目が釘付けに
……うん、どこかでこの瞳を見たことがあるような?
この世界は碧眼の瞳の人が多い。街中ですれ違った時の見かけたのか。
その瞳と一緒に目につくのは、鼻梁の通った鼻筋と、これまた陽射しを受け明るく感じる桃色の唇だ。触れ心地が良さそうであり、弾力もありそうだ。お手入れなんてしていないだろうに艶もある。
顔立ちもシュッとしていて、顎もシャープで、肌には透明感があった。
それにベストなしで白シャツに白藍色のスーツの上下という姿だが、今の季節にピッタリだった。爽やかな色で清潔感を覚える。
テーブルに広げた本に集中しているその姿も、文学青年、という感じで絵になっていた。
さらによく見ると、お腹のあたりがぽっこりしている気配は皆無で、組んでいる脚の様子を見るに、しっかりと筋肉があるように思える。
一見、文学青年だが、運動もちゃんとしていると思えた。
ああ、これは細マッチョの着瘦せしているタイプね!
「お客様」
店員さんの声に、我に返る。すっかり文学青年に、目が釘付けになってしまった。
「すみません……」
「いえ。来店したお客様は皆さん、あちらに目が釘付けになりますので」
「そうなのですか」
「はい。三十分程前に、いらしてから、ずっと。私達店員もフロアに出るとつい、目で追ってしまいます。……貴族の方ですよね」
丸い銀のお盆を、胸にキュッと抱きしめた赤毛の店員は、うっとりした顔を文学青年に向けたが、すぐに「お席へご案内します」と我に返る。
「お願いします。十四時半に待ち合わせなので、二人席でお願いします」
「あ、なるほど……。その、もしや男性の方ですか?」
「え、ええ、そうですよ」
「……実はお一人男性のお客様で、十四時半に待ち合わせがあると聞いています。今日、初対面で会うそうで、お名前はローズベリー伯爵令嬢と伺っているのですが、もしやお客様のことですか?」
これは驚いた。もう来店していたのね。
でもよくよく考えれば騎士は訓練で時間に厳しい。高級品とされる懐中時計も全員が支給品として渡されているぐらいだ。
ひとまず自分がローズベリー伯爵令嬢であると告げ、席へ案内してもらうことにした。
その店員さんは私を見て「なるほど。美男美女ですね」と微笑む。
この店員さんは、先にイーサンのことを見ているのだろう。
そうか。
イケオジなエルン騎士団長はイーサンのことを「実に端正な顔をしている」と評していたが、私はあまりそこを信じていなかった。というのも、男性が「かっこいい」と表現する男性は、必ずしも女性の「かっこいい」と一致しないからだ。
男性の言う「かっこいい」には、いい奴も含まれ、内面の良さも含まれることが多い。
よって男性から「間違いなくコイツはかっこいい」と言われ、合コンでいざ会ったら「想像と違っていた」という話は、女子同士では「あるある」だった。
だが今の店員さんの一言からすると、イーサンはきっと、男女共に認める「実に端正な顔をしている」なのだろう。
ちなみに私自身、好みのタイプというのがなかった。見た目でいいなと思うこともあるが、それよりも相手を知る中で、その性格の良さに惹かれることの方が多い。よって乙女ゲームでも、読んでいたTLのノベルでも、気に入る男性キャラに一貫性がなかった。ただし騎士様は別! 猫まっしぐらで騎士様は好物。
「え」
店員さんが案内した席には、あの文学青年が座っていた。














