今ならワンチャンある?
唐突にイーサンとの恋愛レッスンが終わってしまった。
イーサンからは舞踏会の翌日、急に帰ることになったお詫びとこれまでの恋愛レッスンに対する御礼が書かれた手紙が届いた。美しい花束とチョコレートのアソート、そしてドレスの仕立てに使える最高品質のシルクの布と共に。
なぜ対面で言ってくれないだろうと思うものの。
もしかすると昨晩の舞踏会で、イーサンは意中の令嬢と偶然、顔を合わせることになったのかもしれない。このチャンスは逃せないと、懸命に動いた。そして今、その令嬢といい状態なっていたとしたら……。
私の存在がチラつくのは、最も避けたいことだろう。
よって私との接触を避け、こうやって手紙で連絡を寄越した……そう考えることになった。
私としては不完全燃焼だが、イーサンとしては、完全燃焼できていたのだろう。恋愛に役立つ言動は、既に学ぶことができている。さらに意中の令嬢とも出会えたのなら、私のことなど気にしていられない。
そう、気にしている場合ではないだろう。
それなのにちゃんと手紙と御礼の品を届けてくれた。シルクの布なんて、宝石にも匹敵するぐらい高価なものだと思う。それぐらい素晴らしいものだった。
それなのにイーサンに対して文句を言いたくなるなんて……。
文句、というよりも。
寂しさ。
もはやこの一ヵ月近く、イーサンと日々会うことが日課になっていた。急にその予定が空き、空白になったことで、寂しくなっていた。
だが不思議なことに、この空白を埋めるかのようにバーナードからは、デートに誘われている。さらにイケオジなエルン騎士団長に、約束の騎士を紹介してもらう日も決まっていた。そしてバーナードが私と再会したことを、知り合いの貴族に話したからだろうか? かつて社交界で顔をあわせていた令息、現在既婚未婚を問わず、手紙も届いている。
手紙には季節の挨拶に加え、社交辞令の可能性が高いが、また会って話したい、お茶をしないか、今度は自分にエスコートさせてほしい……そんなことも書かれていた。
なぜこんな手紙が届くのか。
その理由を私はなんとなく分かっている。
この令息達にとって、私は初恋の相手である可能性が高い。
実らずに終わった初恋。
その記憶は甘美であり、色褪せることがない。
その初恋の相手は、当時は高嶺の花だった。
でも今は婚姻歴ありと敷居が低くなったのだ。
今ならワンチャンあるかもしれない……と考えたとしても、おかしくなかった。特に既婚者は。
勿論、バーナードのように、純粋な気持ちで私を慕ってくれている未婚の令息もいるだろう。
ともかくイーサンの恋愛レッスンは終ったが、同時に第二のモテ期は到来。
寂しくなる必要なんてなかった。
出戻りの訳ありな私には、勿体ないくらいの状況なのだ。
それなのに……。














