終わってしまう
初代が王族という公爵家の一つ、クラエス家。
その長男であるイーサン・ヒュー・クラエスは、王立騎士団の副団長に就任していた。二十歳での副団長抜擢というのは、異例の大出世。社交界から遠ざかっていた私は、この驚きの情報を今さっき知ることになった。
そのイーサンについて、イケオジなエルン騎士団長は、こう語る。
「イーサンは騎士だが、自分のような筋肉質な武道派の見た目ではない。一見すると貴公子のようだ。実に端正な顔をしている。では優男なのかというと、そうではない。無駄を削ぎ落した結果であり、その体のほとんどが筋肉。身軽に動き、馬術も得意で、騎乗でも当たり前のように剣と槍を扱える。さらに趣味が狩りであり、弓兵になれる腕前だ」
しかも読書好き。狩りができない冬季や天気の悪い日は、自主訓練をしつつ、本を読み漁る。何より読み始めるとその集中力がすさまじい。まさに寝食を忘れ、読みふける。かつ読んだ内容が綺麗に脳にインプットされるようで、派生して語学も得意だった。なんでも五か国語を操れるのだとか。
「要は文武両道なんだ、イーサンは。しかも優れた容姿も持つ。だが六歳で見習い騎士となってからは、男社会で成長してしまった。一応、社交界デビューはしているが……」
他の見習い騎士達は、舞踏会で素敵な令嬢を見て、急に髪型や体臭を意識し始めるという。そして休みの日ともなると、舞踏会へ行き、サロンにも柄にもなく顔を出すようになる。ところがイーサンは、そういった場所へ出向くことがない。女性との接点が全くないのだ。浮いた噂が一つもない。
「えっと……でもその年齢になるまでに、縁談話はあったのですよね?」
私が尋ねると、イケオジなエルン騎士団長は「あるにはあったようだが……」と言って、こう続ける。
「縁談話を持ち掛けても、本人がとにかく乗り気ではないんだ。お相手がいくら前のめりでも、うまくいかずに終わってしまう。このままでは……」
イケオジなエルン騎士団長は顎に手を当て、深刻な顔になる。
「このままでは、クラエス家が終わってしまう」
「それはつまり後継ぎができないからか? でもクラエス家はもう一人、息子がいただろう?」
父親がそう言うと、イケオジなエルン騎士団長は眉をくいっと上げる。
「オータムのことか? そっちは神の道に目覚め、とうの昔に修道院に入っている。修道士だ。もう色恋沙汰に興味なしだ」
この世界の修道士が、前世と大きく違う点。それは修道院に入り、一年後、覚悟が決まると……前世で言う宦官のような処置が行われるのだ。なぜそこまで厳しいのか。異世界は不思議だ。
「ならば養子だ」
「それはダメだ」「なぜだ?」
父親とイケオジなエルン騎士団長が顔を見合わせる。


















