恋愛力ゼロ!?
恋愛力ゼロと聞いていたが、そんなことはない気がする。
ただ普通にしているだけで、陥落してしまいそう……。
店員さんは自身の職務を思い出し、私に何を注文するか尋ねた。
「私もブレンドハーブティーにします」と答えたものの、茶葉はまだ決めていない。メニューブックを眺めていると、イーサンが「僕はおかわりでお願いします」と間を持たせてくれた。
よくファミレスのドリンクバーで、適当にブレンドティーを作っていた。その時の記憶を思い出すが……。玄米茶と黒豆茶をブレンドしたり、緑茶にレモングラスを加えてみたりしていたっけ。そうか、紅茶より日本茶ばかり飲んでいた。
「僕はローズマリーとペパーミント、それにオレンジブロッサムを合わせました。ですがオレンジブロッサムではなく、こちらのレモングラスをメインに入れていただくと、さらにスッキリし、香りもよくなります。おススメですよ」
イーサンは神だ……!
「私は、今、彼が言ったブレンドでお願いします!」
「かしこまりました!」と店員さんは答え、さらにおススメのスイーツを教えてくれる。三種のベリーのタルトが間違いなく美味しそうだったので、それを注文することにした。
「クラエス副団長は、甘い物がお好きですか?」
するとイーサンのあの紺碧の瞳が困惑したように揺れる。
そこで私はハッとしてしまう。
この瞳を……知っているわ。
どこかで見たことがある!と。
だが今はそうではなくて。
この様子を察するに……。
「せっかくなので、一緒に食べませんか。この季節のベリーは美味しいですから」
「! はい、ぜひ!」
注文を終え、まずはイーサンに尋ねる。
「もしや騎士という立場で、甘い物が好きと言うことが憚れる……と思っていたりします?」
またもや透明感のある肌が、ぽっと淡い桜色に染まった。
それを見た私は「くはっ」と心臓を抑え、倒れそうになる。
「ど、どうされましたか!? どこか具合が悪いのですか……!?」
真剣な表情で見つめられ、今度は違う意味で、「おうっ」と意識が飛びそうになる。
なんて罪深いのだろう!
本人はただ普通に行動しているだけだろう、こんなに女子のハートを射止めてしまうとは。
そこで私は周囲の令嬢を見る。
見事にノックアウトされていた。
イケオジなエルン騎士団長は「イーサンは完全無敵かと思ったが、唯一弱点がある。それは……恋愛力のなさだ。レディの扱いが分からないと思う。レディが喜ぶような行動は、一切できないだろうと断言する」と言っていたが……。
そんなことはない。
イーサンだったら特に何もしなくてもモテるだろう。むしろ、令嬢が喜ぶような行動をとったら……。大変なことになると思う。
いや、でも……。
イケオジなエルン騎士団長はこうも言っていた。