ついぞ運が向いて来た!?
ウスが、スパイスの輸入で使っている貿易船の視察のため、港のある街へ向かうことになったのだ。つまりウスが、屋敷を一ヵ月程空けることになったのだ。このような場合、妻が同行することもある。マシーンのように、とにかく腰を毎晩振るウスは、私の同行を求めるかと思ったら……。
それはない。
これぞ本当の奇跡だと思った。しかも明日の朝には出発するからと、夕食の後、ウスは荷造りだった。荷造りなんて、従者がすること。ウスは仕事で使う書類を整えるぐらいで、そこまですることはないように思えたが……。
「明朝の出発も早いので、今晩は一人で寝る」とウスから言われたのだ!
もうこれには脳内で拍手喝采。ついぞ運が向いて来たと、大喜びとなる。
こうして私はウスとの苦行を一ヵ月、免除されることになった。
もう私の頭の中は、ウスのいないこの一ヵ月をどう過ごすか考えるので、いっぱいだ。
まずは実家に顔を出そう。
夫がいるのに、実家に顔を出すなんて!――そう義母から小言を言われていた。だがウスは屋敷を空けているのだ。実家へ顔を出そうと、文句はあるまい。
次に、友人との晩餐会だ。
私は社交界の華をしていたぐらいだから、交友関係も広かった。結婚後すぐは、頻繁に晩餐会に招待された。だが、晩餐会に顔を出せば、帰宅は遅くなる。そうなるとウスとの苦行の時間が、ウスからすると、満足にとれない。
私としては、苦行の時間が少しでも減るのだ。晩餐会ウエルカムだったのに、ウスがそれを許さなかった。おかげで、晩餐会に顔を出せるのは、そのお誘いが偶然にも月のものと重なった時ぐらい。そしてそう偶然は重なってくれない。
だが今回は丸々一ヵ月あるので、届いている晩餐会の招待状を見て、顔を出す日を決めた。
次に久々に舞踏会へ顔を出そうと思ったのだが……。