恋愛偏差値は恐ろしい程、高い
恋愛偏差値は恐ろしい程、高い。だが、実践経験がない。ここは……試すしかない。
つまりはもう男女問わず、使えそうな知識をすべて実践してみた。
その結果。
まず、両親はすぐに陥落した。
「君が生んだこのグレイスは完璧だ。まだ赤ん坊なのに、僕の心を完璧に掴んだよ。このベイビーのためなら、父さんは世界の果てにだって行ける気がするぞ!」
「本当にグレイスはなんて愛らしいのかしら。パパのこともこんなに魅了してしまって。でもそれぐらい、グレイスは素敵で素晴らしいわ。ママもあなたが大好きよ!」
赤ん坊に言葉なんて、伝わらないと思っている。でも私は、見た目は赤ん坊だが、中身は前世の記憶持ちなのだ。両親の言葉に笑顔になり、頷き、驚いた顔をする。ただ、それだけでこの反応だ。
両親の次は乳母。
「グレイスお嬢様……。私はお嬢様の乳母になれて、幸せです。夫を早くに失くし、子供を育てるためと、伯爵様に頼りましたが、お嬢様に出会えたことは運命。夫の死さえ、必然に思えてしまいます……!」
世話をしてくれる乳母の手を、私はモミジのような小さな手でぎゅっとつかみ、目で「ありがとう」と何度も伝えたのだ。するともう感涙してくれた。
続いて、専属メイドと専属従者。
「グレイスお嬢様は完璧です。これからさらに素敵な女性に成長できるよう、お手伝いさせていただきます!」
「ローズベリー伯爵家にお仕えして良かったです。ぼくのモノクロの人生に、色がついたのは、お嬢様のおかげです!」
こちらは何かしてもらった時、そばにある物をあたかも御礼のように渡す仕草を繰り返すことで、そのハートを掴むことができた。
勝因はただ一つ。赤ん坊は何もできない――そう思っているから、ちょっとでも赤ん坊らしくない行動をすれば、喜んでもらえるということ。さらにその行動は、自分にだけにしていると勘違いし、自然と私への好感度を上げてくれるのだ。
こうなるともう、身内は全員、グレイスに夢中だ。
後は外部の人間。
手始めは屋敷にやってくる商人たち!
「この宝石は私からのギフトです。このペンダントが似合うのは、グレイスお嬢様しかいませんから!」
「どうかこの新作ドレスを、グレイスお嬢様に着せてください。このドレスが似合うのは、お嬢様しかいません!」
グレイスの魅力……というか前世で培った恋愛力は身内だけではなく、外部の人間にも有効。さらに男女問わずに効果あり!
さらに手を広げ、家庭教師、友達として紹介された貴族の令嬢・令息。
みんな、みーんな、グレイスにメロメロになってくれたのだ!
まさに、この世界に完璧モテ令嬢が爆誕した。これで前世では高嶺の花と思ったイケメンも、みんな私のもの……!
こうしてグレイス十五歳にて、社交界デビューを果たす。