旧式より新式を
「そうだったのですね……」と相槌を打った後、私はとんでもないことをしてしまったと気が付く。
そもそもイーサンは何も悪くない。
普段からイーサンは、令嬢と接する機会が少なかった。しかも私のような、無駄に恋愛偏差値が高く、まさに恋愛武装している令嬢との接点なんて、なかったはずだ。つまり耐性がない。
それなのにいきなりあの仮面舞踏会で、私から先制攻撃された。……私としては攻撃するつもりはなかった。自分の欲望のままに行動していたに過ぎない。だがイーサンにとってこれは、大いに戸惑う事態。実際かなり困惑した様子が、先程の会話からも伝わってきている。
普通にしていても、イーサンはモテる。ゆえにイケオジなエルン騎士団長から「女心を学んだ方がいい」と言われても、スルーしても良かったのだ。
だがしかし。
私のせいで自己評価が低くなっており、すんなり受け入れてしまった。
なんだか申し訳ないわ……。
「私が社交界の華と言われていたのは、大昔のことです。舞踏会へ足繁く通っていたのも何年も前のこと。栄光は遥か昔のことです。私などより、今をときめく令嬢から、指南を受けた方がいいのではないでしょうか」
これはせめてもの罪滅ぼしでもある。旧式より新式の、今、妙齢の令嬢達から教えてもらった方が有意義ではないか……。本来、その必要もないのだけど。
「そんな……! ローズベリー伯爵令嬢が匙を投げたくなるぐらい、僕はダメですか!?」
「!? どうしてそうなるのですか!?」
「仮面舞踏会でお会いしていましたが、あれは数に入れないでください。いや、ダメなのでしょうね。一言も声を出せなかった僕は……まさに乙女心が分からない、つまらない人間です……」
「違います!」
もう全力投球で否定した。
そんなわけがなかった。ここで変な勘違いをさせてはならない。
「でも、あなたが教えてくれないなら、僕はもうダメだと思います!」
すがるように見つめられ、もう横になって倒れそうだった。
こんな上目遣いで請うように見られ、耐えられるわけがない……!
どうしてイーサンは、自分の魅力に気づかないの!?
「お願いします。僕を……見捨てないでください」
「!」
なんて破壊力のあるセリフを!
ここだけ切り出して聞いたら、まるで別れ話をしていて、捨てないでくれと言っているような……。
全身にチクチクと視線を感じる。
間違いない。
店内にいる貴婦人達は勘違いしている。
決して別れ話をしているわけではないのに!














