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035 決闘に負けて

035 試合に負けて


 メリオールは自らバルダーの操縦席から這い出して、地面の上に転げ落ちた。啓はメリオールが痙攣しながら嗚咽している姿を見た後、審判役のフィニアスを探した。


 そのフィニアスは、右手は決闘終了の合図を、左手は口元を押さえながら、メリオールの方に向かって走っていた。


「やっと終わった……」


 啓はぐったりしながら、決闘が終わったことに安堵の言葉を漏らした。啓は自分のバルダーを起こして、真っ先に搭乗口を開いた。酸欠気味だった啓は、勢いよく空気を吸った。


「はあ、空気がおいし……ゲホッガホッ!……ミュウ、すまん、匂いをゲホッ!」


 酸欠から解放された啓は、久々の新鮮な空気を肺一杯に味わうつもりだったのだが、まだ周囲にはスカンク砲の余波が残っていた。啓はそれを思いっきり吸い込んでしまった。


「ご主人、少しお待ちください。ミュウにスカンク砲の効果を解除させます」


 バル子は啓の指示を代弁して、ミュウに指示を送った。すると程なく、周囲からスカンク砲の匂いが消えていった。


 ミュウは能力でスカンクの刺激臭を作り出すことだけではなく、消し去ることもできた。そのことを知っていた啓は、先にスカンク砲の効果を消してから搭乗口を開けるべきだったのだが、酸欠でグロッキーだった啓は、完全にそのことを忘れていた。


 周囲の空気が一瞬だけ煌めく。僅かな残り香だけを残して、周囲からスカンク砲の成分が掻き消えた。


「ご主人、もう大丈夫です。相変わらずご主人はあわてんぼさんですね」

「ああ……オレもまさにそう思ってるところだよ」


 ようやく美味しい空気を堪能できた啓は、この決闘の最大の功労者であるミュウを小部屋から解放した。啓の姿を見たミュウは、すぐさま啓に飛びついた。


「ミュッ!」

「ありがとう、ミュウ。無理をさせて本当にごめんな」


 啓はミュウを抱きしめ、労った。スカンク砲の効果が消えていなければ、小部屋で何発もスカンク砲を撃ったミュウの体の匂いは壮絶なものだったろう。それでも啓は構わず抱きしめただろうが。


 そんな啓とミュウの抱擁を、バル子が羨ましそうに見ていることに気づいた啓は、片手でバル子の頭を撫でた。


「バル子、チャコ。お前達もありがとう。みんな、オレの最高のパートナーだよ」


 バル子は喉を鳴らし、啓の頭の上ではチャコが唱うように啼き声を上げた。バル子もチャコも、啓に労われて心から喜んだ。


「さて。一応、メリオールの様子を見に行くか」


 新鮮な空気と、動物達の成分を堪能した啓は、バルダーを降りてメリオールの元に歩いていった。



 気絶からすぐに復活したメリオールは、地べたに大の字に寝転がって放心していた。既に悪臭からは解放されているが、目の端と鼻の下と口元からは、何かが流れたような跡がついていた。


(俺が、平民に負けた……)


 メリオールにとって、それは人生最大の屈辱だった。約30倍の戦力でたったひとりの平民をなぶり殺すはずが、結果は完敗だった。相手に奇策を使われたとはいえ、一騎打ちでもメリオールは敗れた。メリオールのプライドはズタズタになっていた。


(平民が……平民ごときが……)


 メリオールの心に再び怒りが湧き起こる。その、ある意味最悪なタイミングで、啓はメリオールの元に向かって歩いていた。啓の姿を視界の端で捉えたメリオールは、怒りを瞬間で沸騰させた。


「この平民があっ!」


 反射的に上半身を起こしたメリオールは、啓に向かって女神の奇跡を行使した。メリオールの女神の奇跡は、対象物に物理的な力を加えることだ。

 額に衝撃を受けた啓は、軽くよろけて足を止めた。まだ距離が遠かったために威力は低かったが、メリオールには十分だった。


 メリオールは立ち上がり、腰から短剣を抜いて啓に向かって駆けた。メリオールは走りながらも、女神の奇跡を行使して、啓の体を何度も揺らした。女神の奇跡の連続使用は、自分の体にも大きな負担がかかる。しかし、メリオールは負担など顧みず、怒りに身を任せて力を使った。


 あと少しで剣の射程距離、というところで、メリオールは啓が手を振る動作をしたのを見た。メリオールは、啓が何かを仕掛けてくる気だと感じたが、それでも足を止めるつもりは無かった。たとえ女神の奇跡を使ってきたとしても、その前に仕留める、あるいは差し違えてもこの平民だけは殺す。メリオールの頭の中はそれだけだった。


 メリオールは再び女神の奇跡を行使して、啓の頭を揺らした。連続で奇跡を発動しているせいで、その威力は格段に落ちている。しかし、啓の目をメリオールから一瞬逸らすには十分な威力だった。その隙に啓を射程に収めたメリオールは、啓を斬り捨てようと剣を上段に振った。

 同時に、メリオールは顔に違和感を覚えた。


(痛ッ!)


 あとは振り下ろすだけだったメリオールの手は、突如発生した頬の激痛で一瞬止まった。だが、怒りで高揚した心の昂りは、たかが一発の痛みぐらいで止まることはない。

 しかし、二発、三発、四発と壮絶な激痛が連続すれば、それは意思と関係なく、脊髄反射で身を守ろうとする。

 かくして、メリオールは攻撃するどころではなくなった。


「痛い!痛い!!痛ええええあああああ!!」


 短剣を放り投げ、メリオールは顔や手を押さえてのたうち回った。メリオールの頬と鼻、そして手の甲とおでこに大きな腫れができていた。


「決闘はもう終わっていたのに、馬鹿な真似をするからだよ……ありがとう、蜂姫隊」


 モンちゃんズ改め、蜂姫隊と改名した4匹のモンスズメバチの攻撃部隊に、啓はお礼を言った。4匹のモンスズメバチは、啓の周りをクルクルと周り、喜びを表現していた。


 啓は決闘前に、サリーとそのパートナーである猫のカンティークに依頼して、啓の自宅から蜂姫隊を連れてきてもらっていた。もっとも、啓は決闘中に蜂姫隊を使うつもりはなかったので、あくまで念のためではあったが。


 なお、改名にあたっては、啓がバル子経由でモンスズメバチ達に、様々な名前の候補や単語の意味を伝え、最終的にモンスズメバチ達が自身で選んだものだ。モンスズメバチ達は、啓のことを本心から慕っているものの、ネーミングセンスだけは今でもナンセンスだと思っているし、実際にその通りだった。


 そんなわけで、啓の合図と共にメリオールに襲いかかった蜂姫隊は、容赦なくメリオールの顔と、剣を握っている手を刺したのだった。


 激痛に苦しみ、悶えるメリオールに冷ややかな視線を送っていた啓は、足元でミュウが訴えかけていることに気づいた。バル子からミュウの意思を伝え聞いた啓は、少し苦い顔をしながら、小さく頷いた。


 啓から許可を得たミュウは、トコトコとメリオールに近づくと「ミュッ!」といつもより低く鳴いた。そしてメリオールの顔付近で後ろを向き、尻尾をピッと上げた。


「痛っ!クソッ!あ?なんだ、この獣は?俺は今……ウオエッ!ゴアアア!」


 ミュウはほんの軽く、だが直に、スカンク砲をメリオールの顔にお見舞いした。蜂に刺された痛みに加え、スカンクの刺激臭、そして刺された傷に染み込む刺激物質が、再びメリオールの意識を刈り取る寸前まで追い込んだ。いっそ気絶した方がメリオールのためだったかもしれない。しかし、啓はそれを許さなかった。


 ケイは周囲に漂う刺激臭に構うことなく、メリオールの胸ぐらを掴み、上半身を引きずり起こした。


「おい、お前……オレは今猛烈に怒っているんだ。何故、オレが怒っているか分かるか?分かるよな?」

「ひっ……はっ……」


 メリオールはもちろん、その怒りを理解しているつもりだった。決闘が終わったにも関わらず、啓を攻撃したことに怒っているのだと。

 だが、事実は少し違っていた。


「この決闘で、ミュウにどれだけ負担をかけることになったか、それを分かっていたのにミュウに命令しなきゃならなかった、そんなオレの苦悩がわかるか?本来は自衛のための奥の手なのに、それを攻撃に使わせるなんて……」


 啓が怒っていたのは、啓の愛してやまない動物達に、無理をさせたことに対する怒りだった。爆発させたのは動物愛だった。半分以上は自分自身に向けた怒りではあったが。


 しかし、一方のメリオールは、ミュウが何なのか、そのミュウとやらに何を強いたのか分からなかった。そのため、啓の熱弁に心から同意することができず、ただ黙って聞く他なかった。


「そもそもオレは、お前に一騎打ちを挑むつもりだった。それなのにお前は、寄ってたかってこんな集団でかかってきやがって。お前は貴族ってやつなんだろう?そんなことをして恥ずかしくないのか!」


 それを聞いたメリオールは『いや、それは決闘のルール通りだし、最初にルールを確認して意を唱えなかったお前のせいだろう』と思ったが、今反論するのは危険と感じ、口には出さなかった。


「だからオレも渋々、この戦い方を選んだんだ。こんなことをミュウにさせてしまった責任の半分はお前にもある。だから謝れ……お前もミュウに謝れ!」

「……ミュウ、さん……ごべん、なさい……」


 啓の迫力に圧倒されたメリオールは、腫れが一層酷くなって喋りにくくなった唇を必死に動かし、啓の命令通りに謝罪した。

 啓も動物のことになると頭に血が上る性分であり、啓の言い分はほぼ言い掛かりに近いものではあったが、啓にその自覚はなかった。


 啓はまだ説教を続けるつもりだったが、ここでケイに横槍が(メリオールにとっては救世主が)現れた。


「ケイ、すまないが、そのへんで隊長を許してやってくれないだろうか」

「フィニアスさん」


 ようやく到着したフィニアスが、啓に声を掛けた。フィニアスは、隊長の酷い顔を見て軽く引きながらも、話を続けた。


「来る途中で一部始終は見ていた。だからケイが一方的に隊長を攻撃したのではないことは分かっている。だが決闘は終わったんだ。隊長が個人的な戦いを仕掛けたことについては後で協議の上ゴボッ!……それにしてもひどい匂いだな。さっき、突然周囲から匂いが消えたので安心していたのだが、ここはまだ匂いが残っているようだな」

「あっ!すぐに消すから、ちょっと待っててくれ」


 啓はミュウの背中をポンと叩き、バル子にも目で合図する。意図を理解したミュウは、周囲から匂いの成分を消失させた。


「おお、匂いが消えた……やはりこの匂いはケイがやったことのか?」

「ええ、まあ……やむなくだけど」

「そうか……では、仕方ないが、この決闘。ケイの反則負けだ」

「ええっ!?」


 フィニアスは申し訳なさそうな顔で、啓の負けを宣告した。


「ケイ。毒のようなものを使うのは反則なんだよ」

「いや、でもこれが反則だなんて聞いてないし……」

「まさか毒を使うとは思っていなかったので説明はしなかったのだ。その点はこちらの落ち度ではあるが……そうでなくとも、この効果範囲は広すぎる。飛び道具が禁止であることに照らし合わせれば、これは流石にやりすぎだと思う」

「そんな……」


 フィニアスはそう話をしながら、腰の袋から小瓶を取り出し、メリオールの顔に中の液体をかけていた。すると、蜂に刺された腫れが若干引いていくように見えた。完治はしていないようだが、メリオールの表情はさっきよりもマシになっていることから、啓はフィニアスが何かしらの治癒の薬を与えたのだと思った。

 フィニアスは空になった瓶を腰の袋にしまうと、話を続けた。


「決闘はケイの負けとするが、先ほど隊長が決闘後にケイに向かって攻撃したことは、決闘に対して礼を欠く行為だった。そこで提案だが、決闘の勝利者は我が機動保安部隊とするが、勝利者に与えられる報酬はケイのものとする、というのはどうだろうか」

「あっ……」


 啓はフィニアスの言わんとすることを理解した。啓がただ敗北となってしまえば、本来の目的であるザックスの解放ができないばかりか、サリーとミトラをメリオールに献上しなければならない。

 二人が預かり知らぬところで決められてしまった追加条件なので、当然ながらサリー達は猛烈に抗議するだろうが、決闘に負けたとあっては、強く出にくい。

 しかし、啓は別に勝利の栄誉が欲しいわけではない。ザックス親子が解放されればそれで良いのだ。フィニアスは『隊長に栄誉だけくれてやれ』と言っているのだ。


 だが、それを理解していない馬鹿は、決闘の勝者としての権利を主張した。


「ふはっ……ははっ……ざまあないな、平民。聞いての通りだ。俺が勝ったんだ。礼を欠く行為?そんなもの、知ったことが!犯罪者は全員連れていくし、女は貰う!勝ったのは俺だ。文句は言わさん!」

「隊長……」


 フィニアスは頭に手を当て、首を横に振った。腫れと痛みが少しひいて、気が大きくなったメリオールは、再び啓をみくびるような態度を取った。


 啓としては、せっかく落とし所を作ってくれたフィニアスの意見を採用したいと思っていたので、「本意ではないが」と付け加えた上で、メリオールを脅迫することにした。


「分かったよ隊長さん。隊長さんがそう言うならば仕方がない」

「ふん。平民は平民らしくそうやって従えばいいんだ。おい、さっさとあの女共を呼べ。今夜はじっくりベッドの上で、俺の介抱をしてもらうとしよう」

「だから、オレもあんたに礼を欠く行為をしようと思う」

「はあ?」


 啓の無礼な言葉を聞き、メリオールは啓を睨みつけた。啓はその視線を正面から受け止めた。


「いや、オレも隊長さんに同意見だ。『そんなもの、知ったことか』だろ?」

「平民……一体何を……」

「オレはこれからも一生、お前を執拗に追いかけ回す。例えばこの鳥は、素早い動きで飛び、闇夜であっても、お前の目を正確に抉り取ることができる」

「……おい」


 メリオールの顔に怒りの表情が浮かぶ。


「この鳥が怖いのならば、家の中に引き篭もればいい。だが、もしもお前が家の中に引き篭もるのならば、お前の家の周りには、毎日ミュウが素晴らしい匂いをお届けすることになるだろう。お前が二度も喰らっているあの匂いだ。さすがにまだ忘れてないよな?この匂いが毎日、お前の家の周囲から漂うことになる。きっとご近所さんにも噂の、とても個性的な家になるんじゃないかな?」

「……おい」


 メリオールの表情から怒りが消え、代わりに動揺が走る。


「ちなみにお前の顔を刺したこの蜂という虫は、少しの隙間があれば家の中でも、バルダーの中でも侵入できる。お前の顔は覚えたそうだから、いつでも刺しにいけるそうだ」

「……」

「ちなみに、蜂に何度も刺されるとアナフィラキシーショックというアレルギー症状が現れることがある。一度発現すると、動悸やめまい、そして呼吸困難を起こした後、心臓が停止して死に……」

「待て……いや、待ってくれ、ください!」


 メリオールの顔は焦りに変わっていた。そして何か言いたそうに口を開いたり閉じたりしている。その顔を見て啓は、こちらから助け舟を出すことにした。


「あー、オレは別に勝利の名誉は必要じゃない。貴族にとっては矜持に関わることだろうが、平民のオレには必要ないものだ。平民はそんなものより、実質的なものの方が嬉しい。だが、貴族は名誉こそが大事なんじゃないのか?」

「そ、そうだ、その通りだ!俺は貴族で、貴族は名誉を重んじる。勝利の栄誉だけで俺は十分なことを思い出したぞ!」

(よし、食いついた!)


 啓は、ぶら下げた釣り針にメリオールが掛かったことを感じ取った。そのまま啓は畳み掛ける。


「それに、負けた相手に、本来勝たなければ与えられないはずの報酬を与えた情の深い貴族がいる……なんて話があれば、それはきっと美談になると思うし、そんな素晴らしい貴族に報復をしようなどと考える奴などいるはずがないと思うんだが、隊長さんはどう思う?」

「ああ、同感だ。同感だとも!」

「では、隊長さん。改めて相談だが……」


 こうして啓は、決闘には負けたものの、ザックス親子の開放と、サリーとミトラの身柄引渡し拒否を勝ち取った。



 こうして決闘は終わり、王都の機動保安部隊はザックス親子を解放した後、街を襲撃した賊達の身柄とユスティールの至宝(と思わせている女神像)を持って、王都へと帰還していった。


 フィニアスは帰り際、啓に「また会おう」と言ったが、王都に行く用事もない啓がフィニアスに会う機会は少ないだろう。啓は小声で「女神の奇跡の練習、しっかりやれよ」と言い、フィニアスと別れた。


 それから啓は市長にいろいろ迷惑をかけたことについて再び謝罪してから、サリーとミトラと共に市場を後にした。


「……で、ケイは決闘には負けちゃったけど、勝負には勝ったってことなのね」

「ああ、結果としては最高の出来だと思うよ。バルダーは少し壊れたけどね」

「ま、そのぐらいはいいわよ。あのお貴族様がヘコヘコして帰って行ったのを見れて、あたしは胸がスッとしたし」

「決闘中、ずっと臭かったこと以外は、私も同感だ」

「サリー、それはその……悪かった」

「ははっ、冗談だよ。ミュウちゃんが頑張ってくれたお陰でケイは勝てたんだものな。えらいぞ、ミュウちゃん」

「ミュッ!」


 サリーはミュウを抱っこして歩いている。初めて見たセジロスカンクに触れ、サリーはご満悦のようだ。


「サリー、あまりミュウを構ってばかりいると、カンティークがヤキモチを焼くぞ」

「おや、ケイもヤキモチを焼いてくれるのか?」

「えっと……」

「冗談だよ。さ、ご主人の元へお帰り」


 サリーからミュウを受け取った啓は、サリーに別れの挨拶をした。この先は、サリーの家とガドウェル工房の方角が違うのだ。


 挨拶を終えた啓は、ガドウェル工房に向けて歩き出そうとした。しかし、啓は足を止めた。ミトラが右手で、啓の腕を掴んでいたからだ。


「ミトラ?」

「ミトラ?」


 同じ言葉がサリーの口からも出た。ミトラは左手で、サリーの腕も掴んでいたのだ。


「あの、ミトラ。帰るんじゃ……」

「お二人とも、大事なことをお忘れではございませんか?」

「忘れてるって……あ」


 啓もサリーも同時に思い出した。それは『啓とサリーがミトラに秘密にしていることをちゃんと話す』と言った約束のことだ。


「いや、ミトラ……別に忘れていたわけじゃないよ?でも、それ……今すぐにか?」

「ええ。今、すぐに、お願い」


 結局、啓とサリーはミトラに押し切られ、そのまま皆でサリーの家に行くこととなった。



 某日、某所にて。


「……それで、ユスティールの至宝は持ち出されたのだな?」

「はっ。王都に運ばれた模様です……襲撃して回収しますか?」

「いや、構わん。それよりグレース。王都の小隊を一人で倒したのは平民だと言ったな?」

「ええ。とても面白い子でしたよ。名前は、確か……そう。ケイという名です。女神の奇跡を使っていたようですが、どんな奇跡かは判別できませんでした」

「ふむ……平民であれば『堕ち子』かもしれんな……グレース、監視を続けておけ」

「はっ」

勝負には勝ちました。

次回、ミトラもおねだりします。


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