朗らかな聖女の息子
お読み頂き有難う御座います。
情報過多で混乱するニノンです。
「……と、飛び出してきちゃったわ……」
あの話を聞いて……動揺しすぎたみたい。いや、でも仕方ないわよね。どうしよう。戻りにくい。
しかも此処、見たことあると思ったら商店街の端っこじゃないの。滅茶苦茶配達で前を通ったことある。
……何なら、いっその事家に帰ろうかしら。私がいなくなって騒ぎになってるかも。でも、……何だかなあ。
ジェントさんへのこう、何か……モヤモヤするのもだけど。私自身も聖女の血筋だとか……。全く自覚も能力もない……。
「おお、ニニンさん」
「……え?」
……か、家具屋の爺さん……?
……ジローモモさんだっけ。実は本名知らない知り合いって居るわよね……。
家具屋の爺さんかご隠居で呼びかけが済むもんだから。結構そういう人、居るのよね。
「ニニンさんは相変わらずキレキレじゃのー」
「いや、ニノンです」
何で曾祖父ちゃんと間違えるのよ。まさか似てるの!? あんな怖い顔の肖像画と!?
「メーミンちゃんを追いかけとるのか?」
「メーミンとは……誰だっけ。曾祖母ちゃん?」
「ウチのババアはヒロナちゃんって呼ばんと怒るからめんどいのー」
き、聞いてねえわー。滅茶苦茶スルーされてるわー。
「友達親子? とやらやりたいとか、ええ歳のババアが多感な息子にウザいのー」
「た、多感、な……」
多感を通り越した爺さん、今日は饒舌過ぎやしないかしら。
何時もボケーっと外を見てるのに。
でも、本当に聖女ヒロナ様の息子だったのね。何故こんないいタイミングで都合よく語ってくれるのか謎すぎるけど。
最近、目玉焼きトーストの話しか聞いてないし。
「何ちゅーか、ウチのババアだけなのか。聖女って変わってるのが多くてやんなるのー。ジジイしか見てねーとか、ウザすぎー」
「そ、そうなんですか……」
そう言えば家具屋の爺さんの目を初めてマジマジと見たけど……青くてお人形のような、純粋に綺麗な目。
若い頃はイケメンだったのかしら。
「ジジイが死んでから、ガクッと力尽きるなんて聞いてねえ……」
「え?」
「矢鱈偉そーで、光ってた癖に……。また、押し寄せる高貴な輩をフッて来たとか嘘八百、言えよお……」
「お、お爺さん……」
家具屋の爺さんは、確かにボケて来てた。
だけど、朗らかで……こんな、ボロボロ泣くような人では無かったのに。
「ホラ吹き母ちゃんの、バカヤロー……。何が、父ちゃんと長生きするだ、だよお……」
思い出した。
お祖母ちゃんが言ってたわ。
家具屋の爺さんは、ジローモモさんは。結構早くにご両親を亡くしたって。苦労してたんだわ。
この笑顔は、辛さを隠す笑顔だったのね。
「お爺さん、辛かったのね……」
「うう、すまねー。ニニンさん。父ちゃんが気を病むまで付き纏いすぎたからだろーがー」
「え」
何て?
気を病むまで、付き纏いすぎた?
え、誰が、誰を?
聖女ヒロナ様が、モモジローさんのお父さんに付き纏いすぎた?
「うう、グスグス。聖女はしつこいからいけねーや。チキショーめ」
「……お爺さん、口調変わってない?」
のじゃ系の爺さん喋りは何処行ったの。
じゃ、なくてよ。
聖女はしつこい……ってこと?
た、確かにジェントさんにはちょっと強引にされた、けど。
「あ、ニノンちゃーん」
「びえ!?」
「可愛い悲鳴ですねー」
「……ひ、ひええ。そんな事ないですや、よ。ちょ、ちょっと考えるお時間が必要、そう、お爺さん」
「聖女ヒロナのご子息ですねー。ほら其処に息子さんが見えてますよー」
「あっ、父ちゃん! また彷徨いて!!」
家具屋さん……の旦那!何でこんなタイムリーに来るのよ!? 仕込みなの!?
「倅が父ちゃんに似てないのー。ファニーちゃんが来ないと帰らん」
「母ちゃんは足が悪いだろうが!! じゃあなニノンちゃんに警備騎士さん!」
「あっ、えっ、ああ!! まっ……」
……お、置いてかれた……。
「まあまあ、ニノンちゃん。じっくりお話しましょーよー」
「いやそのちょっと、よく考えるとスピーディー過ぎて守護者なんて恥ずかしいっていうか」
病むまで付き纏いすぎっていうか単語が危険過ぎるって言うか!!
どえらい事教えて行きやがったわね! あの爺さんは!!
聖女は守護者へ粘着系の想いを寄せる傾向が有るようですね。
他人ヘはドライです。




