仮初めの聖女
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「困る神官を蹴散らし、救ってくれたニノンちゃん。コレ正真正銘守護者では?」
「いやあの、そもそも守護者が分かりませんし」
「そもそも、聖女には守護者が居ないと仮初め扱いですしねー」
「……そ、そうなの?
滅茶苦茶聖女様聖女様言われてたのに」
まさか、渾名とか言わないわよね? ……神殿に住んでる渾名聖女……なんて意味が分からなさすぎるわ。しかも町から逃げてたわよね? え、ジェントさん聖女業務するの? ビシャンさんに怒られたのかしら。
「養父が引退するって騒いでましたからねー。養母さんにも逃げられてますしー。まあ、お近くで町内別居ですけどー」
「ちょ、町内別居……」
途端にシリアスさが抜けて、ローカルで所帯染みてくるわね。
て言うか、ビシャンさんは養母さんなの……。いや、どうもあのイケメンフェイスと女性好きエピソードが、脳内を邪魔する……。いや、あの白い人も何ていうかお父さんって感じでは無いけど……。
「隠し通路通って、10分の距離ですしー」
「そ、そんな秘密、気軽に適当に話さないで……」
知りたくないんだけど!
「守護者が出来たらー、家に隠し通路が通るんですよー。ニニン様の通路を受け継いで再利用しましたからー、私はラッキーでしたー」
「そ、そんなもの受け継がないで……」
何なのよ、通路を受け継ぐって……。受け継ぐなら家とかアクセサリーとか、無難な物をお願いしたいわ……。
通路……何処に繋がって。……んん?
「ん? もしかして……あの、ウチの光らされた井戸……」
「途中からなんでー水は汲めたでしょー? 安全ですよー」
「いや、その危険性も有るけど! 聖女の隠し通路って、総じて光るの!? 何で!?」
「聖女の力で開通させますしねー。光っちゃいますー」
「聖女の力って、使う時には必ず光らずにはおれんの!?」
「ヒロナ様に比べりゃー、私なんてまーだマシですよー。あの方、踵が常に光られたそうですしー」
「踵が常に光る!?」
い、嫌すぎる。あ、でも……夜中のトイレの時とかイチイチランプに火を点けなくていいのかしら。でないとよく蹴躓くのよね。でも、眠い時って中々火打ち石が滑るし点かないのよねえ。
それだけは羨ましいかも……。
でも、足の光を頼りにトイレ……羨ましがるのもちょっとはしたなかったわよね。後、ぼんやり光ってたら寝辛いでしょうし。
……じゃなくてよ。
「あの、ジェントさん。私には荷が重いと思うの。高貴でセレブな人なら、トイ……いえ、夜中のお花摘みの時とか侍女が着いてくるでしょ?」
「何の事か解りませんけど、そのバケツ、ニノンちゃんの意志で光りますよ」
「え?」
うっ、訳分からん断り方して煙に巻こうと思ったら、然りげ無く押し付けられた!
さ、さっきより重くなってる?
「私の意志でって」
「点滅しろとか、消えろとか念じてみてください」
「バケツに?」
「バケツに」
……そんなバカな……。コレ、何の変哲もないウチの商品だったのに。
色々無理なのに、滅茶苦茶マジな顔で見つめられても困るわ。
うう、困った。
「や、やりゃあ良いんでしょ?」
「正直ですねー。可愛い可愛い」
うっ、変な褒め方されても折れないんだから!
さっさと念じてみて、直ぐ失敗するんだから!
むむむむ、それっ! 三拍子で点滅しろ!
出来ないでしょ!
んん!?
「……ズンタッタズンタッタって光ってますね。ニノンちゃん、音楽が好きなんですか? 何か楽器を」
「い、いえ……好きだけど楽器をやれるような素養はゼロで。……じゃなくて! ひ、光ってる! 不自然に光ってる!?」
「不自然じゃなくて、ニノンちゃんが光らせてます」
……さ、三拍子で光ってる……。
じゃ、じゃあコレならどうかしら。流石にこの光り方は……な、何でよ!?
「変なリズムで光ってますー。この前の吟遊詩人の曲ですかー?」
「そ、そう。四分の五拍子……。何故……」
「あの吟遊詩人のファンなんですかー?」
「そ、そうだけど」
格好はアレだったけど、歌は……都会的な感じだったものね。歌詞がちょっとアレだったけど。
「でもー、ニノンちゃん。私が彼らの衣装と口調の真似しても生温ーく見てましたよねー。悲しいなー」
「き、気付いてたの!?」
「私、見られてる人をちゃーんと見てますよー? 」
あんなに人居たのに!? いや、地元民ばっかだったけど! お、恐ろしく目がいいのね。野次馬を見分けるだなんて……。
「い、何時から」
「素朴で可愛い割にー吟遊詩人が好きとか、ギャップですねー」
「は……」
え、何を。
ギャップ?
そ、素朴で可愛い? 私が!? 初めて言われたんだけど!?
「何時見初めたって話でしょー?」
顔が爆発するかと思ったわ。
バケツも派手に落としたし!? な、なのに鈍い音しかしないのね。何故……。
「そのバケツ、ニノンちゃんの心を移し取りますからね」
「ど、どういう事……」
「ドキッとしました?」
いや、そりゃ。
わ、私だって若い女だし? か、可愛いって言われたし?
でも、そんな、まだ知らない人カテゴリの人に褒められたからって、そんな、チョロくないし?
「私そんな、ほ、褒められたって守護者は」
「あー! 貴様、見つけたぞ!!」
だ、誰よ!?
まさか、神官!?
でも、神官はジェントさんのこと貴様とか呼ばないわ。
「貴様、大人しくこの高貴なるヘベレン様の妻になれ!!」
「あ、ウチに押し入って私に狼藉を働いた奴よね……」
えーと、何だっけ。取り敢えず雑貨屋に押し入って無理難題言ってきた客じゃない奴よね。ジェントさんは解ってるみたいだけど。もしかして、求婚にきた第五かそこらの王子だったわよね? えーと何かの許しをどーのこーの……。
でも、このジェントさんとの間に漂うムード、険悪ね。明らかにガセネタって雰囲気だわ。カイダシ新聞社、情報大丈夫なの?
「嫌ですねー、高貴なるコネって害悪ですー」
「ちょ、おいこらジェントさん!?」
な、何で私の後ろに隠れんのよ!? 急に何か背が伸びてない!?
「私がブッ飛ばしても納得されないようですし? 守護者ニノンちゃんがビシッとブッ飛ばしてください。言語でも」
「わ、私が!?」
な、何故そんな事に……。
でも、王子なのにひとりだから何とか丸め込めるかしら。お付きとか居ないの?
結構面倒見がいいニノンです。なので、チョロくもあります。




