別格の登場
皆、素敵な軍服や隊服、制服姿で。しかもアイマスクをつけている。
そうなると髪色や髪型、背格好や瞳の色、顔の形etc……一応判断材料はいろいろあるのだけど……。
もはや関係ない!
これはチョコレートのアソートボックス。
どれを手に取ろうと、絶対に美味しいに違いないというアレだ!
アイマスクを外し、平服を着せたら、「あ、そこまでタイプではないかも」と思える人であっても、今は違う。前世で言うならスーツは三割増し。みんな、みんな、素晴らしい騎士様に見えてしまう!
こんなに気持ちが盛り上がるのは、普段感情を押し殺している反動だと思う。
愛のない結婚をした。実家の借金の件があるため、こちらから離婚は切り出せない。
それまで自由に空を飛んでいたのに、いきなり鳥籠に囚われ、毎夜苦行を強いられて五年が過ぎた。その間、じわじわと心の中に、ストレスという澱が溜まっていたと思う。それが今、解き放たれた気分だった。
久々にシャンパンも飲み、沢山の騎士様とダンスをした。
令嬢の数が少ないから、必然的に踊っている時間が増え――。
さすがにまだ二十三歳とはいえ、十代ではない。
体力が尽き、「休憩します!」となった。
無礼講で盛り上がる大広間を出て、軽食と飲み物が用意された部屋へ向かう。
騎士達は、花より団子ではなく、花を選んだようだ。
この部屋には誰もいない。
貸し切り独占状態の部屋で、並べられている軽食を見ると……。
サーモンのカルパッチョ、生ハムのマリネ、粗挽きソーセージ、ピクルス、ローストビーフ、一口サンドイッチなど、どれも美味しそうな料理が用意されていた。
スイーツはチョコレート、マカロン、タルト、ケーキ、フィナンシェ、パウンドケーキ、スコーン、デニッシュなど、こちらも気合がはいっている。
いくつか軽食をとり、用意されている椅子に腰を下ろしたところ、一人の騎士が入って来たのだが……。
テールコートを着ているのに、騎士と分かるのは、スラリと長身で引き締まった体をしているのは勿論、動きだ。体幹がいいと分かるピシッとした姿勢、無駄な揺れもなく、歩幅も一定だった。そしてもはや職業病なのかもしれない。この部屋に入った瞬間に死角を確認している。その様子はまるで敵はここにいない――とチェックしているかのようだ。
先程、大広間で見た沢山の騎士……無論、中には見習い騎士もいて、彼らとダンスや会話を楽しんだ。けれども今、この部屋に入って来た騎士は別格だ。騎士の階級ピラミッド構造の、明らかに頂点にいる人物だと判断できる。
アイマスクはオーソドックスな黒のもの。でもそこから見える瞳は……まるで宇宙のようだ。紺碧の宇宙がそこに広がっている。思わずガン見してしまった。
「!」
私が見ていることに気づかれてしまった。