タイヤの間
カーカー
夕方。上空でカラスが泣き始めた。
「もう夕方か」
ぽつりと俺は呟いた。
「もう帰る時間?」
そう聞いてきたのは俺の妹梨沙。
「えー!もっと遊ぼうぜ!」
そう急かすのは俺の友達直樹だ。
俺と直樹はいま小学5年生。
梨沙は小学三年生だ。
このころ学校が終わるとグランドで遊ぶことが増えていた。
「じゃあそこのタイヤで遊んで帰ろう」
俺が指指した先にはタイヤが何個も半分埋まっている遊具だ。
それを飛び移っていく遊びが俺は楽しかった。
「おー!いいね!落ちたやつの負けな!」
得意気にタイヤの遊具に直樹は向かっていく。
「えー、私すぐ落ちちゃうのに」
渋々梨沙も向かっていく。
「じゃあジャンケンで買ったやつが先頭な」
俺はウキウキしながら遊具の方へ向かった。
「じゃんけんぽんっ!!」
グー、グー、パー
パーを出したのは俺だ。
「よし、俺の勝ち!」
「相変わらずじゃんけんつえーよな、お前」
口を尖らせる直樹。
「まあな!」
俺は冗談まじりでそう答えた。
「よっと!」
タイヤの上はなかなかバランスをとりにくい。
俺はよろよろしながら次のタイヤへと足を進めた。
「じゃあ次は俺な!」
直樹も続いてタイヤに登る。
「わっ、もうこけそう」
続いて妹の梨沙が登った。
自分でゆうのもなんだが運動神経には自信がある方で
バランス感覚もいい方だと思っている。
だから負ける気がしない。
多少よろよろしながらも次、次と飛び越えていた時だった。
よし、もう少しでゴール…えい!
次のタイヤに進もうとしたときタイヤとタイヤの間に
小さい男の子がうずくまってるのがみえた。
やばっ!このままいったら当たる!
そう思いとっさに足を斜めに向けた。
…が足をひねり転げ落ちた。
「いっ……」
足に激痛が走る。
折れてるのかひねったからなのか起き上がることができない。
「お兄ちゃん!!」
「大丈夫かよー!!」
直樹と梨沙が心配してこちらに駆け寄ってきた。
「どうしたんだよ、急に!」
「お兄ちゃん、急に変な方向にいったからびっくりした」
なんとか上半身だけ起こした俺はさっきのことを説明した。
「男の子?そんなこいなかったと思うけど」
妹にも目を向けるがううん。といった感じで知らないみたいだ。
「いや、確かにみたんだ。タイヤの間にうずくまってる…小さい男の子」
俺が落ちたタイヤの方に目を向け直樹はもう一度見に行く。
「やっぱり誰もいねーよ」
くるっと直樹がこちらに振り向いた瞬間だった。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
直樹の後ろでニヤっと笑ってこちらをみている男の子が…。
生きてる人間の顔じゃない。
明らかにこの世のものじゃない姿だった。
―――
数週間後。
足の怪我も治りつつ普通の学校生活を送っていた。
あれ以来俺たちはタイヤの遊具には近づかないようにしている。
結局あれがなんなのか検討もつかないが被害がでないことを願っている。