもしれません。ですが、他に好きな相手がいる場合は……」
そこでチラリとイーサンを見ると、視線を伏せ、空になったティーカップを見ている。
紅茶のお代わりを頼んだ方がいいわね。
そこで店員さんを見て、イーサンのカップを見ると、すぐに理解してくれた。
できる店員さんでよかった。
視線を再びイーサンに戻し、確信する。
間違いないと思う。
イーサンは想い人がいるんだ。
令嬢の扱いに慣れていない、かつ縁談話を嫌がる、しかもザ・男社会の騎士。
そうなると同性が好きなんです――という線も考えたが、それは杞憂だったようだ。
なんだ。好きな人がいるなら、イケオジなエルン騎士団長が気にしていた跡継ぎ問題は、大丈夫なのではないかしら?
だってイーサンは普通にしていても、モテる。意中の令嬢が、イーサンと一度でも対面で会い、会話することがあれば……。舞違いなく、恋に落ちるだろう。
そう思うのだけど、イーサンは女心を学び、令嬢を喜ばせる方法を知りたいと思っている。
なぜ……?
鬼に金棒という状態にしたいのかしら?
どれだけ惚れさせるつもりなの……?
そう思ったが、そうではないことに気が付く。

























































