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032 決闘 その1

決闘 その1


 16時40分。啓は市場の試運転場に来ていた。

 決闘開始は17時。メリオールと、彼が率いる機動保安部隊はまだ試運転場に姿を現していない。


 啓はひとまず、以前、ザックスと模擬戦をした時と同じようにバルダーを試合開始位置に配置した後、バルダーを降りて市長のいる閲覧席へ向かった。閲覧席にはサリーとミトラもいる。そして閲覧席から少し離れたところには、警備隊長のレナと、数名の警備隊員がいた。


 市長達のいる閲覧席は、運動会の時に司会進行役や来賓が来る場所のような、試運転場の場内にターフテントが張られた特別観覧席だ。

 なお、一般の観戦者向けには、試運転場の外側を囲うようにぐるっと設置された段々の閲覧席がある。なお、今回は一般公開をしていないため、外側の閲覧席には誰もいない。

 観覧席で、啓はまず市長に挨拶し、頭を下げた。


「市長、また面倒事を起こしてしまい、申し訳ありません」

「なに、儂は構わんよ。それよりケイ。儂はお前のほうが心配だ……本当に一人でやるのか?」


 事情を知っている市長は、今からでもバルダーごと人を出してくれると言ったが、啓は気持ちだけで十分です、と断った。


「成り行き上、仕方がない面もあります。でもオレ一人で戦うことが、後々禍根を残さないためにも大事なことだと思っています」

「勝算はあるのか?」

「ええ、一応……不本意ですが」


 啓が市長に言った言葉は嘘ではない。最初にその作戦を思いついた時は、それがとても良いアイデアだと思い、気分も高揚していた。だが啓は、決闘の開始時間が近づけば近づくほど、自己嫌悪に陥っていた。啓は少し暗い表情のまま、市長に忠告した。


「あの、市長。もしかしたら試験場が、いや市場が大変なことになるかも知れません。だから……」

「構わんよ」

「は?」

「構わん。存分にやれ。多少壊れたって構わん。後始末は儂がやるから、ケイは遠慮せずにあのお貴族様を張り倒してこい」


 市長もメリオールに含むところがあるのだろうかと邪推する啓だったが、市長にお墨付きをもらえたことにひとまず安堵した。


「ありがとうございます、市長。ただ、本当に危ないので……できればこんな近くではなく、せめてもっと遠くに離れたほうが良いと思います。サリーとミトラもだ」

「私が二人を守る。安心して戦え……と言いたいところだが、そうだな。外側にある閲覧席の、後ろの方に移動するとしよう。ケイもそのほうが、私らを気にすることなく戦える。そうだろう?」

「ああ。そうしてくれると助かる」


 啓は笑顔を作ってみせたが、あまり元気のない啓の様子に気がついたサリーは、啓に少し手厳しいことを言った。


「ケイ……君は先日の襲撃事件の時、レナを捕虜にした賊を殺せなかった」

「サリー?急に何の話を?」

「君はレナの安全が確保できた後であの賊と戦い、賊のバルダーの左腕を破壊して、市長を助けるための時間を稼いだ。そうだったな?」

「・・ああ。そうだ」

「なぜ操縦席を直接狙わなかった?」

「……」


 啓はすぐに答えなかった。サリーには、あの時に使った武器のことを話してある。その武器は、チャコ自身を武器として具現化した投槍で、威力も貫通力も命中精度も高いものだった。

 サリーの言う通り、操縦席の賊を直接狙えば、賊は死に、敵のバルダーは完全に停止しただろう。そしてその後、啓がその賊に再び攻撃されることもなかったはずだ。


 サリーも薄々感づいているようだが、啓が操縦席を狙わなかった、いや、狙えなかった理由は、啓自身が一番よく分かっていた。


「人を直接殺すことに抵抗があったから、だと思う」

「……やはりそうか」


 サリーは小さい溜息を吐いた。


「いいかい、ケイ。いざという時には、相手を殺すことを躊躇ってはいけない。今回の決闘もそうだ。君は多勢に無勢だ。相手の隊長はケイを殺すと明言している。だったら殺られる前に殺るしかない。そうだろう?」

「ああ、頭では分かっているよ」


 その程度のことは啓も理解しているが、当然ながら啓は人殺しの経験はない。こちらの世界での人の命の価値はいざ知らず、日本人として育った啓にとって、人殺しの重さは計り知れないものがある。

 甘いと言われても仕方がないが、啓は人を『狙って』殺すようなことはなるべく避けて通りたいと思っている。先日の賊との戦闘で、啓の攻撃によって結果的に死んでしまった人がいるかもしれないが、それはあくまで結果であって、殺すつもりで攻撃したのではない。


 そんなことが偽善であることは分かっているが、そこがせめてもの啓の中での線引きだった。


「サリーがオレを心配して、そう忠告してくれていることは分かってるよ。ありがとう」

「まあ、本当に分かっているなら、それでいいのだが……」

「大丈夫。不本意だけど、今回は操縦席を狙うから」

「そうか……とにかく、勝ってくれ」


 啓は今回、本気で操縦席の人間を狙うつもりでいるので、嘘は吐いていない。ただし、『殺すつもりで狙うかどうか』についてはあえて言わなかった。

 それでも啓の回答に納得してくれたのか、サリーが啓に握手を求めて右手を出す。啓もそれに応えて右手を出し、サリーの手を握る。その手の上に、そっとミトラが手を乗せた。


「頑張ってね、ケイ。あたしも信じてるからね」

「ああ、任せろ」

「ヘイストも来れれば良かったんだけどね」

「いいさ。帰ったら、ヘイストのおかげで勝てたと言ってやろう」

「そうだね。整備も改造もばっちり仕上げてくれたしね!」


 そして程なく、メリオール率いる、機動保安部隊が試運転場に姿を現した。



 地響きを立てながら、輸送車からバルダーが次々と降ろされていく。その様子を、啓は自分のバルダーの横で見ていた。


 白を基調としたカラーリングのオルリック王国の機動保安部隊のバルダーは、全体的に重厚感のある機体だ。

 両脚は運搬用のバルダーのように太く、さらに厚めの装甲で覆われているが、関節は柔軟に動くようで機動性は低くないように見える。

 胴体はやや縦長で、他のバルダーと同様に中央が操縦席となっていて、上部には頭部のようにも見える意匠が施されている。


 両腕は脚と違い、やや細めではあるがリーチが長く、真っ直ぐ下ろせば地面に手の先がつきそうなほどだ。その右腕には片側に薄い刃の付いた片手斧のような武器が握られ、左腕には前腕にあたる位置に方形の盾が装着されていた。保安部隊という名前の通り、犯罪者の捕縛や外敵からの防衛に特化したバルダーだと啓は思った。


 啓のバルダーも戦闘用だが、保安部隊のバルダーとは対象的に、攻撃力と機動力を重視したオフェンス向きのバルダーだ。同じような性能では数の暴力に押し切られるが、性能や性質が異なれば戦いようもある。啓はそこに勝機があると考えた。


 最後に現れたバルダーはメリオールの隊長機だった。基本的な形状は他のバルダーと同じだが、武器は異なっている。持っている武器は先端に鉄球の付いた棒、いわゆるメイスに近いものだ。そして他のバルダーと決定的に違う点は……


「バル子。あれって、ツノだよな?」

「ツノですね、ご主人」

「やっぱり隊長機ってのは、どこの世界でもツノがあるものなのか?」

「どの世界の話ですか?」


 メリオールの機体は、隊長機であることを主張するかのように、頭部に一本角が付いていた。


「まあ、オレのバルダーも赤いし、人のことは言えないか」

「ご主人が何を仰っているのか分かりませんが、若さゆえの過ちというものではないですか?」

「バル子……お前、本当は分かってて言ってるだろう?」


 そういえば、某ロボット漫画に出てくる隊長機の角には高性能の通信機能が備わっている設定があると、アニメに詳しい友人から聞いたことを思い出した。

 もしもメリオールのバルダーにも同じような機能が備わっているとすれば、それが自己顕示欲の塊だと決めつけるのは尚早かもしれないと啓は思い直した。


 そんなどうでも良いことを考えていると、バルダーの配置を終えたメリオールと、副隊長のフィニアスが歩いて啓の所にやってきた。


「逃げずに来たことだけは褒めてやろう」

「オレのほうが先に来ているんだが?」

「口の減らんやつだな……おい、ルーベン」


 メリオールに促されたフィニアスは、決闘のルールについて説明した。啓は既にフィニアスからルールを聞いていたが、内容が事前に聞いていたものと概ね相違無いことを改めて確認した。


 フィニアスが説明を終えた後、啓はメリオールに念を押した。


「オレが勝ったらザックス親子を解放すること。必ず守れよ」

「ああ、解放してやる。ああ、そういえば俺が勝った時の条件を考えていなかったな。どうせお前はここで死ぬんだし、どうしたものか……そうだ」


 そしてメリオールは観覧席のサリーとミトラを指差した。


「あの女たちを貰おう。部隊全員で可愛がって、使い潰して、捨ててやる」

「はあ?ふざけるなよ。後出しで何言ってんだ?」

「口の利き方に気をつけろよ、平民」

「メリオール隊長!」


 フィニアスの静止と、啓の頭が揺らぐのはほとんど同時だった。啓は突然、額に拳で殴られたような衝撃を受け、軽くよろけた。


「このっ……おっ……」

「メリオール隊長、決闘の前に手を出すのは……」

「あ?軽く頭を撫でてやっただけだ。そうだろう?」


 メリオールは下卑た笑みを浮かべて啓を見ていた。啓は前にもメリオールの念動力攻撃を一度食らっているとはいえ、いきなりやってくる衝撃に対して、怒りよりも驚きのほうが上回り、すぐに言葉を発することができなかった。

 幸い、決闘に支障が出るようなダメージは受けていなかったが。啓は額を押さえながらメリオールを睨んだ。メリオールは悪びれる様子もなく、一方的に要求を押し付けた。


「俺が勝てば女達をいただく。分かったな」

「……本人達の承諾も得ないで、お前は勝手に……」

「平民の承諾など不要だ」


 メリオールは決定とばかりに、フィニアスに決闘を始めるよう指示した。フィニアスは最後に「自分が審判を務めます」と言い、機動保安部隊のバルダーが並んでいる場所ではなく、試運転場の中央に引かれていた線に沿って、試運転場の側面へと向かっていった。

 メリオールも啓に背を向け、自分の部隊へ戻っていく。


「ご主人……」

「バル子、オレなら大丈夫だよ。ちょっと驚いただけだ。だけど……」


 啓はバル子の頬を指で撫でる。バル子は気持ちよさそうに、啓の指に身を委ねた。


「不本意だなんて言ってられないな。皆には悪いけど、オレに力を貸してくれ」

「ご主人の思いのままに」



 バルダーの操縦席で決闘開始の準備を待つ啓は、相手の布陣を眺めていた。10機の白いバルダーが横一列に等間隔で並んでいる。すぐ後ろにも同じように10機のバルダーが並び、その後ろには、メリオールの隊長機を囲うように、8機のバルダーが陣取っている。


「まるで将棋だな。前を飛び越える桂馬と横から攻めるための飛車が欲しいところだな」


 啓は相手の布陣を将棋に例えたが、競艇選手は将棋好きがわりと多い。競艇選手はレースの開催期間中、レース場付近にある宿舎で生活するが、その間は外部との接触が一切禁じられる。もちろんスマホも使えない。


 外界と完全に隔離され、閉ざされた中で得られる娯楽は限られる。そのため、囲碁や将棋で遊ぶ選手が必然的に増えるのだ。そんなわけで啓も選手時代は宿舎でよく将棋をしていた。その腕前は下手の横好き以上のものではないが。


 あえて将棋に例えるならば、この戦いは同じ条件で戦う平手の将棋ではない。啓は王将以外の駒をすべて落とした状態で、万全の相手と戦わなければならないのだ。


 相手の駒達は整然と並び、万全の体制で啓を迎え撃つ準備を整えていた。


「相手は軍の一部隊。統率が取れていて当たり前か」

「ご主人、どうしますか?」

「まずはこちらも武器だ。チャコ、バル子。短剣と盾を頼む」

「承知しました」

「ピュイッ」


 すると、啓のバルダーの左上腕部に円形の大盾が出現した。夕陽を反射して煌めく盾は、市場の前で啓がメリオールの剣を防いだ時と同じ形状の盾だが、サイズはバルダーに合わせて大きくなっている。


 一方、右手には刀身の短い剣が出現していた。こちらはチャコの力で具現化した短剣だ。バル子よりも魔硝石のエネルギー保有量が小さいチャコは、バル子のように大きな武具の具現化はできない。今はまだ短剣サイズが具現化できる限界の大きさなのだ。


 なお、チャコ自身が変化すれば槍ほどの大きさにもなれるが、チャコ自身が傷つく恐れがあるため、啓としては本当に本当の最後の手段だと考えている。


 啓が装備を整え終えたところで、17時の鐘が鳴った。それと同時に、フィニアスが決闘開始の合図を出した。メリオールの部隊の最前列がゆっくりと動き出す。それを見た啓は、早くも呼吸が苦しくなる錯覚に陥った。啓は操縦桿を握る手に力を込めた。


「こちらも長くは戦えない。片っ端から片付けて、さっさと隊長機に辿り着こう!」



『第一分隊、前へ!』


 メリオールが拡声器で号令をかけると、最前列に並ぶ10機のバルダーが動き始める。手斧を構え、啓の赤いバルダーを包囲するように前線を広げながら前進していく。その動きを満足そうに見ながら、メリオールは赤いバルダーが部下達に捕まるのを待った。


 機動保安部隊のバルダーは、拡声器を使わなくてもバルダーに備わっている伝声機で相互通話を行うことが可能だが、メリオールは普段から伝声機を使っていない。メリオールは部下の言葉など聞く気がなく、最初に伝えた作戦と、その都度メリオールが出す指示に従っていれば良いと考えている。


そして指示通りに動かなかったり、期待通りの成果を出せなかった場合はその部下を罰する。悪いのは部下であり、自分ではない。メリオールはそう考えていた。


 啓のバルダーは第一分隊の動きに呼応し、包囲されないように左手方面に走った。その動きは速く、一対一での単純な追いかけっこでは、機動保安部隊のバルダーでは追いつけないほどの差があった。


 だが、一対多数ではそうもいかない。集団戦闘に慣れているバルダー隊は、啓の動きを読み、包囲を狭めていく。接触するのは時間の問題と思われた。


「子供が箱庭に入れた虫をなぶり殺すのと同じだな。これなら第二分隊の出番はないかもしれん」


 試運転場の約半分を使って、起動保安部隊のバルダーから逃げ回る啓をメリオールは嘲笑した。啓が足を止めて戦おうとしない様子にも張り合いの無さを感じていた。

 もっとも、分隊の誰かが啓のバルダーと交戦状態になった場合、その隙に他のバルダーが数機がかりで体を張って啓のバルダーを抑え込むように命じてある。


 味方に多少の犠牲が出たとしてもメリオールの知ったことではない。赤いバルダーに取り付き、四肢を押さえ、あるいは破壊して身動きが取れなくなった所でメリオールが止めを刺しにいく。

 メリオールにとって、この決闘はただの公開処刑だった。


 果たして、最初のコンタクトがついに訪れた。1機のバルダーが啓の進路を塞いだ。両腕を広げて掴みかかろうとするバルダーに、啓は避けることなく組み付いた。


『今だ!後ろからも取り押さえろ!』


 楽しげなメリオールの声が試運転場に響く。だが、メリオールがわざわざ言わずとも、その程度のことは隊員達も分かっているし、そうしなければ後で隊長から『指導』を食らうことになる。


 すぐに啓のバルダーに向かって分隊のバルダーが殺到した。啓のバルダーに組み付いている隊員が粘っている間に包囲網は完成すると全員が思っていた……そうなるはずだった。


 ところが啓は、バルダーを軽くバックステップさせた後、啓を抑え込んでいた隊員のバルダーの横をすり抜けて逃げていった。啓と組み合っていたそのバルダーは、動きを止めたままだ。


『何をしている!この無能が!』


 メリオールが拡声器を使って叫ぶ。しかし動かなくなったバルダーは相変わらずその場に停止したままだ。

 操縦席が破壊され、隊員が直接殺された様子もない。第一分隊の隊員達は、仲間の不調を気にかけながらも、再び啓を追い始めた。


 その後、再び啓にピンチが訪れる。啓は壁際で二機のバルダーに挟み撃ちにされてしまった。逃げ場がなくなった啓に、分隊のバルダーは手斧で攻撃を仕掛けた。

 啓は短剣と盾で攻撃を受け止めたものの、そのまま膠着状態に陥ると思われた。


 しかしまたしても二機のバルダーは動きを止めた。その隙に啓は短剣で保安部隊のバルダーの足関節を破壊し、その場を離脱した。その後も啓に肉薄したバルダーは何故か動きを止めていき、いつの間にか、第一分隊の半数が行動不能に陥っていた。


『この、馬鹿共め!いつまで遊んでいるつもりだ!』


 メリオールの怒りは頂点に達していた。いまいましい真っ赤なバルダーを捕まえたと思った矢先に、部下の失態で取り逃がし続ける様子に、メリオールの苛立ちは収まらなかった。


『第二分隊も行け!行ってあの生意気な赤ネズミを俺の前に連れてこい!』


 メリオールの叫声とも怒号ともつかない指示で、二列目に陣取っていた第二分隊も動き出す。その声は啓にも聞こえていた。


「アカネズミは、どちらかと言えば茶色っぽいんだがなあ……」

「ご主人、あれはそういうことを言っているのでは無いと思いますが」

「ああ、分かってるよ。とりあえずコツは分かってきた。この調子で無力化していこう。案の定、こっちもそろそろキツくなってきたし、あんまりあの子に負担をかけたくないしな」

「ご心配なく。ご主人の役に立って喜んでいますよ。終わったらバル子と一緒に褒めてあげてくださいね」

「しれっと自分を混ぜるね……ああ、もちろん、全員褒めるさ。皆オレの大事なパートナーだからな」


 啓は操縦席の上のほうに目を向けて「もう少しだけ、よろしくな」と声をかけた。



 啓の捕縛作業に合流した第二分隊だったが、そのうちの数機は、動きを停止した第一分隊のバルダーの様子を見に行った。そして操縦席の中の様子を見て驚愕し、慌てて隊長に向けて手を振った。メリオールもすぐにその様子に気がついた。


(何だ?なにか言いたいことがあるのか?)


 そこでようやくメリオールは伝声機の存在を思い出し、操作盤に手を伸ばした。伝声機は部下達との相互通信を実現するが、一度に全員の声が聞こえてこないように対象を選択することもできる。しかしメリオールは何も考えずに一斉通信を有効にした。直後、メリオールの耳は部下達の悲鳴と絶叫で鼓膜が破れそうになった。


「ゲホッ!ガハッ!ゲホオ!」

「目が、目が痛え!!!」

「オエエ、オエエエエエエ!」


 すぐにメリオールは伝声機を切ったが、耳はまだ馬鹿になったままだ。


「何だ今のは……一体、部下に何が起きているというのだ……」


 部下達の異常事態は、間違いなく啓が仕掛けたことだとメリオールは確信しているが、その攻撃の正体が分からないメリオールは、漠たる不安を感じ始めていた。


決闘が始まりました。

長くなったので分割です。


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よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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