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【書籍化】序列最下位の最弱令嬢と龍の当主の最愛婚  作者: 榊木叶音
第一章  わたしの夜が明けるまで
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第10話 十夜の仕事


 やがて十夜を乗せた車は、討伐要請の現場へと到着した。


「さて……」

 

 人だかりが出来ている。双馬と思わしき人々が数人戦闘にあたっていたが、そのうちのひとりが十夜に気がつくと、戦闘を中断させた。

 

 遠くからでも分かる。双馬満成だ。今日も白衣を着て、肩につきそうな髪を後ろで結んでいる。


「とーやくん! 来てくれたんだね!」

「状況は?」

「あれー? 今日は眠そうじゃないね。どしたの?」


 満成はそのまま会話を続ける。

十夜は、他の双馬の様子を見て、

 

(なるほど、攻撃的な妖怪ではないということか)


 少し安堵する。


(あまり時間はかからなさそうだな)

 

「とーやくん?」

「ん? ああ、寝たからな」

「……めずらしーね」

「いつも通りだ。――状況は?」

 

 もう一度聞くと、今度は答えが返ってきた。


「あの黒いのが、井戸に住み着いたんだって。近付くと攻撃されるよ。何度か踏んだりすると消えるんだけど数が多すぎるし、すーぐ密集しちゃうんだよ。ほら、オレらって戦闘系じゃなくて、本当は救護系じゃん? 戦闘向きじゃないんだよ」

「はぁ」

 

 目の前には、生活用の井戸がある。その井戸のまわりを、黒いものどもが蠢いていた。小さな妖怪だ。うごうごと動き回りつつも井戸から離れないそれらは、大きさは小さいけれどたしかに数が多い。

 

「ふん……」


 十夜は井戸に近付くと、双馬をさがらせた。


 そして――

 腕を一振り。

 

 ゴォッ

 っと熱風の斬撃が発生し、妖怪どもを簡単に切り裂いていく。


 何度かの素振りの後、井戸のまわりにいた妖怪どもはいなくなった。



「ひゅう。オレらの一時間を、三分で超えたね。こわ~」

 満成の発言を十夜は無視した。


 野次馬をしていた村人からも、わぁっと歓声が――いや、黄色い声が上がる。

「きゃー! 素敵ー!」

「今の人、かっこいいー! 一撃じゃん!」

「あれってもしかして九頭竜家の若さまじゃない? こないだ雑誌に載ってた……」

「えー! やばー!」

 

 そして村娘たちは円になってこそこそと話し――やがて一番美人の娘が前に出てきた。

 

「ありがとうございます! おかげで助かりました!」

「そうか。もう大丈夫だろう」

「あの! お礼をしたいのですが……! ぜひ、家へ!」

「必要ない。では気をつけて」

「あ、はい……」


 十夜は、満成に向き直った。


「他の出現位置は? さくっと終わらせよう」

「さすがだねー。そして、いつも通りモテるし、いつも通りさっぱりしてるねー」

「いいから。他の出現位置を教えろ」

「はいはいっと」

 

 十夜は、満成から情報を聞くとさっさと車に戻る。


 九頭竜家の次期当主である以上、女から声がかかるのはよくあることだ。

 しかし、いつもはこのように、あまり近付かないようにしてきた。


(人々を助けることは義務だ。だが、こういったことは面倒くさい……)


 先ほどの村娘が美人だったかどうかなど、十夜には関心がまるでなかった。むしろ、もう顔を忘れた。


 しかし、

(今のが、……伊織嬢だったら。どのように言うだろうか)


 眉を下げた、弱々しい笑い方。

 彼女がもし、もう少し笑えたなら――。

 


 十夜は、動き出した車の窓辺に、肘をついた。







「どう思う? 満成」

「……兄さん。どうもこうも、喜ばしいことじゃない?」

 

 去って行く車を見送りながら、満成は言う。


「オレは、とーやくんは(あや)()と婚約すると思ってたんだけどな」

「”虎”か……」

 

 そう()(うま)(とも)(なり)が言った。


 満成は、もう見えなくなった車のあとを見たまま、続けた。


「彩女に言った方が良いかな?」

「……まだどうなるか分からないぞ」

「”羊”だしね。羊は弱いからなー。でも、」


 そこで満成はニコ、と笑った。


「オレなら、いつでも治してあげられるんだけどなー」

「満成、お前……」


 その時、双馬の車の方から声がした。


「おーい、みんな、次のポイントへ移動するぞ! 乗れ乗れ!」

「はーい」

「…………」


 双馬たちは揃って、車へと向かった。 





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