初恋と失恋
「……練習場にお菓子を持ってきて、こっそり食べている見習い騎士もいたりするのですよ。……わたしもその一人でした」
これにはビックリ! でも育ち盛りなのだろう。
それにさりげなく自分がそうだったと明かしてしまうなんて……。
明るい人だ。
なんだか肩の力を抜いて、話すことができそうだった。
そこにハイビスカスティーのオレンジ割りが到着した。
綺麗に二層にわかれ、オレンジとルビー色の、素敵な飲み物になっている。
飲んでみると、程よい酸味と甘みがあり、美味しい!
つい笑顔になった私を、ジャスパーは見逃せなかった。
「美味しいでしょう?」
「はい。見た目も美しい上に、こんなに美味しいなんて。毎朝飲みたいです」
そこからは他愛のない話が始まる。
好きな食べ物、苦手な食べ物。趣味。
気に入っている音楽や最近観たオペラ、演劇。
いろいろと傾向が似ていることが分かった。
「ジャスミン嬢とはとても話しやすいです。……あなたなら舞踏会へ行っても、壁の花になることはないでしょう」
「どうでしょうか。昔は……そうですね。そうだったかもしれません。でも今は……舞踏会もほとんど足を運んでいませんから」
「社交の場が苦手なのですか?」
社交の場が苦手なのか。
苦手ではないと思う。
ただ、やはりウスとの婚姻歴のこともある。しかもこの世界では珍しい離婚を経験しているのだ。いろいろ噂されることを思うと、プレッシャーを感じる。
「わたしは社交の場というより、舞踏会が苦手です」
「そうなのですか?」
ジャスパーは驚き、でもこんなことを打ち明ける。
「実はわたしも舞踏会には苦い思い出があります」
「え、そうなのですか!?」
「社交界デビューをした舞踏会で、わたしは一目惚れをしたのです。ある令嬢に。わたしにとっての初恋です。三歳年上の美しい方で、当時はみんな、彼女に夢中でした。当然、わたしなど相手にされません。ほろ苦い思い出です」
ジャスパーは、お代わりで頼んだローズヒップハイビスカスティーを口に運びながら、自身の初恋と失恋について語り始めた。
「騎士見習いで、騎士の訓練ばかりしていて、令嬢への接し方なんてろくに学んでいません。相手にされなくても当然です。ダンスだって得意ではないですしね。そもそも彼女のことは、遠くから眺めることしかできません」
「騎士見習いという立場は特殊ですから、それも仕方ないのかと」
私の言葉にジャスパーは「お優しいですね」と微笑む。
「ですがわたしだって男です。しかも騎士を目指しているぐらいですから、闘争心はあります。その失敗をバネに、ダンスを習い、モテている先輩騎士に、令嬢への接し方を教えてもらったりもしましたよ」
なんて前向きなのかしら!
つい私から尋ねてしまう。


















