058 礼拝堂での邂逅
王城の謁見の間では、アイゼンベルナール第一王子と、イザークジルベール第二王子が、父であるカリストフ国王に、出征の挨拶を行なっていた。
それは昨日、啓との試合の最中にもたらされた、カナート王国との国境紛争の敗戦の報を受け、その報復と領地奪還のために、二人の王子が出征することになったためだ。
カリストフは、二人の息子に激励の言葉を掛けた後、イザークに聞いた。
「イザーク。お前の実力は疑いのないものだが、体は弱いのだ。決して無理はしないように」
「はい、陛下。心得ております」
場を弁えたイザークは、父を陛下と呼んで畏まった。しかし弟の体調を憂う兄は、兄弟として素直な感情を述べる。
「全くだ。父上の言う通り、女神の奇跡の技があるとはいえ、お前は体が弱い。今から出征を取りやめても、別に恥にはならんぞ」
「いえ、兄上。私は戦いたいのです」
いつになく好戦的なイザークに、父も長男も意外な表情を見せた。そんな二人を見たイザークは、その理由を話した。
「昨日の、兄上とケイの試合はとても素晴らしかった。二人の戦いを見て、私は焚き付けられました。そして私も実際にケイと試合を行い、戦いの高揚感を味わいました。そこに出征の話が来れば、自ずと心と体が動くというものです」
「そういうものか?」
「そういうものです。諦めてください」
出征の意志が固いことを理解した父と兄はイザークに、移動中は自走車の中で大人しくしていること、戦いはバルダーに乗って後方支援に回ること、体調不良を感じたら速やかに撤退することなどを約束させた。
イザークは苦笑しながらも、二人の提言を了承した。
「では陛下、行ってまいります」
「行ってまいります」
「うむ。朗報を期待する」
そして二人の王子は、謁見の間を退出した。王子達は、そのまま速やかに部隊を引き連れて、南の国境へと出発する予定となっている。
息子達を見送ったカリストフも、午後の用事の準備をするために、謁見の間を後にした。
◇
王子達が出征した時と同じ頃、啓達は宿の一室で、昨日の件について話をしていた。
昨夜は互いに疲れすぎて、ざっくりとした経緯だけを話して就寝したのだが、互いの話した内容が内容なだけに、全員、あまり熟睡できていなかった。
話の焦点は、国立研究所で動物を使った怪しい実験をしていたことと、アイゼン王子に『本物の至宝はどこにあるのか』と聞かれたことの二点だ。
「それにしても、動物実験とはなあ……額に魔硝石を埋め込んで強化するというのは、理にかなっている気はするけどさ」
「ケイが言うと説得力あるわね。なにしろノイエもバル子ちゃんも、魔硝石が本体みたいなものだしね」
「違うぞ、ミトラ。バル子はバル子だ。猫が本体だ。見てみろ、こんなに可愛いんだぞ」
「その通りです、ご主人。バル子はご主人の可愛い猫です」
「はいはい。そういうのはいいから」
二人と一匹のやり取りを見たサリーが軽く吹き出す。
「私もカンティークは本当にネコだと思っているよ。それはともかく、話を戻すが、研究所で行っていた実験は決して気持ちのいいものではなかった。それに奴らは、獣の強化と使役に成功したら、それを戦争に使うつもりだと言っていた。幸い、まだ成功していないようだがな」
「あのルーヴェット、可哀想だったね……」
研究所を出た後、サリーから事情を聞いていたミトラが目を伏せる。啓も実験に使われていたというルーヴェットの容姿をサリーに教えてもらったが、地球で言えば犬に近い動物のように思えた。
「ああ。全くだ。あの光景をケイが見ていたらと思うとゾッとする。ケイがあの場にいなくて本当に良かった」
「オレが?なんで?」
「おそらくケイは激怒して、研究所を完膚なきまでに破壊していたと思う」
「いや、さすがにそこまではしないと思うが」
「いや、する」
「するよね、絶対」
「二人とも、オレのことを何だと思ってるんだ」
とはいえ、啓も正直な所、その場に居合わせたら正気を保てるかどうかは分からなかった。少なくとも、目の前で苦しんでいる動物を救おうとはするだろう。それを邪魔する奴がいれば、今ならば力を駆使して、それを排除するかも知れない。
啓は他人に言われるまでもなく、自分が無類の動物好きであることは自覚している。
しかし一方で、必要な動物実験というものにも理解はあった。動物を使った臨床試験や、遺伝子組み換えの実験など、人間の生活を豊かにするために必要な実験は仕方ないと思っている。
動物の命を使った実験など、自分には到底できないが、他人がそれを「有益な目的のために」する分には啓は一向に構わなかった。
その実験によって、人々が得られる恩恵があるのだから、その点については啓も理解を示している。結局のところは、人の持つエゴなのだ。
それでも、目的が戦争となるとさすがに啓としても首を縦に振る気になれなかった。それは人間にとって必要な動物実験ではないと啓は思う。
やはりエゴかも知れないが、心からの承諾はできなかった。
「サリー。その動物実験は、王族が承諾している実験なのだと、所長は言ったんだよな?」
「ああ。真偽は分からないがな。だが、父や兄弟達がそんなものを了承するとは思えないんだ」
「仮に本当だとすると、そこまでする理由は何だろう」
「それは分からないが……もしも実験に成功したら、今度はより大きな魔硝石で実用性を試したくなるとは思わないか?」
「あっ」
大きな魔硝石と言われて啓が思い当たるのは、もちろん『ユスティールの至宝』のことだ。
城に納めた偽物の女神像とは違い、本物のユスティールの至宝は、一般的なバルダーの操縦席の中に収まるかどうかという程の、巨大な魔硝石なのだ。
「例えばの話だが、そんな実験を主導している者が、巨大な魔硝石の存在を知れば、その在処を探ろうとするのではないか?」
「それは、きっとそうだろうな」
「本物の至宝が何であるかは、城の禁書庫を頑張って漁れば発見できるはずだ。そのことを知っていたからこそ、ケイにそんな質問をしたのかもしれない。兄様だけではなく、弟達や父だって知っている可能性もある」
「でも、オレが謁見した時は、そんなこと聞かれなかったし……」
「他の者には聞かせたくなかったのかも知れないな」
「じゃあ、やっぱり……アイゼン王子が?」
しかしサリーは、否定するというよりも、信じたくないという表情で首を横に振った。
「兄様は、良くも悪くも真っ直ぐで、強くて優しい人だ。そんな兄様が、動物を戦争に使うための実験に賛成するとは思えない」
「オレもアイゼン王子はそんな人には思えなかった。初めて会って、一度試合をしただけだが、なんというか……ちょっと強引だけど、豪快で、気持ちのいい人だったよ」
「ケイがそう言ってくれて、私も嬉しいよ」
啓の言葉に、サリーは表情を和らげた。そして嬉しそうに、膝の上のカンティークをワシャワシャと撫でる。
そんな二人の話を黙って聞いていたミトラが、啓にジト目を向けた。
「ねえ。もしかしてケイってそっちの趣味なの?」
「そっちって……おい、ミトラ」
「だって、あたし達が温泉に突撃した時も、さっさと逃げようとしたじゃない」
「そりゃ、いきなり裸でやってきたらびっくりするだろう」
「びっくりした?感想はそれだけ?やっぱり男が好きなんじゃないの?」
「違う!オレが好きなのは女の子だ!」
「ほう」
「ほほう」
「ご主人……」
「……もう、勘弁してくれませんかね」
ひとしきり啓がイジラれ、サリーとミトラが満足したところで、そろそろ時間だとサリーが言った。
昨日、王城で女神の礼拝堂を見学する許可をもらった際に、礼拝堂を訪れる時間を指定されていたのだ。礼拝堂の中を見学するために人払いもしてくれるとのことなので、その配慮を無駄にする訳にはいかない。
サリーは立ち上がると、カンティークを仮面に変化させて頭に被った。
「研究所のことも、兄様の言葉も、どちらも気になることではあるが、今はどうすることもできない。できない以上、考えても仕方のないことだ。今はやるべきことをやろう」
「そうだな。じゃあ、女神の礼拝堂に行こうか」
◇
礼拝堂に着いた啓達を待っていたのは、数人の騎士だった。それを見たサリーは小さく「むっ?」と言ったが、その声が聞こえたのは啓だけだった。
騎士達はやってきた啓に「お待ちしておりました」と言うと、礼拝堂の入り口を開け、啓達に中へと入るよう促した。そして騎士達と共に礼拝堂に入った。
礼拝堂の中は明るかった。採光の良い天窓と、天井付近にある出窓から陽が差し込み、室内を明るく照らしていた。
正面は祭壇のようになっていて、その奥には大きな女神像が立っていた。そして像の後ろの壁には、外の屋根の上にあったものと同じように、十字架が飾られていた。
(ここにも十字架があるとは……やはり建国王はキリスト教徒だったのかな)
啓がここに来た目的は、建国王が遺した遺品の中にある、建国王が記したという手記を読むためだ。その手記は、この世界の言葉ではない文字で書かれていて、誰も読むことができないという。
しかし啓には手記が読める可能性が高い。同じ文字で書かれているという、礼拝堂の入り口にある石碑を読めたからだ。
石碑にアルファベットで刻まれていた言葉は『いつか、私と同じようにこの世界に来た人のために』という言葉で締めくくられていた。その言葉に導かれ、啓はここにやってきたのだ。
興奮を抑えつつ、啓は手記を探してあたりを見回した。すると陽の当たっていない壁際に、ショーケースのような物が並んでいた。啓はそこだと当たりをつけ、早足で近づいた。
しかしケースは空っぽだった。
「何も入ってない……別のところかな」
「いや、そんなはずはない。ここには建国王の遺品や、当時の貴重な文物が収納されていたはずだ」
啓の疑問にサリーが答える。しかしケースはどう見ても空だ。
どういうことだ、と啓がサリーに聞こうとした時、礼拝堂の入り口の扉が開いて、豪華な装飾に身を包んだ初老の男が入ってきた。その男に、啓は見覚えがあった。
「まさかと思ったが……」
小さく呟くサリーに、啓は顔を向けた。
「なあ、あの人……いや、あの御方は……」
「ああ。オルリック王だ。やはり入り口にいたのは、王の近衛騎士だったか」
サリーが啓だけに聞こえるように小声で答える。サリーは礼拝堂に来た時から、外で待っていたのが王の近衛騎士であることに気がついていたらしい。
なお、少し離れた場所では、一人分かっていないミトラだけが「誰だこのおっさんは?」という顔をしていた。
(どうする、サ……ワルキューレさん)
(……とりあえず、跪くべきじゃないか?)
そう言うとサリーは、すぐにその場で跪いた。啓とミトラもそれに倣って跪く。ミトラもなんとなく、相手が誰なのかを察したようだった。
「構わん。畏まる必要はない」
王に、立って話がしたいと言われた啓達は、少し困惑しながらゆっくり立ち上がり、立礼した。それから王は、入り口を守っている近衛騎士に向かって「お前達は外で待て」と言った。今度は近衛騎士達は困惑した。
「陛下、しかし……」
「この者達に重要な話があるのだ。すぐに済む。外で待て」
二度言われた近衛騎士達は、三度目を言われるほど愚かではなかったが、渋々といった様子で礼拝堂の外に出て、扉を閉めた。
人払いができたことを確認するように、王は礼拝堂内を見渡した。
「ここに来るのも久しいものだ。何年ぶりか。最後に訪れたのは娘と来た時だったか」
王の言葉を聞いた啓は、ちらっとサリーに目を向けた。仮面を被ったサリーの表情は分からないが、心なしか、肩が震えているようにも見えた。
(父上……)
サリーは感情を必死に殺していた。人払いしている今ならば、せめて父にだけは正体を見せても良いのではないか、と思わなくもなかった。
しかしサリーは、その誘惑に負けなかった。やはり今はその時ではないと考え、久しぶりに父に会えたことの嬉しさだけを胸に刻んでいた。
ひとしきり室内を見渡した王は、啓に顔を向けた。
「ユスティールのケイ、と言ったな」
「はい、陛下」
「謁見の時にも同じ質問をしたが、もう一度、改めて聞かせてもらいたい。其方は『ユスティールの至宝』について、どう思う」
「私は……」
啓は、前に聞かれた時と同じように、城に納めた「偽物の至宝である女神像」についての感想を言おうとした。しかし、王は啓の発言を手で制した。
「儂が聞いているのは、あの像のことではない。確かに出来の良い像だったがな。儂が聞きたいのは、本物の至宝である魔硝石のことだ」
王は本物の至宝のことを知っていた。同時に王は、啓も本物の至宝のことを知っている、ということを示唆していた。
啓が冷や汗を浮かべながら回答に詰まっていると、再び王が口を開いた。
「儂が何のために人払いをしたと思っている。遠慮なく言うが良い。回答次第でどうこうするつもりは無いが……嘘だけは許さん。其方が嘘を言えば儂には分かる。それが儂の、女神の奇跡の技だからな」
啓は、隣りにいるサリーが息を呑む声がはっきりと聞こえた。啓は、昨日の謁見の前に、サリーから「父は勘が鋭いので気をつけろ」とアドバイスを貰ってはいたが、どんな女神の軌跡の技を持っているかは聞いていなかった。きっとサリーにも知らされていなかったことなのだろう。その疑問には王が自ら答えた。
「この力のことを知るのは亡くなった王妃と、ほんの一部の者だけだ。我が子達にも教えておらん」
「なぜ……なぜ、そんな大事な事を?」
「今、それだけ大事な話をしているということを、其方達に分かってもらうためだ。信じるかどうかは其方次第だがな。改めていうが、嘘は許さん」
さあ、答えよ、と王が啓に促す。しかし啓は言葉を紡げなかった。王は回答についてどうこうするつもりはないと言ったが、それを信用してもいいのか、判断がつかなかった。
嘘を見抜けるということ自体がハッタリだと信じて、知らぬ存ぜぬを突き通すという手もある。しかしハッタリなどではなく、本当だったら……
啓がそんな思考の迷宮に嵌っていると、隣にいたサリーが啓の腕を引っ張った。
啓がサリーに血色の悪い顔を向けると、サリーは大きく頷いて「構わん。話してみよう」と言った。それで啓の腹は決まった。
啓は一度呼吸を整え、王に顔を向けた。
「……陛下。ユスティールの至宝である「魔硝石」のことについてどう思うか、という質問にお答えします。これはあくまで私共の考えですが……人が扱うには危険すぎるものであると考えています」
「そうか……よく言ってくれた。たしかに、巨大な魔硝石は、有益であると同時に、危険でもある。それを扱う者次第ではあるが、儂も同感だ」
王が「巨大な魔硝石」と言った以上、本物の至宝の正体を知っていることは明白だった。啓は嘘をつかず、正直に答えて正解だったことに安堵した。
そして啓は、次の王の発言で、王に嘘を見抜く力があるということが真実であると確信した。
「そういえば昨日、其方は女神シェラフィールの敬虔な信徒と言っておったが、それも嘘であろう?」
「はい!あの女神を崇拝するなど、私には無理です!」
「おい、ケイ、こら」
「いや、だって本当のことだし……」
啓は、本当に女神を崇拝しているサリーに強くこづかれたが、正直な気持ちを答えただけなので訂正するつもりもない。女神である以上、それなりに敬う部分はあるが、それはあくまで部分的にである。
「ふむ。其方の言葉は本当に素直に読み取ることができるな。本当に其方は、女神の奇跡の技が使えるのか?」
「はあ、一応、使えますが……人によっては読みにくいこともあるのですか?」
「うむ。貴族……つまり、女神の奇跡の力を持つ者は、その力で心を包み、嘘か真実かをはっきりさせない者もいる」
「なるほど……」
啓はまだこの力を授かってから日が浅い。さらに他者と比べると特殊な性質なので、そのようなコントロールが出来ないのだと啓は勝手に推測した。
「そこで、敬虔な信徒ではない其方が、女神の礼拝堂を訪れる理由を考えれば、自ずと答えは見えてくるというものだ。其方、建国王の遺物に用事があるのではないか?」
「はい」
「それは、手記か?」
「はい。仰るとおりです」
もはや啓は、王に対して偽り無く答えることに決めていたので、質問にも素直に答えた。
「そうか……そうであろうな。すまないが、建国王の遺物は、今は城にあるのだ。其方らが来る前に、側近に命じて城に引き上げさせたのだ」
「それは、何故ですか?」
「其方の真意を知りたかったからだ。だが、今までの問答で、其方らが危険な思想を持つ者ではないことがよく分かった。そこでだ。儂と取引をして欲しい」
王はそう言うと、指を二本立てた。
「其方に建国王の手記を見せる代わりに、儂の依頼を聞いて欲しい。ひとつは、ユスティールの至宝を見つけること、そしてもうひとつは、見つけた至宝を破壊することだ。できるか?」
王の質問に、啓はなんと答えるべきか悩んだ。嘘をつくつもりは無いし、嘘をついても見破られる。そのため、答えの方向性は決まっているが、一旦、内輪で相談させてほしいと訴えた。
「あまり時間はない。3分間だけ待とう」
どこかのアニメの悪役のような台詞だと思ったが、ずっと近衛騎士を遠ざけている状況なので、あまり時間を掛けられないことは啓にも理解していた。
啓はサリーとミトラと相談、というよりも話してよいかの確認を取った。二人は二つ返事で承諾したので、実際に相談に掛かった時間は1分にも満たなかった。
「お待たせしました、陛下。まず先に、ふたつめの破壊依頼については承知しました。王の承諾をいただけたので、私共としても遠慮なく破壊できます」
「うむ。ではひとつめのほうについてはどうか」
「それは、現状、履行不能といいますか……」
「出来ないと申すか」
「いえ、違います。いや、違わないのですが……その必要は無いのです」
王が首を傾げ、もったいぶるなと苦言を言う。
啓は改めてサリーとミトラを見て、二人が頷くのを確認した。
「本物のユスティールの至宝ですが……それ、私の家にあるのです」
「……なんだと?」
「家の床下に埋めておりますので、ユスティールに戻り次第、破壊することにします」
◇
啓との話を終えた王は近衛騎士を呼び、これから王城に戻ることと、啓達も王城に連れていくことを告げた。
啓達は宿を引き払う都合もあったので、後からすぐにキャリアで王城を訪れることを申し入れ、その了承を得た。
啓達はすぐに準備を済ませて、キャリアで王城へと向かった。
王城の敷地内にキャリアで乗り込んだ啓達は、キャリアを停車場に置いて王城内へと入った。啓は連日の訪問となったが、ミトラは初めての、サリーは懐かしの城に足を踏み入れたためか、二人とも心なしか嬉しそうに見えた。
啓達は案内の兵士に連れられ、豪華な客室へと案内された。そこは王の執務室の隣にある、極めて特別な来賓を迎えるための部屋だと説明され、啓とミトラは恐縮しまくった。
客室で啓が固くなっていると、王がやってきて、テーブルの上に古びた紙の束をそっと置いた。紐で綴られた幾枚の紙は、所々変色と腐食で傷んでいた。
「それが手記だ。他の遺物もこの部屋に持ってくるよう手配しているので、好きなだけ確認するといいだろう」
「ありがとうございます、陛下」
「儂は隣の執務室にいる。用事が済んだら来ると良い」
王が退出した後、啓は手記の表紙に目を落とした。そこにはアルファベットで、こう書かれていた。
『生まれ変わった私』
王様が礼拝堂に先回りしてました。
次回、手記を読みます。
若干多忙で体調崩し気味ですが頑張ります。
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