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102 密談

 ウルガージェラール第三王子とその護衛騎士隊がユスティールに到着したのは、ミトラが目を覚ました日の夕方だった。


 到着したウルガー達を出迎えたのは、サリーとオルリック軍ユスティール方面防衛部隊隊長のマルク・テイラーだ。

 サリーとテイラーはウルガー達と一緒に夕食を取りつつ、ユスティールの現状を伝えた。その夕食後、サリーはウルガーに「関係者のみ」で会議を行いたいと打診した。


 翌日、まだ早朝と言える時間に、「関係者」はガドウェル工房の応接室に集まった。


「朝早くから、こんな狭くて汚い所にお呼び立てして、本当に申し訳ございません……」

「構わん。気にするな」


 ガドウェル工房にやってきたのは、ウルガー王子と近衛騎士団長のマルティン・テイラー、そして近衛騎士団員であり、マルティンの婚約者であるアーシャ・リーだ。


 三人を応接室に案内したミトラは、お茶を用意するために退出した。


 なお、ミトラは昨日目を覚ましたばかりだが、体のどこにも異常がなかったため、持て余した元気を工房の掃除で発散していた。


 応接室の中では、啓とバル子、サリー、シャトンが待っていた。

 サリーは椅子から立ち上がると、笑顔でウルガー達を迎え入れた。


「すまないな、ウルガー。市場の管理棟にある応接室のほうが広いし立派なのだが、市長が不在なので勝手に使うのも気が引けたのでな」

「姉上、そんな気を遣わないでください。私なら大丈夫です。ユスティールの市長には、私がユスティールに来る前に、避難先のエレンテールに使いを出しておきました。数日後には戻ってくることでしょう……ところで姉上、この工房は先程の?」


 ウルガーは扉の外に目を向けた。お茶を汲みに行ったミトラのことを言っているのだ。


「ああ、そうだ。ここはミトラの父が経営する工房で、私も懇意にしている。ただ、壁は薄いので大声は控えてほしい」

「分かりました、姉上」

「あ、あの……工房の周囲は、ネコ達が見張っていてくれているので、不審者が近づいたらすぐに分かります。だから、その……安心してください」


 ウルガーがこの国の王子であるという認識がようやく定着したシャトンは、緊張で言葉を噛みまくった。しかしウルガーは気にすること無く、王子様スマイルをシャトンに向け、王子様トーンで応えた。


「ありがとう、シャトン嬢。お陰で安心して密談ができる。配慮、痛み入る」

「いえ、そんな……」

「そう言ってくれると助かります、ウルガー王子」

「ケイ、ここはお前の家ではないだろう。何を偉そうに言っているのだ」

「なんかオレにだけ当たりが強くないですか!?」


 一同が笑う中、ミトラが人数分のお茶を持って戻ってきた。


 ミトラが着席すると、早速サリーが話を切り出した。


「ウルガーとその側近だけに来てもらったのは、もちろん、口外できない話のためだ。今後のために、マルティンとその奥方にも聞いてもらうが、決して口外しないでほしい」

「承知しました、サルバティエラ王女殿下。ただ、アーシャは婚約者であって、まだ私の妻ではないのですが……」

「ふふっ、どうせ時間の問題だろう?まあ、いい。では本題だが……」


 それは、ユスティールの至宝に関する話だった。

 サリーは全く事情を知らないマルティンとアーシャのために、改めてユスティールの至宝ついて説明をした。


 そしてサリーは、啓が王城に献上した女神像はユスティールの至宝ではなく、本当のユスティールの至宝は巨大な魔硝石であること、もしもその魔硝石を悪用されれば、一国を滅ぼすほどの力を秘めている可能性があること、そしてそれが何者かに奪われたことを告げた。


「……王城に運び込まれた女神像は、やはり偽物だったということですね」

「そうか、ウルガーも知らなかったのだな。だが、『やはり』というのは?」

「いえ……実はアイゼン兄上から、あれは偽物ではないかという話を、聞いたように思いまして……」


 ウルガーは確かに、そのような話をアイゼンベルナール第一王子から聞いていた。

 あれはどんな話だったか、ウルガーは記憶の引き出しを開けようとしたが、その前にマルティンの大声で邪魔された。


「ならば、急いで捜索しないと!」


 マルティンは椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。そしてマルティンはその勢いのまま応接室を出ていこうとしたが、そこは啓に止められた。


「落ち着いてください、マルティンさん」

「落ち着いてなどいられますか!奪ったのはアスラ軍に決まっています。すぐに追わないと……」

「オレもアスラ軍の仕業だと思っていますが、話はまだ終わっていません」

「話をしている場合ではないでしょう!もしもアスラ軍がその魔硝石を使って破壊兵器でも作り出したら、オルリック王国は滅んでしまうかも知れないのでしょう?」

「まあ、その可能性はありますが……」

「むしろ、ケイ殿はなぜそんな呑気にしていられるのですか!」

「まだ、奪われただけで、使われていません」

「奪われただけって……そもそも、ユスティールの至宝は、ケイ殿が茶屋に隠していたのでしょう?貴方は奪われた責任を感じていないのですか!」

「色々あって、回収する機会が無かったのは事実ですし、奪われたことは残念に思っています。ですが、悔やんではいません」


 啓は自分がまだ指名手配されている時に、一度カフェ・フェリテに赴いている。

 ただし、その時の主目的はフェリテを守るために残っていたシャトンを救出することであり、その後も瀕死となったシャトンの命を救うことを優先したため、至宝の回収はしなかった。

 だから啓は悔やんでいないと言ったのだが、啓も言われっぱなしで引き下がるつもりはなかった。


「あえて言わせてもらいますが、オレ達が国王殺しの犯人にされなければ、もっと早くユスティールに戻ることができました。そうすれば、至宝が奪われることは無かったでしょう」

「うっ……」


 痛いところをつかれたマルティンとウルガーは、啓から目を背けた。


「……指名手配の件は、既に撤回する旨を公示するよう、王都に使者を出している」


 事実上、姉を指名手配していたと知ったウルガーは、それはもう大急ぎで王城に使者を送ったらしいと、啓はサリーから聞いている。


「その点については感謝します、ウルガー殿下。では話を戻しますが、ユスティールの至宝は奪われてしまいましたが、奴らがそれを使うことはできないでしょう」

「何故だ?魔硝石など、魔動連結器を使えば誰でも簡単に使える。違うか?」

「普通はそうです。ですがユスティールの至宝と言われるあの巨大な魔硝石は、簡単には使えないように保護機能が備わっているのです。使うためには、正しい手順が必要なのです」

「え、そうなの?」


 声を上げたのはミトラだった。ミトラも魔硝石が盗まれたと啓から聞かされた時、すぐに悪用されることを懸念した一人だ。


「ミトラは覚えてないか?オレがあの巨大魔硝石について説明した時のことを」

「えっと……細かいことまでは覚えてない」

「あの魔硝石は、オルリックの建国王が、次にこの世界に転生して来た者のために残してくれたものだと。そして、その『使い方』も残してくれたって話だよ」

「あー、そう言えば、そんなことを言ってたような……」


 ミトラは必死に思い出そうと、顎に指をおいて天井を仰いだ。


「おい……おい、ちょっと待て、ケイ」


 ウルガーは眉間にシワを寄せ、こめかみを指でトントン叩いている。


「何でしょうか、殿下」

「何でしょうか、ではない。保護機能のついた魔硝石など、見たことも聞いたこともないぞ。おまけに建国王とか、この世界に来たとか、お前は一体何を……」

「ええ、実はこれから、その話をしようと思っていたところです」


 そう言うと啓は、小冊子を取り出してテーブルに置いた。それは、初代オルリック国王が遺したと言われる手記だった。


「ケイ、これは確か……」

「はい。建国王の遺した手記……というか、中身は日記のようなものです。すみません、王城から逃げる時に、どさくさで持ち出してしまいました」

「お前は勝手に……いや、そんなことより、ケイはこれが読めたのか?この手記に使われている文字は、我が国の研究者でも未だ解読できていないのだぞ?」

「ええ、まあ母国語というか、母星語と言いますか……とにかく読めます。オルリックの初代国王は、オレと同郷なんですよ」

「なんだと……」

「そして、この手記の中に、ユスティールの至宝の正しい使用方法も記されていました」


 そう言ってから、啓は一同を見回した。

 啓がウルガーに「その話」をすることについては、事前にサリーとミトラにも相談済みだ。


 啓の視線にミトラは頷き、サリーはウインクを返した。

 啓も二人に頷き返し、視線をウルガーに戻した。


「ここまでの話を信じてもらうためには、オレが何故この手記を読めるのか、オレが建国王と同郷だと言えるのか、それを説明しなければなりません」

「それは……そうだろうな」

「ウルガー殿下。ここからは、本当に内密の話になります。信じてもらえるか分からないですが……聞いてくれますか?」

「……分かった」


 そして啓は、ウルガーと側近の二人に、自分が女神によってこの世界に転生してきたことや、これまでの経緯、そして王を殺し、サリーを殺そうとした犯人達を追っていることを打ち明けた。




 啓達が会合をしている同時刻。

 グレースは、カナート王国の王城の一室で目を覚ました。


 国王の寝室にある天蓋付きのベッドの中で、グレースは一糸まとわぬ姿で毛布にくるまっていた。

 ベッドにいるのはグレース一人だけだったが、敷布にはまだもう一人分の温もりが残っていた。


「陛下……」


 ベッドから出たグレースは薄い夜着を羽織ると、バルコニーに足を向けた。

 バルコニーでは、カナート王国の国王となったイザークジェラール……オルリック王国第二王子だった男が、城下を眺めていた。


「城下町を見ておいでですか、イザーク陛下」

「グレース、起きたのか。まだ寝ていても良かったのだぞ」


 グレースは何も答えずに会釈だけを返すと、バルコニーに出てイザークの横に並んだ。朝日に照らされた城下町を、イザークと一緒に見たかったのだ。


「陛下……」

「何だ?」

「何をお考えですか?」

「ふむ……今は、昨夜のお前の顔を思い浮かべている」

「お戯れを……」


 グレースは国王の秘書官筆頭であり、城にいる間は常に国王の傍にいる。しかしグレースの役目はそれだけではなく、イザークの指示で暗躍する密偵でもあり、暗殺者でもある。そしてイザークと男女の関係でもあった。


 しかしグレースは、自分がイザークに愛されているとはあまり考えていなかった。グレース自身は、自分の「恩人」でもあるイザークを愛し、イザークが命令すれば命を捧げる覚悟を持っている。

 だからグレースは、たとえ自分が情婦のように扱われていても構わないと思っていた。


「それで、陛下。本当は何をお考えに?」

「ふむ……」


 グレースはイザークがただ外を眺めているだけとは思っていなかった。何か考えに耽っているように思えたのだ。


「グレースが持ち帰った至宝のことを考えていた」

「……大変申し訳ございません。未だ使い方の糸口すら見つからず……」

「グレースが謝ることではない。それはガーランの領分だ」


 グレースは、ユスティールの至宝を盗み出した張本人だった。


 グレースは「黒曜騎」と呼ばれるカナート王国のバルダーの一団と共に、ユスティールを攻めるアスラ連合軍に同行した。

 表向きはカナート王国とアスラ連合の共同作戦をとることだったが、グレースの真の目的は、ユスティールの至宝を入手することだった。


 アスラ軍がユスティールを陥落した後、グレースは事前に入手した情報を元に、啓の経営するカフェ・フェリテへと向かった。


 しかしグレースは、そこでシャトンの救出に来た啓達と遭遇して戦いになり、黒曜騎を数機失った。

 さらにグレース自身もミトラに遅れを取り、イザークから賜った魔動武器を失うという失態を犯してしまった。


 完全敗北したグレースだったが、その後、啓達が引き上げていったため、グレースはカフェの捜索をすることができた。そして店舗の床下から、ユスティールの至宝を発見した。


 ユスティールの至宝を手に入れたグレースは、速やかにカナート王国に帰国し、イザークに至宝を献上した。この功績によって、グレースは先の失態を帳消しにすることができたのだった。


 しかし、新たな問題が発生した。

 持ち帰った巨大魔硝石は、魔動連結器に接続しても全く機能しなかった。魔硝石の大きさに合わせ、巨大な魔動連結器を用意しても、結果は変わらなかった。


 現在、巨大魔硝石は王城の研究所で、ガーランの率いる研究者達が解析を続けている。しかし、今の所は何の進展も見られなかった。


「なんとかして、魔硝石を使えるようにしたいものだ」

「そうですね……」

「せめて魔硝石の力を取り出せれば、使いようがあるかもしれんのだがな……」


 通常、魔硝石は、使用者が力を加えることでその効果を増大して放出する。

 魔硝石そのものが持つ力を取り出すことはできないのだ。


 しかし、グレースは今の会話の中で、何か引っかかるものを感じた。


(取り出す……吸い出す……そうか、あの娘なら……)


 グレースは思い出した。イザークから賜った魔動武器の杖を破壊した娘のことを。

 その娘は、杖の先端に嵌っていた魔硝石の力を「吸収」して破壊したのだ。


「陛下。私に心当たりがございます。ユスティールの至宝の……魔硝石の力を吸い出すことができる者の存在を」

「ほう。そのような者がいるのか?」

「はい。その者はユスティールにいます。今一度、私をユスティールへ行かせてください。必ずや、その娘を捕らえて参りましょう」




「……というわけです」

「……」


 啓が話を終えた時、ウルガーは腕を組み、目を瞑っていた。マルティンも全く同じ姿勢をしているあたり、似た者主従と言えるだろう。


 しばしの沈黙の後、ウルガーは大きな溜息を吐き、目を開いた。


「……にわかに信じがたいが……言葉を話す見たこともない動物や、滅茶苦茶な女神の奇跡の力、そして手記に記載されている内容……どれも肯定し難いが、否定できるものでもない」


 話の途中で、啓は王族しか知らないであろう昔話を、手記の中からピックアップして披露してみせたが、それも一定の効果はあったようだ。


「では信じていただけると?」

「お前の身の上話など、真っ向から信じるつもりなどない」


 ウルガーはピシャリと言い切った。


「……だが、私は、姉上を殺そうとした者達を追うために協力してくれているケイを信じることにする」

「殿下、ありがとうございます!」

「ケイを信じてくれて嬉しいわ、ウルガー。私は貴方の姉であることを誇らしく思うわ」

「別にケイのためではありません!姉上のためです!」


 頬を少し紅潮させたウルガーは、そっぽを向いた。


「あの、一ついいでしょうか」


 ここで初めて、マルティンの婚約者でもある、近衛騎士団員のアーシャ・リーが口を開いた。


「私は、ケイ殿の突拍子もない話を一切信じておりません。むしろ胡散臭いと思っています……と言いますのも、私は近衛騎士団の一員ですから、ウルガー殿下を守るために、まずは全てを疑ってかかるのが職務でもあります」

「まあ、お立場を考えれば無理もありませんよね……」

「ですが、どうしても気になったのです。何故、私にもこの話をされたのでしょうか。重要な話であれば、殿下とマルティンにだけお伝えすれば良かったのでは」


 そんなアーシャの疑問に答えたのはサリーだった。


「ウルガーだけに話をしても良かったのだけれど、王子や王女という肩書きはとても不自由なのよ。いくらウルガーが言っても、それを周りが止めることはよくあるわ」

「それは……そうかもしれません」

「もしもウルガーだけに話をしても、私やケイがウルガーをそそのかしたと疑われるかも知れない。だから、一番の側近であるマルティンにも、知っておいてもらいたかった。その妻である貴女にもね」

「なるほど、そういうことですか……ですが、もしも私が裏切り者だったら?サルバティエラ王女殿下を狙う刺客の一味だとしたら?……そうでなくとも、殿下に良からぬことを吹き込んだケイを、後で害するかもしれませんよ」


 ほとんど脅迫じみた物言いをするアーシャだが、サリーはそんなアーシャに対して、どこ吹く風という顔で質問に答えた。


「確か認識阻害でしたっけ。貴方の女神の奇跡の力を使えば、私やケイを殺すなんて簡単でしょう。でも、私もケイも、こうして生きてる。それが証拠でなくて?」

「しかし……」

「私は小さい頃からマルティンを見てきたわ。私はマルティンが必ずウルガーを守ってくれると信じている。そのマルティンが選んだ貴女ならば、私も貴女を信頼できる。こう見えても、私はそれなりに人を見る目はあるつもりよ」

「……」

「私は貴女を信頼する。だからマルティンと貴女、二人でこれからもウルガーを……大切な弟を守ってほしい」

「王女殿下……」


 アーシャは椅子から立ち上がり、サリーの傍まで来ると、片膝を付いて頭を垂れた。


「私はウルガー殿下と同様に、王女殿下にも忠誠を誓います。私はこれからも、ウルガー殿下をお守りすると。そしてウルガー殿下と同様に、王女殿下を守らせていただくこともお許しください」

「まいったわね……私はもう王女は辞めたのよ。だからそんな義理はないわ。報酬も出せないし」

「報奨など必要ありません。私は私の意志で、王女殿下に忠誠を誓うだけです」


 サリーは助けを求めるように、啓に目を向ける。

 啓はふと、膝の上にいるバル子を見て、妙案を思いついた。


「だったらアーシャさん。戦いが全て終わって平和になったら、お二人の結婚祝いに、猫を贈らせていただけませんか」

「ネコ……ネコですか!?」

「はい。アーシャさんはバル子に興味がありそうでしたし、もしかしたら猫が好きなのかなと思いまして。もちろん、アーシャさんがサリーとの約束を守り、オレの話を信じてくれたらの話ですが。あ、バル子はあげませんよ。別の猫です」

「バル子はご主人のバル子ですから、あげませんよ」


 バル子も啓に同調して答えた。


 なお、啓はどさくさで「自分の話を信じるならば」と条件を付け加えたが、アーシャはそんなことを気にする様子もなく、早足にマルティンの元へ向かった。


 そしてマルティンに言った。


「マルティン。私はケイの話を信じます」

「……は?」

「ケイの話を信じます。だから貴方も信じなさい」

「はあ!?信じろと言われても無理があるだろう。だいたい何の裏付けもなしに、ケイの話を受け入れることなど……」


 しかしマルティンの反論はそこで止まった。目が据わったアーシャの睨みに、マルティンは怯み、息を呑んだ。


「貴方も信じますよね、マルティン」

「……」

「貴方も、ケイとネコを、信じますよね!」

「はいっ!」


 猫の報酬の効果はあまりにも絶大だった。


「マルティンさんって、きっと結婚したらお嫁さんに逆らえない気質だと思うわ。シャトンちゃんはどう思う?」

「はい。私もそう思います」

「二人共、マルティンに聞かれるわよ。もっと小声で話しなさい」

「もう聞こえてますけどね!」


 マルティンはそう叫んだ後、両手を上げた。


「降参です。私もケイの話を信じることにしますよ。何よりアーシャが怖いし……」

「マルティン、今、何か言いましたか?」

「何も!何も言っていません!」


 そんな夫婦漫才が一段落したところで、ようやくウルガーが口を開いた。


「それで、ケイはこれからどうするのだ?……いや、姉上の敵を討ちに行くことは分かっているが、その方針を聞かせてもらいたい」

「そうですね……一応、考えていることはあります」


 啓は一呼吸入れてから、全員に向けて宣言した。


「ちょっと、アスラ連合を潰しに行こうと思います」


 それはまるで、近所に買い物に行くような物言いだった。


ウルガーと啓達の密談。

イザークとグレースの密談(?)

結婚記念に猫を貰えるという密約(笑)

それぞれの思惑が動き出します。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 あ、身の上を殿下たちにもバラすんですね。まぁ転生しました…という前提がないと、此方の世界の人からすれば「いやお前、なにがどうしてそうなったん?」と啓の行動の節々に疑問…
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