あっ、やってしまっていた
「あれだけじっと見られ、僕は……。でもしばらくすると、急に視線を逸らし、その後、一切視線をあわせようとしない。驚きました。何かしてしまったのかと、ショックでした」
これには「あっ……」と思うが、後の祭り。
私は意中の男性に声をかけて欲しい時に、このじっと見つめ、視線をはずし、もう一度は見てあげないというテクを使っていた。この時はそれを意図したわけではないが、キスの誘惑に自然とこのテクを使ってしまっていたようだ。
「どうしても気になり、あなたのそばに行きました。行きましたが……いざ、何を話せばいいのか。頭が真っ白になり……。するとローズベリー伯爵令嬢、あなたは急に顔をあげたのです」
そう、まさにその通り。その後は完全にその紺碧の瞳に魅了され、でもあまりにも美しいその瞳を芸術品のように感じてしまった。だから鑑賞するような気持ちで眺めてしまい……。
「じっと見たかと思えば、視線を逸らされ、でも再びじっと見つめられ。……どうしていいのか分からなくなりました」
「本当に混乱させて、申し訳ございません! あの時、あなたの唇に魅了され、どうしてもキスをしたくなり……」と伝え、頭を下げたくなった。
だがそんなことはできず、イーサンも話を続ける。
「困惑しているところに、仲間の騎士がやってきました。するとあなたはそのままあの部屋を出て行ってしまい……。僕は女心を理解できない人間なのだと思いました。ですから今回、クラエス団長から『いい機会だから女心を学んだ方がいい。どうすればレディを喜ばせることができるか。かつて社交界の華と言われたローズベリー伯爵令嬢に学ぶといい』と言われた時は、素直に従おうと思いました」
「そうだったのですね……」と相槌を打った後、私はとんでもないことをしてしまったと気が付く。














