どなた!?
突然、勢いよく開いた応接室の扉に、その場にいた全員が固まった。
伯爵家の屋敷には、警備のための私兵が何人かいる。もしや悲鳴に気づき、駆け付けてくれたのかと思ったが。
応接室に飛び込んできたのは、ロマンスグレーの髪に碧眼のイケオジ! しかもシルバーグレーの隊服に白のマントと間違いなく、兵士ではなく騎士だ。
しかもその動きのキレのあること!
部屋に入ったと思ったら、ヒラリとソファを飛び越え、座り込んでいたバインの胸倉を掴んだ。バインはそれなりの体格だと思う。だがイケオジ騎士様は、片手でバインの胸倉を掴み、持ち上げていたのだ! 伸びきったバインの靴の先が、絨毯から二十センチは浮いている。
「貴様、レディに対して、何をしたんだ!? どうして応接室にいるレディのドレスが引き裂かれている!? まさか不埒なことでもしようとしたのではないか!」
低音なのに艶があり、重厚感のある実に素敵な声!
声もいいこのイケオジはどなたなの!? どうして我が家の応接室に!?
そう思ったら、「グレイス、だ、大丈夫か!」と息を切らした父親が部屋に入って来た。馬車で外出していたので、エントランスに到着し、この応接室まで走って来たのだろう。貴族の屋敷は広いから、相応な距離を走って来たはず。よって息が切れて当然だった。
むしろ……。
「ははは、ケニー、君は相変わらず体力がないな! 寄宿学校時代からずっと、運動は苦手だったが、これぐらい走ったぐらいで息が切れるとは!」
ケニーとは父親の名前だ。
父親のことを名で呼ぶと、イケオジがあの艶のある低音で快活に笑う。
寄宿学校時代からずっと……ということは、父親とは同い年なのね。
肉体的には二十代にしか見えないわ!
「ローガン、君が化け物なんだよ。我が家の使いが『お嬢様を訪ね、怪しい男がやって来ました』と言うのを聞いた瞬間。君はものすごい勢いで、宮殿の廊下を走り出した。見る見る間に君の背中が遠のき、もう茫然としたよ」
父親の言葉に、「なるほど!」と思わず呟いてしまう。
ヘッドバトラーがバインが来たことを、宮殿にいる父親へ知らせてくれたのね!
「我に返り、慌てて追ったが、君は自身の愛馬であっという間にこの屋敷へ到着してしまった。しかも現場への到着を優先し、エントランスやホールで突然現れた君を止めようとした我が家の私兵も、瞬時に気絶させてしまったではないか!」
父親はハンカチで額の汗を拭いながら恨み節だ。
一方の私はもうビックリ!
我が家の私兵は相応に腕が立つ者ばかりのはず。給金も多いし、毎日訓練もしている。それなのにそれを瞬殺できるなんて……。
「現場には出ず、会議室で指揮を執っているんじゃなかったのか!? これならまだまだ現役の騎士だろう!? ローガン騎士団長!」
ローガン騎士団長……つまりは、王立騎士団で『王の牙』として恐れられるローガン・エルン騎士団長だわ!














