招かれざる客
愛のない結婚五年目で、バツイチになった。
この国の法律では、離婚後半年は、再婚を禁じている。それは前世の百日間の再婚禁止期間と似ているような制度だ(厳密には違うけど)。つまり、前夫との間に子供ができていると後々面倒なので、半年間は様子を見なさい――ということ。
この半年間は、私にとってはいいリハビリ期間になった。丁度、ホリデーシーズンもあったので、両親と共に旅行をした。王都を離れ、環境がガラリと変わることで、抑圧された結婚生活のことを忘れることができたのだ。夜が来ることを、憂鬱に感じることもなくなっている。自由にロマンス小説を読み、気になる演劇やオペラを観劇できることを、心底楽しめた。
それに再婚を禁じられているので、不用意に男性と知り合う機会は減らそうと、晩餐会や舞踏会にはほとんど顔を出していない。あの魅惑の唇の騎士様のことも、もはやいい思い出になっていた。
ところが。
離婚から半年が経ち、間もなく春になるという、冬の寒さがかなり和らいだ昼下がり。来客があった。誰が訪ねてきたのかと思ったら、バインだ! 元義理の弟。
不運だったのは、父親は建国祭の打ち合わせで宮廷に出向いており、母親は知り合いの伯爵夫人のお茶会へ招待されていた。つまり両親不在のタイミングで、バインが訪問してきたのだ。
これはもう、お帰りいただこうと思ったが、会ってくれるまで屋敷の門の前で待つと言い出した。両親ともに、あと二時間ぐらい経たないと、屋敷に戻ってこない。そして門の前は、馬車が往来する通りであり、そんな長時間馬車を止めるような場所ではなかった。
屋敷には使用人がいる。しかもヘッドバトラーもメイド長もいた。二人に同席してもらうことを頼み、バインを迎え撃つことになった。
エントランスホールまで迎えに行くことさえ、嫌だったが。貴族の一員として、礼儀を欠くことは家門の恥となる。我慢して、モーブ色のドレスのスカートを握り締め、エントランスホールまで出向くと……。
バインはなぜだか紅色という派手なセットアップにゴールドのタイをつけ、両手に抱える程の赤い薔薇を持って馬車から降りてきた。度肝を抜かれた私に、バインはニコッと白い歯を見せて笑う。それを見せられた私は「ゲッ」と心の中で悪態をつく。
なぜ突然バインが私を訪ねてきたのか。
その装い、手にしている花束から想像はつき始めていた。だがあまりにも非常識ではないか。
ウスと娼婦は共に一命を取り留め、王都から遥か西の海沿いの街で暮らしている。私が未亡人ならまだしも、離婚しただけで、ウスは生きているというのに……。
「やあ、義姉さん、久しぶり。相変わらず、美しいね」
バインは私の手を取り、甲へキスをしたいのだろうが、あいにく花束で手がふさがっている。残念そうにしながら、「ずっと会いたかったですよ」と満面の笑みを浮かべた。














