こうなったら……
「ずっと会いたかったですよ」と満面の笑みを浮かべたバインに対して私は。
前世落語を思い出し、「ぶぶ漬けでもどうどす?」と言いたくなるのを堪える。
まず言ったところで通じないし、それで会話が広がるのも面倒だ。それにもう、私はバインの義姉さんではない。呼び方も、ローズベリー伯爵令嬢に変えてもらいたいが、それを伝える時間も無駄だと思った。二度と会うつもりはないのだから、呼び方の訂正を求めるだけ、意味がない……と判断した。
今はとにかく用件のみを聞いて、とっとお帰りいただくのが先決だと思った。
ということで、エントランスホールで時間を使うつもりはない。「ずっと会いたかったですよ」という言葉には「そうですか。こちらは特に用事もなく、会う必要性は感じませんが」と言って、さっさと歩き出す。
もはや多少の無礼は承知の上だ。
応接室に着いたら即、お茶を出すようお願いしていた。お茶が出るのをちんたら待つ時間を割愛したかった。
「どうぞお入りください」とバインを応接室へ通し、ソファに奴が腰を下ろした瞬間に声をかける。
「その薔薇の花束は、私へのギフトですよね? 受け取りましょうか?」
そこでメイドが到着し、お茶をローテーブルへ並べる。その様子にバインが黙り込むが、答えを促す。
バインとしてはメイドがお茶を出し終わり、二人きりになってから、おもむろに話を始めるつもりだったのだろう。だが私はヘッドバトラーとメイド長を控えさせるので、二人きりになるつもりはない。それにそんな流暢に話を進めるつもりもなかった。
「丁度、メイドがお茶を出し終わりました。そのままその薔薇を受け取り、早速、花瓶に生けたいのですが」
「ええっと……」
「あ、私へのギフトではないのですね。失礼しました」
「いや、あの、そうではなく」
「どっちなのですか? ハッキリしていただかないと困ります」
もう完全に礼儀を欠いているが、そんなことは関係ない。ウスが留守中だった時、私の寝室を訪ね、不埒なことをしようとしたのはバインなのだ。とっとこの屋敷から追い出したかった。
「あ、えーと、そうです。……これは義姉さんに」
「そうですか、ありがとうございます」
間髪をいれず手を差し出し、薔薇の花束を受け取ると、そのままメイドに渡す。メイドはすぐさま薔薇の花束を抱え、出て行く。その様子を呆気に取られて見ているバインに畳みかける。














